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  リレー小説「ハードファンタジー」  

1 :妖精ポック:02/11/24 11:13
ベルセルクみたいなエロスとバイオレンス盛り沢山のヤシきぼーんぬ!
(ハァハァ)



2 :名無し物書き@推敲中?:02/11/24 12:28
混沌の渦

3 :名無し物書き@推敲中?:02/11/24 13:08
何処とも知れぬ、荒涼とした世界。

4 :名無し物書き@推敲中?:02/11/24 13:48
世界の中心には一本の化石化した大樹があった。

5 :名無し物書き@推敲中?:02/11/24 15:02
http://www.koikoimail.com/i/index.cgi?id=SpkG6qepnS

6 :名無し物書き@推敲中?:02/11/24 15:16
文字通り、天を支える世界樹であった。
もしこれが枯れたり斬られたりした日には、そりゃあ目も当てられない天変地異が世界を見舞うことになるはずだ。
だから、その神聖な御神木に手を出そうなんて考える不埒なヤツはいなかった。
されど。
いま、世界樹の根元から、不遜かつ凶悪な笑みを湛えてそれを見上げる筋骨隆々の巨漢に関しては、どうやら例外といったほうがよさそうだった。

7 :名無し物書き@推敲中?:02/11/24 22:39
 巨漢の男は股間に手を当てむんずと男根をとりだした。
 天をも突き通すかという大男根である。
 ややあって股をあけっぴろげにした男が言った。
「やい、世界樹よ。俺様のマラとお前の木の股どちらが強いか勝負しろ」
 はて、珍妙なることか、なんと化石であった世界樹が蠢きだしたではないか。
 木の根がもどもどと動いて形を造ってゆく。根と根があわさり。貝のごとくひっついた。
 木のこぶが膨れあがり貝柱のごとく盛り上がった。
 なんたることか、世界樹はその名のごとく子を生み出す器官をつくったのだ。
 巨漢の男と、母なる世界樹の怪異なる決闘が今はじまる。


8 :名無し物書き@推敲中?:02/11/25 00:07
そのとき、

9 :名無し物書き@推敲中?:02/11/25 21:04
少女はつと足を止めた。

10 :名無し物書き@推敲中?:02/11/25 21:07
>>7
荒らしマジうざい。大人気ない。そして…
「つまらない」

11 ::02/11/25 21:12
でも書いてしまった以上は続けねばならないのも宿命だよね(w

12 ::02/11/25 21:26
ごめんね。
一行リレー小説だとは思ってなかった。
すまんかった。スルーしていいよ。
エロって書いてあったからさ。

13 :名無し物書き@推敲中?:02/11/25 21:29
一行だったの?
7は荒らしに見えないが?

14 ::02/11/25 21:31
アレはアレで面白いじゃないか。ねえ?
俺より下手だったらキレで荒らし呼ばわりもしたろうけど、文章に力もあるし着眼点もいいし。
あの文章なら荒らしには当たらないよね?

15 :名無し物書き@推敲中?:02/11/25 23:35
7は面白い。リレー小説を面白くするツボを押さえていると思う。
10は己の筆力で返すべきだ。

16 :名無し物書き@推敲中?:02/11/26 00:11
でもあれの後に続けるのは相当の実力者じゃないと無理ぽいからそういう意味では荒らしかも〜

17 :名無し物書き@推敲中?:02/11/27 09:39
とりあえず10が「おもしろい」続きを書くのを待ちたい

18 :名無し物書き@推敲中?:02/12/01 17:00
10召喚age

19 :名無し物書き@推敲中?:02/12/05 02:42
10召喚age


20 :名無し物書き@推敲中?:02/12/06 08:25
age


21 :名無し物書き@推敲中?:02/12/11 00:54
N E V E R E N D


22 :名無し物書き@推敲中?:02/12/11 02:23
確かに7は下品ではあるがその分恐ろしく濃密で力強いかと。
つか、嫌なら仕切り直しでもすれば?
どっちにせよ楽しめそうなスレだ。期待age

23 :名無し物書き@推敲中?:02/12/12 17:39
さて、これから始まろうと言うこの奇妙かつ壮大な決闘の前に、話さねばならないだろう。
この勇ましくも世界中に挑む巨漢のことを。
彼の左目を貫くように刻まれた稲妻の形をした傷跡のわけを。
不敵な笑みに裏打ちする彼の恐るべき実力を。

我々は少しだけ時の狭間からこの男の過去を覗いて見よう。


24 :名無し物書き@推敲中?:02/12/12 18:35
そう、時は紀元前5012年、はれて1年間の月蝕が終わり
全世界に光の差し込んできた太陽の年のこと。

25 :青木原精神病院:02/12/12 23:24
男はただ、今日を生き延びることに必死だった。
月食を恐れた愚王による馬鹿げた統治。男はみな兵役にとられ、残された家族には生殺しのような税がかけられた。
そして一年、何も起きぬままに月食は終わり、兵役を解かれ故郷に帰れば家族は既になかった。
ただ同然の給料をはたいて買った土産も、辛い兵役を耐えぬく糧となった家族との思い出も、すべて男には
無意味となった。

26 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 00:25
ゼンダマンの名前が問題ありと思われ。

27 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 00:35
男はまだ巨漢とは言えなかったが、大柄な青年だった。
ボロボロに成り果てた心と体を抱えて日を生き抜くうちに、若く傷みやすい青年の心はすさんでいった。
盗んだ剣で強盗を重ね、弱き者たちからは何もかも奪った。
やがて、彼は奪うことに慣れていった。それ自体に楽しさを感じ始めた。

28 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 00:43
ある日彼は物乞いの老婆に目をつけた。
普段なら金にもならなそうなのだが、その老婆の首にチラリと高価な金の首飾りの紐を見たからだ。
「おい。お前いいもんをつけてんじゃねぇか?金かそれは?」
老婆は顔をあげずに俯いたままだ。
垂れ流しになっている老廃物にハエが群がっている。死にかけか、と男は思った。
「そいつをよこしな婆さん。死にかけのあんたが持ってても仕方ねぇだろ」


29 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 00:48
突然、老婆は奇怪な笑い声を立て始めた。
老婆の痩せ細った体にふさわしくない大声で。
狂ってるか…ちょうどいい。男は剣を一振りした。
老婆の首が飛んだ。濁った血が切り口から噴出し、あたりの排泄物が赤黒く染まる。
男は老婆の胴体部に残った首飾りに手を掛けた。
しかし、抜けない。


30 :浩二:02/12/13 00:49
後藤め。許さんぞ。

31 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 00:57
彼女のボロキレのような衣服を剥ぎ取ると、皮と骨だけの胸の中央に首飾りは埋もれていた。
皮膚の中に刺さっていたのである。
奇妙な首飾りに当惑しつつ、彼はそれを胴体から引き抜いた。
ぐにゅ、と嫌な音がして血にぬれた首飾りが引き抜かれる。

「ヒェヒェヒェヒェェエ」

笑い声がした。飛んだ首のあたりで。
思わず振り向くと、老婆の首が白目を剥いたまま笑っている。
「オ前ガソレヲ引キ抜クノヲ待ッテイタノダ。世界樹ノ産声ノ時カラ…。我ガ破壊者ヨ」
男は思わず唾を飲みこみ、じりじりと退いた。

32 :浩二:02/12/13 01:02
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33 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 01:06
「何故退クノ?」
老婆の声音が変わった。シワシワの口元からゴボゴボと血が溢れ出す。
汗の滲む手で、首飾りを握り締め、男は生首を凝視した。
聞き覚えがあるような気がしたのである。

「オ前忘レタノカイ?」

しわだらけだった老婆の顔から、ゆっくりと皺が消え始めた。
恐るべきその変貌を男は固唾を飲んで見続けた。否、逸らせなかった。
「あ…ぁ……!!!!」

それはあの懐かしい母の顔であった。
一瞬嘆きに満ちた視線を送り、母の生首はこんどこそ絶えた。
思いもよらない母の亡骸の前で男は呆然と立ち尽くした。
首飾りから血の雫だけが滴り落ちる。


34 :浩二:02/12/13 01:19
後藤め。

35 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 01:52
「あ…あれは隣に後藤さん…。あれは、あれは母さんじゃない!!」
男は急いでセブンイレブンへと駆け込み、肉まんひとつを買った。
ほくほく気分で店を出ようとした。そのときだった。
あるものが私をふり返させた。否、ふりかえさせられたのだ。
そこには、明日発売の「ゼルダの伝説」が置いていたのだった。

「あ…ぁ……!!!!」

男は涎を、唇からあごへと滴るように流し始めた。
全身は細かく振るえ、目からは感動と驚嘆の涙があふれる。
店員が心配そうに見ているが、男は興奮していた。




36 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 04:10
楽しんでるかい?

37 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 14:54
続き書きたいんだけど主人公の男の名はどうしよう?


名前苦手だから誰かいいのキボンヌ

38 :青木原精神病院:02/12/13 15:35
脳内ではヘイドレク、と呼んでますがいかがでしょう?

39 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 15:41
ボッポ

40 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 17:18
>>38
(・∀・)イイ!!


漏れに思い付くのって神話系しかねえ。

41 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 22:59
>>38
採用ケテーイ。
じゃぁそれでいきませふ。

42 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 23:34
「何…だよ……これは…」
 自分が殺したのは死にかけの老婆だったはずだ。
 なぜそれが自分の母なのだ?これはいったいどういうことだ?
 男は汗の滲んだ手のひらの首飾りをおそるおそる眺めた。
 何かの種のような形をした真っ黒な石に、銀色の留め具が嵌められており、そこから金の鎖が伸びている。
「せかい…じゅ…だと?」
 確かに老婆、いや人ではない何かが彼にそう言った。
 男は無意識にそのことばを呟いていた。


43 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 23:35


 ドク…ン

「…うああっ!?」
 首飾りが手のひらの中で 脈 う っ た 。
 思わず手を振り払ってしまって、あることに気付いた男は愕然とした。
 汗ばむ手のひらに、首飾りの石の部分がもう半分ほど埋まり始めているのだ。
「なっ何だ?!おい止めろ!!」
 必死で反対の手で引き抜こうとしたが、思わず激痛がはしる。血管のなかを熱いどろどろしたものが巡ってゆくようだ。めまいがした。その恐怖に男は無我夢中で首飾りを引き抜こうとした。
 しかしすでに留め具が皮膚の中に埋もれようとしていた。そして完全にそれは男の体内に埋まっていった。
 


44 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 23:37
体中を異物が駆け巡る。
 地中を根が這うように、体中に何かが這いめぐらされるような悪寒。肌はあわ立ち、嫌な汗が流れる。
 割れるように頭がいたい。視界が朦朧としはじめ、母の亡骸もかすんだ。
「かぁさ…ん……助け て…くれ」
 気の遠くなる痛みに涙がにじむ。
母の、血まみれの母の生首の転がる胴体に、震える手を伸ばした。頭がいたい。痛い。なんだ、なんなんだこれは。答えてくれ母さん。貴方に何があった、俺には何が起ころうとしている?!

 
 胸の突き刺さるような痛みに、思わず心臓をおさえると手に異物感があった。
 はっとして胸をみると、首飾りが皮膚から半分出てきていた。そう母の時のように。
「畜生、ふざけんな!!」
 首飾りを引き抜こうと、力をこめた瞬間全身が切り刻まれるような痛みがはしり、男は絶叫して倒れこんだ。そして、もう首飾りの離れないことを悟った。呆然となった。


45 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 23:37

 しばらく呆然としていた。事態がよく分からないままに、男は母の遺骸をぼんやりと眺めていた。
 母のぼろぼろの衣服は汚物にまみれていた。
 せめて…と男は自分の上着を脱いだ。それでもあまり変わらないのだが。
 そうして母の汚物まみれの衣服をはぎとって、男はまたも心臓が止まるような思いがした。
 母の衣服の下の体から無数の《根》が伸びて、地面に深く深く刺さり、
 彼女をそこにはりつけていたのである。



46 :名無し物書き@推敲中?:02/12/13 23:50
う…ん。ムズカスィ。
イメージはすごく沸いてくるのになぁー。
まだ名前使ってなくてスマソ。>ヘイドレク
エロスもバイオレンスもない…という点で申し訳ない。
エロは下手なんだがこんどがんばってみまつ。おやすみなさい。

47 :青木原精神病院:02/12/14 04:08
「どうして・・・」
ヘイドレクは膝をついた。
「かあ・・さん」
その呼び掛けに答える者は、もう、いない。だが男は母の名を叫び続ける。
「どうしたのさ!?俺と!親父と!兄さんが!兵隊に行っちまった後、一体何があったんだよ!?」
男の目から熱いものが込み上げる。
「兵隊に行けば親父たちとはバラバラになるし、毎日ゲロ吐くまでこき使われるし―」
もう、とまらない。
「俺、もうなにがなんだかわかんねぇよ・・・」
地に吸い込まれる、涙。思い出も、何もかも、消えてなくなればいいのに。
嗚咽だけが虚しく響いた。

48 :青木原精神病院:02/12/14 04:19
>>46さん
とりあえず、先の構想が御有りのようなので、
邪魔にならん程度に繋げてみました。
46さんの話、マジで面白かったです。序盤から一気に謎が謎を呼んでますね。
続きが楽しみです。

49 :名無し物書き@推敲中?:02/12/14 16:55
age

50 :名無し物書き@推敲中?:02/12/15 07:14
賑やかな声の漏れてくる酒場の、傷んだ木の戸を押して、中に入った。
 ボロボロの身なりをしたままの男に酒場の主人は面食らったようだが、かの月蝕以来ならず者は珍しくなかったので、男が酒を注文すると、何も聞かず黙って頷いた。
 ヘイドレクは注文をおえると近くの席に座った。
 テーブルの上に置かれた自分の手は土に汚れ、血がしみていた。
 彼は母の死体をあの場所から引き剥がすために、根を掘っていたのだった。
 思ったより根は深く、少しでも切ろうものなら血のような赤い樹液がにじんだ。
 男は発狂しそうないきおいで母の遺体をはがそうとしたが、無理だった。


51 :名無し物書き@推敲中?:02/12/15 07:15

 兵役で連れて行かれてから一度も忘れたことのなかった母の遺体にすがって彼は泣いた。
 吼えるように泣いた。
 それから無残にも変わり果て、あげく自分が首をはねた母を、彼は解体した。
その場にさらしていくのは嫌だった、だからだ。
 ばらばらにして、その場所に土をかけた。そして周辺の石を墓標にした。

 目の前に酒が置かれた。
 男はそれを一気に流し込んだ。熱い嗚咽のような感触が喉のおくを通り過ぎていく。
 なにもかも忘れたい一心で男は酒を飲み続けた。



52 :名無し物書き@推敲中?:02/12/15 08:24

 彼はその夜酒場の近くに宿をとった。
 一人ではない、見知らぬ女も一緒である。
 この彼よりも一回り年上の女は、酒場で彼に声をかけ、酔って自棄ぎみの男は自虐的な気持ちで女と寝ることにしたのだった。
 部屋に入ると女は厚ぼったい唇を彼に重ねてきた。
 男のほうはアルコールに正常な感覚は飛んでいるものの、本能の導くままに女の口付けにこたえてやった。
 
 朦朧とするなかで耳に女の甘い悲鳴がとどく。
 きしむ音と女の震える振動とを体に感じながら、つきあげる痺れに男はそれをむさぼろうと腰をつきあげる。
 男は何も考えないようにつとめた。汗の滲む肌をすりあわせ、ただ快楽を追って現実から目を背けようとした。
「……ぁっ あぁぁっ…!…」
 女の悲鳴が一段と強くなり、男もそろそろ出そうと思い、動きを速めた時だった。
 彼が異変に気付いたのは。
 


53 :名無し物書き@推敲中?:02/12/15 19:04
 それは気付かない程度のものだった。
 女の金色の髪の毛の中から見えたそれは、小さな、緑色のものだった。
 しかし彼が気付いたのは《それ》が驚くべきスピードで「成長して」いたからだ。
 彼が愕然として動きを止めると、女はじれったそうに男を見上げた。
「…ねぇちょっと……どおしたの?……は やく ぅっ……」
 促すように女が腰をこすりつけてくる。
 だが男の目は女の髪の間から伸びてくる一点に注がれたままだった。冷たく苦い唾が喉を通り過ぎる。 
 それは天井へ向かってするすると垂直に伸び始めた。それは暗がりでよくみえないが蔓のようだった。もはや一本ではない。何本何十本という細いつるが、女の髪から伸びてきた。
「おまえ……なんだそれは…?」
 酔いなどふっとんでしまった男は、かすかに震える声で聞いた。


54 :名無し物書き@推敲中?:02/12/15 19:06
「え…何よぅ……もう……」
 中断されていることで不機嫌な声を出して、女は気だるげに天井に目をむけた。
 そして 目 が 合 っ た 。
 何百本という、奇怪な蔓と。
「ひぁっ………!!!!」
 女の悲鳴をその蔓たちが一斉に食った。ちがう、その口めがけて一斉に蔓たちが入っていったのである。蔓たちは容赦なく女の口から喉へはいりこんでいった。
 それだけではない。耳や鼻や、あげく眼へと押し寄せ、女を侵蝕していった。
 あまりの凄惨な光景に男は飛びのき、目をそらすこともできずに皮膚という皮膚から突き出す植物を凝視していた。
 女の体が奇妙にゆがむ。
 シーツはたちまち血に染まる。


55 :名無し物書き@推敲中?:02/12/15 19:21

 ドクン…

 胸に何かが注ぎこまれるのを感じた。水ではない何かエネルギーのようなものを。
悪寒がした、気付いてはいけないような気がした。
しかしある予感が男をとらえていた。
まさか、あれは。あの無数の蔓は…もしかしたら
半分泣き笑いのような表情を浮かべて、男は己の下半身をみた。
鼓動がはやまり気味の悪い汗が背中をつたいおちた、そのとき男は見た。

今、女を食いつくしている奇怪な蔓の根はすべて、
自分の男根から伸びていた。

何かを飲み下すように、ドクン、と蔓が波打つ。
耳のすぐ脇で、心臓が動いているようだ。鼓動が聴覚を覆う。


56 :名無し物書き@推敲中?:02/12/16 18:48

蔓が飲み干す振動とともに、ヘイドレクの筋肉が呼応するように隆起する。

人間から栄養を取り込んでいるのか…?!

言葉もでなかった。体を動かすこともできなかった。
ただ震えながら自分の《蔓》が女を食い荒らすのを見ているほかなかった。
部屋の壁に背中を押し付けたまま、ひきつった笑いをうかべた。
瞬間、ヘイドレクはその場に嘔吐した。



57 :名無し物書き@推敲中?:02/12/16 18:51

夜明けとともに逃げるように宿をでる。
女の死体はもはや残らなかった。あるのは血まみれのベッドだけだろう。
ヘイドレクは昨日一日のうちにもはや自分が人間でなくなってしまったことを感じた。
なんのために、誰が? 世界樹とは何だ、母に何があったのか?
胸のうちに去来する謎のこたえを、知りたい。
知らなくてはいけない。

彼はかつて兵役のために辿った王都への道を、またのぼる。
王都にいけば何かわかるかもしれない。あそこには様々な国から訪れた者たちが来ると聞いたことがある。
かすかな希望にすがるつもりで男は歩き出した。
一晩でひとまわりも大きくなってしまった体を黒いマントで隠すように覆って。



58 :名無し物書き@推敲中?:02/12/16 22:28
これからちゃんと>>6に繋がるのか不安…。



59 :名無し物書き@推敲中?:02/12/18 00:00
王都へ向かう道すがら、ヘイドレクは夜ごとに宿を取った。
そして夜ごと、劫苦に苛まれた。
夜半、幾度となくヘイドレクは絶叫した。
首飾りから怪異が、まさに怪異としか呼べぬ何かが流れこむたび、
ヘイドレクの肉は、筋は、骨は打ち震え、泡立ち、ざわめき、膨れあがった。
だが、五体を捏ね潰すような痛みの中でヘイドレクを叫ばしめたものは、
血と臓物と排泄物をぶちまけ、ひしゃげ落ちる、
老婆の変貌する母の生首であった。

ヘイドレクは王都へと歩き続けた。
一縷の望み、それを追うように、また恐怖の幻影に追い立てられるように。
夜を繰るごとに魁偉に、歪つに変容しつつある肉体を引きずり、ヘイドレクは歩き続けた。

60 :名無し物書き@推敲中?:02/12/18 16:27
 また名も知らない町に辿りついた。
 睡眠もろくに取れないヘイドレクの眼は落ち窪み、目は深く陰鬱な光を秘めたものになっていった。
 頭からすっぽりと覆う黒いマントの存在に、通り過ぎるものは皆、畏怖を抱いた。
 しかしヘイドレクはそれらを気にする余裕はなかった。
 ただズキズキと傷む、もはや自分のモノとは思われない体と、耳に残響する母の声に追い立てられていた。
 女の奇怪に歪む音。
 老婆の生首が笑う声……。


「ヘイドレク」

 ビク、と肩を揺らして男は足をとめた。
 名を 呼ばれた気がした。自分でも忘れかけていた名を。


61 :名無し物書き@推敲中?:02/12/18 16:47
 次の瞬間、ヘイドレクは後ろからマントを引っ張られるのを感じた。
 早鐘のように鼓動が体内に響く。
弾けるように振り向いた。
 引っ張っていたのは、焦げ茶色の髪を後ろで束ねた、ひょろっとした背の青年だった。男の反応に驚いて、ネズミのように飛び上がっている。
 その青年をみて、声を漏らしたのはヘイドレクだった。
 張り詰めていた表情がほんの少し、歪む。
「ヘイドレク…じゃないのか?」
 びっくりしたせいか心臓をおさえつつ、焦げ茶毛の青年が、もう一度、呼んだ。
 マントの下の顔をうかがうように。
 男は一瞬どうして声を出すのか思い出せなかった。ここ数日、外の声を出してなかったので。
「……ぅ …ジュ オ…ク?」
 こげ茶毛の青年の顔に笑みが一気に広がった。


62 :名無し物書き@推敲中?:02/12/18 17:05
>>61
× 外の声
○ うめき声以外の声

スマソ。

63 :名無し物書き@推敲中?:02/12/18 17:37
「やっぱりお前だ!ああ良かった、人違いじゃなくて」
 満面に笑みをたたえているこの青年は、彼の友人に間違いはない。男は兵役で王都へ連れて行かれて、そこでジュオーク、この鳶色の毛の青年と出会ったのだった。
 年はヘイドレクとほとんど違わない。
 物事を楽天的にとらえるジュオークといると、ヘイドレクは過酷な兵役のなかでも笑っていられた。それは自分が苦しみに埋もれてしまわないためには大切なことだった。
「なんかデカくなってないかい?いいな成長期ど真ん中だな」
 ジュオークはケラケラ笑いながら明らかに兵役のころよりも二周りは大きくなっているヘイドレクの背をたたいた。
 相変わらず手加減のない叩きっぷりだ、とヘイドレクは久々に温かいような気持ちとともに苦笑した。
「元気 そうだな」
「俺はな。お前は死にそうだなあ」
「ああ、ちょっとな」
「影が薄くなってるぞ。まぁ来いや、どうせ宿に泊まるんならうちに泊まれよ。小さいがな」


64 :名無し物書き@推敲中?:02/12/18 18:04
ジュオーク。
こいつに会うのは、何年ぶりか。
ヘイドレクは記憶を巡らそうとしたが、過去の残像は霞の向こうに朧に見えるのみであった。
忘れた?思い出せない?
心臓が脈打つたび、血液とともに全身を流れ伝う鈍い疼痛は、
ヘイドレクの思考や記憶、感情というものをあからさまにこそぎ落としていた。
しかし、それでも思い出せることはある。
かつてヘイドレクは傭兵として、この男ジュオークと足並みを揃えた。
剣を振るうよりも、得体の知れない手品じみた<魔術>とやらに惹かれ、
<炎の剣>とかを作り出してけらけら笑っていた男。
その屈託のない笑顔で女はおろか、強面で鳴らす古株の傭兵にも可愛がられた、子供のような男。
そして、珍妙なまじないで俺を始終驚かせ、その度拳固をくれても懲りようとしない、人なつっこい男。

「久し…ぶりだ…な」
声が出た。幾分しゃがれてはいたが、ヘイドレクの喉は主の支配を受け入れていた。

65 :64:02/12/18 18:22
かぶりスマソ。64はボツ。

66 :名無し物書き@推敲中?:02/12/18 18:43
続きがあるならそのまま続けてよいので輪?
かぶっても(・∀・)ナカナイ!

67 :64:02/12/18 19:07
んじゃ、>>63に続ける感じで。元々心理描写だからなんの進展もさせてないし、64。


 ヘイドレクが足を踏み入れただけで、ジュオークの部屋は小さくなった。歩を進めるたび、ぎいぎいと床板が悲鳴を上げる。
「やめたほうがよくないか?壊れそうだぞ」
「木ぎれ引っかぶって寝るのもいいぞ。あれが案外あったかくって、なあ」
 無責任にジュオークは笑う。笑顔はヘイドレクの心に暖かいものを残したが、同時に心臓の鼓動は一抹の不安を寄越していた。

 あの夜。
 女を引き裂き、喰らい尽くした夜。
 あの夜以来、ヘイドレクは眠りの傍らに人を置いていない。
 いかな苦悶に苛まれようと、ヘイドレクは孤独を保った。
 再び、あのおぞましい木の根が俺から伸び、隣人を粉砕したら?
 その隣人が、気のおけない友人だったときには?
 背後から忍び寄る絶望の記憶が、ヘイドレクに今すぐここから出て行けと命じていた。

「ところで、だ」
 いたずらを思いついた顔のジュオークが、寝台脇から酒瓶を取り出した。
 ポート・ニースの7年もの。かつてヘイドレクとジュオークと、その他顔も思い出せない戦友たちと日ごと痛飲した、懐かしい酒だった。
「せっかく逢えたんだ。再会を祝して、一杯やろうぜ」

68 :名無し物書き@推敲中?:02/12/18 20:33
>>67
俺は>>59はあれから毎晩食ったと読み取ったんだけど、
やっぱり食ってなかったのかな?

でも
>>夜を繰るごとに
って書いてあるんだよねえ・・・うむむどっちなんだ?

それと>>ALL
単に兵役に行ったのと、傭兵だったのではかなり
能力に差が出てくるから、ここんところはっきりさせようぜ。

69 :名無し物書き@推敲中?:02/12/18 21:37
人を喰ったのはあの晩だけで、
あとは夜は悪夢やら痛みやらが襲ってきてるのかなと思ってるがどうだろう。

70 :64=67:02/12/19 02:42
>>68
「傭兵」はポイしてください。>>25より、軍に徴兵されたと解釈するのが妥当。

>>59は、喰ってないんじゃないかと判断しました。精神負荷で吐いてますし。>>69に同意。

71 :名無し物書き@推敲中?:02/12/19 18:50
 窓の外は赤く染まりかけ、夜の訪れがもうすぐであることを告げている。
 差し出された酒瓶は窓からの光で赤い影を作っている。
 その赤さが、ヘイドレクの胸に苦い恐怖を湧き上がらせた。
「…どうした?黙っちゃって」
 不思議そうな顔をしてジュオークが首をかしげる。
「……いや、酒はいい。悪いが、俺は別に宿をとるから…」
 頭に響く鼓動の中で、やっとそれだけを口にして、ヘイドレクは顔をそむけた。
 ジュオークは眉を片方だけあげた。
 不可解なことがあったときのこの男の癖だ。
「そうか?俺のうちなら気にしなくてもいいよ。まぁお前の立ってる位置の木の板が湾曲してるのは認めるけどな。だが、そのせいで壊れたって弁償しろとは言わないって」
「…… そうじゃ ない」
「あ?」
 


72 :名無し物書き@推敲中?:02/12/19 18:52

「じゃぁ何だ?どうした?」
 何も知らないジュオークの、ただ再会だけを喜んでくれている口調が、胸の湧き上がる不安を増長させる。
「……夜は…」
 

  夜ハ 俺ハ人間ジャナクナルンダ
  オ前ヲ殺シテシマウカモシレナイ

 血管が鼓動にあわせて、あらゆるところで笑うように浮き上がる。
 しかしマントの下だ。ジュオークには見えない。
「夜は?」
 ヘイドレクはいたたまれない気持ちで、友を見た。


73 :名無し物書き@推敲中?:02/12/19 19:23
 黙っていることしかできなかった。
 話せばなんと言われるだろうか。その言葉を言われるのは分かっていた。
 でもこの男の口からその言葉を聞くのは嫌だった。
 わかっているのだ自分が既に、『バケモノ』だということは。

 黙ったままでいるヘイドレクに、友は肩をすくめると、卓にポート・ニースを置き、呟いた。
「……夜は、自由だ」
「…?」
「お前が人知れず踊っていたって、自由なんだ」
「……は?」


74 :名無し物書き@推敲中?:02/12/19 19:33

 友はすべてを察したように、深く頷いた。
 ヘイドレクの肩を労わるように優しくたたく。
「俺に気兼ねなく踊りたいんだろ?」
「…待て別に踊ってな……」
「さすがにお前が踊ればこの家の維持は絶望的だ。そういうことだな」
「全然違う」
「そうか…」
 微妙にかみ合っていない会話に、もう一度ゆっくりとジュオークは頷いた。
「じゃぁ泊まれなくても酒は飲めるだろ?」
 あの会話で何を納得したのか分からないが、友人の深い追求をうけずにすんだことにヘイドレクは安堵した。
 相変わらずジュオークの突拍子もない言動に当惑したものの、緊張がほぐれてゆくのを感じた


75 :名無し物書き@推敲中?:02/12/20 00:38
木をくりぬいたような質素なコップに、軽やかな水音をたてて酒が注がれる。
 ポート・ニースの透明な水面にうつる自分の顔を、ヘイドレクは覗き込んだ。
 その様子を、静かな眼差しでジュオークが見守っている。
 窓の外は夜の闇が満ち、部屋の中をちいさな洋燈が照らし出す。

「国王は発狂したそうだな」
 その言葉にヘイドレクはつと顔をあげた。
 ジュオークは口元に酒を傾け、淡々と続ける。
「月蝕の終わりに溺愛していた姫が死んだらしい。死因は知らないが。それで本格的におかしくなったらしいな。今、王都は大騒ぎだろうよ」
 紡ぐ言葉が見つからず、ヘイドレクは俯いた。
 そうか、狂ったのか。
「もとから狂っていたよ。あちこちの小国を侵略して、そこで捕まえた子供を城に連れて行って、城で食ってたらしい。人間の子供をだぞ?月蝕は滅びの印だというが、結局世界はなにも変わらないしな。滅んだのは王の精神だけ、か。あはは傑作だな」
 ジュオークの瞳は口元に反して、いたく静かだ。

76 :名無し物書き@推敲中?:02/12/20 01:20
 王が狂うのは勝手。しかし、
「残された国民は、どうなる」
「さあ、ね。今更俺たちの知った事じゃないよ。軍事力を象徴する国王、政治の中枢である王家、
その両方が消え失せたんだ。せいぜい貴族連中が後釜争いの真っ最中だろうさ」
 ジュオークの言葉は重く、辛かった。
 そうか。
 俺たちの滑稽な戦争も、滑稽な結末と共に終幕か。
「ヘイドレク」
 ジュオークが言った。始終浮かべていた笑み、今も仮面のように貼り付いていた笑みが消えた。
「王都に向かう気か?ならやめておけ。あそこは今、内憂外患の見本市みたいなもんだ。
周辺国家の侵略は連中が分割占領について妥協さえすればすぐにでも起こるし、併合された
都市国家の残党はもう兵を挙げている。残った連中は何も見ずに政争で手一杯。屋台骨からして
ガタガタだ」

77 :名無し物書き@推敲中?:02/12/20 20:34
「そうみたいだな」
 コップから喉に流れ込む酒が熱い。
 水面の自分の顔が不安げに揺れている。
 言葉を切ったままのヘイドレクを、友人はコップを口元に当てながら
じっと眺めていたが、ふと話題を変えるように明るい声音で切り出した。

「ところで、家族は無事だったか?あの土産の反物はどうした。母君は喜んでくれたか?」
 ポート・ニースの水面に波紋がたつ。
 コップを握るヘイドレクの指が、押さえ切れぬ衝動に震えた。
 喉の奥が焼けるように熱い。言葉が焼けてしまってでてこない。
 脳裏をあの映像が駆け抜ける。

 ごぼごぼと血の湧く首のない母の胴体、排泄物からくる耐え難い悪臭。
 赤く染まってゆく、根の生えた体。

「母は……」



78 :名無し物書き@推敲中?:02/12/20 20:49
 嘔吐しそうになって慌てて口元を押さえ込んだ。
 血管の中を再び異物がめぐりはじめた。指先が震える。
「……母は、死んだよ」
 ヘイドレクは苦痛に叫びだしたい気持ちで胸の首飾りを押さえ込んだ。
 頭の中で、どくどくと血管が騒ぎ始める。
「死んだのか……」
 静かにそういうジュオークの声がかすんで聞こえる。
「ああ……」そう言うとともに立ち上がった。
 なるべく不自然ではないように、マントの下の根のように浮き出た血管を
気取られないように。


79 :名無し物書き@推敲中?:02/12/21 02:25
「どうした?」
「…酔ったよう…だ。すこし、酔いを…」
 そこまで口にして、ヘイドレクは凍りついた。何気なく振り返って視線に収めた、コップ片手のジュオーク。
 その背後に伸び、のたくり、這いずる、一本の木の根!
 ヘイドレクは知った。
 俺は、ジュオークを喰おうとしている。
 俺は、ジュオークを喰わされようとしている。
 其れを知った今、迷いはなかった。立ち上り始めた痛みも霧消した。
 ヘイドレクは無造作に右手を伸ばした。マントがめくれ、節くれ立った瘤の目立つ二の腕が露わになったが、もうどうでもよかった。
「な、なん…」
 ヘイドレクはジュオークが驚く暇も与えることなく、ジュオークの胸ぐらをむんずとひっ掴むや、窓の外へと放り投げた。
 木枠がへし折れ、悲鳴と言うより当惑の叫びが長く伸び、次いで鈍い音と怒声が響いた。
 ヘイドレクは動かなかった。否、動けなかった。
 既に室内は、異質の気配で充満していた。
 まさにヘイドレクその人の、そしてヘイドレクのそれと明らかに異なる気配とに。
 既に部屋の大半を浸食していた木の根の数々は目前で獲物をかっさらわれたことに怒気を表し、その矛先を当の宿主に向けていた。

80 :名無し物書き@推敲中?:02/12/21 02:56
 木の根はヘイドレク自身から発していた。爪先が、5本の指が、踵が無数に分化し、延長し、異化されて、室内を覆い尽くしていた。
 人を喰らう為にあり、それをなす為に己をすら喰らう。今のヘイドレクは、まさに化物であった。
 ヘイドレクはそれを認識していた。否、認識せざるを得なかった。 苦悶と恐怖、そして血の惨劇と涙と吐瀉物。
 それらが拭いがたく、ヘイドレクの精神にこびりついていた。
「くそ…なめんじゃねぇ」
 ヘイドレクは深く深く息を吐いた。
「仲間売って生き延びる奴なんざ、兵隊失格なんだよ!!」
 不敵に笑い、見得を切るヘイドレクの四肢を、無慮数万の根が貫き、引き裂いた。
「があああぁっ!!」

 宙を舞い、やがて地に墜ち、したたかに腰を打ったジュオークは反射的に湧いて出た罵声を口にしようとした途端、言葉を失った。
 ジュオークが投擲された窓から、洋燈の光が漏れていた。
 光は影を生んでいた。
 その影こそ、ジュオークを顔色なからしめたものであった。
 腕、はたまた触手のような、得体の知れない無数の影。蛆の大群がうねくるような、おぞましい吐き気を催す蠢き。漆喰の壁を貫いて生え出る、その力。
 呆気にとられる、と言ってもいい。ジュオークは半開きの口を閉じることも忘れ、憑かれたようにそれに見入っていた。
「なん…なんだよ…」
 奇妙なまでに力の抜けた声が、ジュオークの喉から漏れた。それはジュオークの精神が示した、精一杯の抵抗であったのだろう。
 が、友の怒声と苦鳴、そして宙に吊り上げられた筋骨隆々たる男の影絵を目の当たりにして、ジュオークの心の奥底で何かが断ち切られた。
「なんなんだよ」
 ジュオークは形なく沸き上がった感情、怒りや恐れや哀しみや不安がごた混ぜになって吹きこぼれる理不尽な感覚を、
「なんなんだよ、一体っ!」
 喉の奥から、腹の底から、心の澱から投げ捨てるように絶叫した。

81 :名無し物書き@推敲中?:02/12/21 23:52

 叫ぶともはや言葉は空になってしまってでてこなかった。
 カタカタと歯が情けなく触れ合って音をたてる。
 気味の悪い汗が皮膚からふきだしてゆくのを感じる。
 ジュオークの視線は完全に、室内の異様な影に釘付けになってしまった。
「おい待て待て待て待て……」
 呟きはむしろ自分自身の動転を抑えるためにこぼれた。
 起こった現実が本当にリアルなのか咄嗟にわからず、あらゆる思考を発動して
物事を脳裏で整理しようと図ったが、いかんせん混乱している頭ではうまくいかない。
 その時、ヘイドレクの叫び声がジュオークの意識を正常にした。
「ヘイドレク!!」
 戦友が死ぬ。ジュオークはそう判断を下した。
 ならば助けに行く、というのが彼だった。彼は立ち上がろうとした。
 しかし腰が抜けていた。




82 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 00:06

 身を刺す壮絶な痛みの中で、なかば意識を失いかけていたヘイドレクは友の声を聞いた。
  だめだ…来ないでくれ……
 音を成さずに、警告はただ唇の動きのみで終わる。
 ギギギ、と噛みしめた歯が鳴る。腸の煮えるような悔しさともどかしさに、顔の筋肉がひきつる。
 張り巡らされた木の根で、洋燈の光がさえぎられ、薄暗くなってゆく中、ヘイドレクの悲痛な叫びは、
痛みの中に声にならない。
  やめろ
 自分を貫く無数の木の根の流れが、破られた窓枠へ向けられたのを感じた。
 窓枠の外は夜の闇が覆ってみえない。奥を見るにはもう洋燈は用をなさなくなっている。

 しかし、その奥には友がいるのだ。
 


83 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 00:09

 丸腰で立ち向かうわけにもいかないと判断し、壊れた自分の家の木片を武器に、
 ジュオークはたどたどしく立ち上がった。
 両の手でしっかりと木片を握り締め、いつでも撲殺してやるつもりで家に近づく。
 ランプの光が薄い今、家の中がどうなってしまっているのか見えない。
 ただヘイドレクの血を吐くような叫びが聞こえる。そして何かが締め付けられてゆくような嫌な音。家の軋んでゆく悲鳴。
 それがジュオークをかきたてた。じりじりと歩を進める。
「待ってろ、今行く。今、行くから待ってろ……」
 何度も 言い聞かせるように呟いて、一歩一歩近づいてゆく。
 


84 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 00:31

 木の根に身動き一つできない。友人は着実に来るだろう。自分はどうすることもできないのか。
 木の根が血管の中に入り込んでくる。そして血管から外に出てゆく。
 既に自分の体はこのバケモノに支配されている。顔の筋肉が、木の根の侵入とともにピクピクひきつる。
 白くなるほど握り締められた、怒りに震えるコブシから、根が伸びてゆく。
 声にならない声で男は叫び続けた。
  来るな  来るな  来るなぁぁぁぁぁ 

「…………ぁぁぁああああ!!!」

 矢じりのように鋭利な根が、搾り出された叫びと同時に一斉に窓枠へ向かった。
 その向かう先に、恐怖に眉をしかめたジュオークの顔がある。
 矢のごとく、飢えた獣のごとく、根はその顔に喰らいついた。


85 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 00:37
 はじめに衝撃があった。
 ジュオークは自分の顔に無数の石が投げられたように思った。
 その衝撃で後ろに倒れながら、石が顔に食い込んでいるように思った。
 次に火を当てられたような激痛の波が、一気におしよせた。
 左からの視界で、家からのびてきた無数の縄のようなものが自分に伸びているのが分かった。分かるや否や、彼はつま先から一気に恐怖が流れ込んで、彼の頭を埋め尽くした。
 彼は無意識のうちに絶叫していた。


86 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 20:02
 あの晩と同じだった。
 怪根が友から養分を吸い上げる振動が、じかに響いてくる。
 同時に、身体のあらゆる筋肉が、応えるように肥大してゆく。
 自らの根に吊り上げられ、手足は虚空をもがくばかりで、叫び声さえ出てこないのだ。
 息もできないほどの怒りで無数の血管が浮かび上がる。
 手を絡めとる根の力にある限りの力で反発しながら、容赦なく食われてゆく友に、手をのばす。
「…やめ…ろ……」
 ジュオークの口からほとばしる叫びが耳をつんざく。
それは彼の精神をむしった。


87 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 20:11


   我 ガ 破 壊 者 ヨ 


 この状況下の中で、彼はあの日(>>28-45)の風景を再び思い出した。
 彼の母を使った何者かは、あの日彼に向かって言ったのだ。
 『我が破壊者』と。自らを滅ぼす者だということか。
 ならば。

「今…壊してやるぜ……」
 身を焦がすほどの怒りをすべて注ぎ込み、渾身の力をこめて彼は左手を振り上げた。
 いくつかの木の根がぶちぶちと引きちぎれる。
 その振り上げた拳の先にあるもの、
 もはや光を落とす隙間もないほどみっしりと木の根に覆われた ランプがあった。
 まだ火はついたままだと、ヘイドレクはわずか零れる光で知っていた。

「焼けろ」

 全力を乗せた拳が、ランプを覆う木の根ごと、ランプのガラスを砕いた。


88 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 21:19

 覆いを失った火は根にその手を伸ばした。
 そしてその瞬間、まるで生き物のように根は、その火を避けるように身をくねらせた。
 洋燈から一斉に木の根が、慌てて手をひっこめるかのごとく退く。
 支えを失った洋燈は、そのまま床に落下し、床にひしめく根の上に油をぶちまけ、またたく間にその火をのり移らせていった。
 火が舐めるように根の表面を伝ってゆく。
 根は怒り狂ったようにうねり、その巨体を壁にぶつけ始めた。
 まるで動物が火を突きつけられて必死に逃げようと壁を掻く様に似ていた。
 そして根はものすごいいきおいで収縮をはじめた。
 ジュオークに群がる根もすべて一瞬にして退きはじめた。



89 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 22:16

 身体が焼けてゆく激痛の中、ヘイドレクは口をひきつらせた。
 笑いたかったのかもしれない。
 初めてこの怪物を意のままに、支配下におけたという喜びが胸のうちを駆け抜けたが、それは一瞬だった。
 根の収縮とともに宙に吊り上げられていた身体が床にたたきつけられる。
 打撲の痛みと、根が身体を引き裂く痛みとは違う、焼け爛れるような苦痛が全身を覆う。
 そして根が自分の血管の中へ、急速に収縮してゆく違和感ともいうべき奇妙な感触がした。

 炎が部屋の木材に燃え移りやがてその身体を増幅させていった。
 根のために荒らされた部屋は火が燃えひろがるにはかえって好都合だった。
 火は恐るべき速さで家屋を炎に包んでゆく。
 友の部屋が燃える…、友…、ハッとヘイドレクは目を見開き、弾かれたように窓枠へ走った。
 


90 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 22:54
 動くたびに千切れんばかりに痛みの走る身体を引きずって、なんとか窓枠までたどりついた。
 壁にすがってやっとのことで外へ身を乗り出すと、炎に照らされて、血溜りの中に浸かって俯けに倒れている、ジュオークの姿が視界に飛び込んできた。
 ヘイドレクの血の気が一気にひいた。手足が急速に冷えてゆくのがわかる。
「ジュオーク!!」
 自分の身体もぼろぼろになっているのを忘れてヘイドレクは駆け寄ろうとした。
 だが、いきおいを支えきれず倒れこむ。
 頭上でぱちぱちと火の粉をあげながら、炎は家を飲み込んでいく。
 みしみしと木材が音をたて、ヘイドレクの後ろで崩れ、轟音とともに家は崩壊をはじめた。
「ジュオーク、ジュオーク!!」
 必死に名を呼びながら友を抱き起こした。


91 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 23:31
「………!」
血にまみれたジュオークの顔は、木の根に食いちぎられ、肉片がでこぼこになっていた。かろうじて右半分は原形をとどめていたが、もはや左は壊滅的だった。
左の眼孔はぽっかりとその口をあけ、その中に深い深い闇だけがある。

言葉が驚愕に喉を押されて出てこない。
ジュオークの焦げ茶色の髪が、血に濡れてぽたぽたと雫をたらす。
友の顔に触れようと手を伸ばしたが、ぶるぶると震えてうまく動かせない。
ヘイドレクの耳に大勢の人の叫び声が聞こえた。向こうに松明のあかりで、赤い点が連なる。
この炎に、町の者が異変を感じてかけつけてきたのだろうか。
ジュオークの家が町から少し離れていることが幸いした。火は大して燃え広がらないだろう。


92 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 23:38

ゆっくりと無数の炎が近づいてくる。

ドクン……

鼓動とは違う何かが身体の中に響いた。
まるで信号のように確かに、ヘイドレクの中に危険だという意識が満ちる。
また再び、化けものが息を吹き返そうとしているのか。
ジュオークの身体を抱えて、炎の被害の及ばないところへおいた。生きているという望みは薄かった。だが生きていて欲しかった。
ヘイドレクの眉が、苦痛に歪む。
木の根に破られ、穴が開きほとんどボロキレ同然のマントを被って、
逃げるように、彼は町のうらの森へ急ぎ身を消した。
夜の闇だけが協力的に、彼を人の眼からそっと隠した。


93 :名無し物書き@推敲中?:02/12/22 23:48
ロクに推敲してない……スマソ。
なかなか意欲をそそられるスレなのはいいとして、
他に見てる人いるんかフアーン。

94 :名無し物書き@推敲中?:02/12/23 08:28
 一切の光が去った。
 天を焦がす炎の照り映えも、星々のかけらがこぼす輝きも、ここにはもう届かない。
 鬱蒼と茂る梢が、ヘイドレクたちを包み込んでいた。
 重々しく天を覆う木々は、物言わぬ庇護者の抱擁であった。
 自身も血にまみれ、ふいごのように荒い息を吐きながらも、ヘイドレクは身動き一つしないジュオークを下生えに横たえた。
 がひゅっ。
 咳き込む音がし、液体がヘイドレクの頬に跳ねた。ぬるりとした感触、そして鉄の臭い。
 ジュオークの血だった。
 喉の奥で血の泡が転がる、ごろごろと響く音が、ヘイドレクを僅かに安堵させた。
「死ぬな…死なないでくれ」
 ヘイドレクは糸のように細いジュオークの呼吸音を聞き逃すまいと、耳を凝らし続けた。

95 :名無し物書き@推敲中?:02/12/23 19:35
montage

96 :名無し物書き@推敲中?:02/12/24 20:47
なんか他に読んでる人の感想が聞きたいです…。
おもしろいのかおもしろくないのか…。
もっと濃い文章がいいのかな。

あと、女の人が登場するのは荒れる元でしょか?
妹とか…。


97 :名無し物書き@推敲中?:02/12/25 00:10
>>7 激ワラタよ、腹いてぇ

98 :名無し物書き@推敲中?:02/12/26 22:54
おもしろいYO!!
かなり独特な雰囲気を作れてて、
俺は大好き。

99 :名無し物書き@推敲中?:02/12/26 23:10
YAー!
ちょい長いけどサイドストーリー作ってみたYO

100 :別視点のお話:02/12/26 23:17
 暗く冷たい空気の満ちる長い長い回廊に二つの足音が響いている。
 ひとつは軽い音をたて、ひとつは前者よりも重くしっかりとした足取りである。
 双方ともひどく急いているのか、音の間隔がひどく短い。
 闇の中を、一点だけぼかしたような明かりが、音に合わせて移動してゆく。
 光源である美しく装飾されたランプを持つ細い指。
 ランプの光はその白い手を縁取る白いレースを映しだす。その紺のドレスをまとった女性が、先方を後方からくる足音を導くように足早に歩いている。
 しかしひどく慎重だ。
 なぜなら彼女の歩くその場所は、騒音を立てるべき場所ではない。
 複雑な幾何学模様をあしらった大理石の床に、通り過ぎる二人の影がはっきりと映る。
 双璧には繊細な図柄が施され、一定間隔におかれた猛禽の彫刻は今にも息を吹き返しそうに感じられる。
 ここはヴィルム城の回廊。王都ヴァイエンジルークの中心地であり、レンプロクト王国の心臓。
 国王の勅令が発せられる場所であり、先の国王が幽閉されている城である。


101 :別視点のお話:02/12/26 23:18
 先方をゆく女の眉間に暗い不安が落ちている。
 頭部の尖塔帽にベールがかけられ、それが女の細い顎を覆っている。
 やがて足音は回廊の突き当たりで止んだ。
 重く荘厳な扉に、女が細い指をかけ、ゆっくりと力をいれて開く。
 扉の唸る声が、回廊にこだまして増幅され、恐ろしい地響きのように耳に届く。
「こ、皇后……皇太后様がお待ちでいらっしゃるはずです」
 女は後方を振り向いた。白髪の豊かな顎鬚を蓄えた老人が、ゆっくりと頷く。
 老人は胸から円錐上の首飾りをつけていて、黒いローブをまとっている。
 急ぎ足で疲れた心臓を落ち着かせるために一度深く息を吸い、細く長く吐いた。
 部屋の中へ足を踏み入れる。暗い部屋だが、床に炎の陰が映っている。
 案内をしてきた老人に頭を下げ、女は眉をしかめて、最初と同じようにゆっくりと扉を閉めた。


102 :別視点のお話:02/12/26 23:20

 部屋の中はひどく暗かった。
 それでも老人は光源のほうへ、忍び寄るように歩を進めてゆく。
 心臓が高鳴った。この老体にそれは痛く響く。
 やがて部屋の中に唯一輝く赤いランプのもとに女性が佇んでいた。
 金の縁取りのされた美しいドレスをまとい、二股に分かれた尖塔帽から黒のベールをかけた秀麗な姿。
 皇太后、先の王の后である。今は皇太子が急遽王位を継ぎ、皇太后となった。
 老人はその優艶な相貌に陰鬱な影を落としている皇后のもとへ駆け寄った。
「どうなさったのですか。陛下は……?」
 皇太后は視線を床に落とした。
 その白皙の頬が少しこけたようだ。睫毛がうっすらと陰をおとす。
 老人は部屋を見渡すようにキョロキョロしながら、ひどく狼狽しながら続けた。
「……何故幽閉など…、それにヘイア王女はどうなさったのです?最後に拝見させていただいた時はご病気などしそうにありませんでした」


103 :別視点のお話:02/12/26 23:22

 王妃に向き直り、問い詰めるように続ける。
「私が城を離れている間に何があったのですか?あの月蝕の終わりに何があったのです?」
「……そういくつも質問を並べないでください。わたくしも俄かに信じられないのですよ」
「も、申し訳ございません」
 慌てて頭を垂れて引き下がる。王妃は静かに部屋の奥へ歩き始めた。
 奥の間は天蓋から厚い天鵞絨のような生地のカーテンが垂れていて見えない。
「先生にはまず見て頂きたいのです。口頭で申し上げるにはあまりにも信じがたいことですから」
 

104 :別視点のお話:02/12/26 23:35
 
 王妃は伏し目がちに壁にある太い紐をひいた。
 カーテンが両脇に退き、部屋の奥が露になる。老人はそのおくへランプの明かりをかざした。
「……おおぉ…!!」
 思わず足が退いた。老人は目を見開いたまま、動けなくなってしまった。
 光に映しだされたもの。

 部屋中を縦横無尽に覆う奇怪な根の数々。
 そしてその中央にある根の根元、その樹塊こそ、先の王その人だった。

 悲愴な、今にも断末魔の声をあげそうな表情をしたまま、石化しているのか動かない。
 その腕の中に、金色の髪の毛が埋もれているのを、老人は見つけた。
「……ああ、あれは……!?」
「ヘイアですわ」
 驚愕に唇をわななかせる老人の後ろで、奇妙に静かな王妃が答える。
「なんと……!王女が……」
「娘を取り込んだままなのです……もうずっと…」


105 :別視点のお話?:02/12/26 23:37
 王妃は口元を押さえ込んで、か細い声で言った。
「私にも解らないのです。突然、ヘイアを抱きしめたあの人の身体から根がのびて……」
 老人は意を決して身体から根を生やし、根塊と成り果てた王をまじまじと見つめた。
 明らかにそれは樹の根であった。
「先生。どうか助けて……私はヘイアが叫ぶのを聞いたのです。あの子は生きているのでしょうか…」
「月蝕の終わりからもう数ヶ月たっています。王女がこのままだとすれば……申し上げにくいことですが………」
 老人の言葉が終わらぬうちに王妃は悲痛に懇願した。
「いえ、いいえ!生きているはずです。どうか救ってあげて……」
「……しかしこのような病は聞いたことがないのです。前例のない病には手の施しようがない」
「…そんな」
 崩れそうになる王妃の肩を、老人が慌てて抱きとめる。
 腕の中で、王妃は顔を覆ったままほとんど泣き声で訴える。


106 :別視点の…??:02/12/26 23:53
もうちょい続く。
一気にあげて寝ます。
んでしばらく傍観するに留まります。


107 :別視点のお話?:02/12/26 23:55
「このことは城の一部の者だけが知っているだけです。
王が突然消えたことで、城じゅうに発狂したという噂が流れました。私たちもその噂を利用して、この塔を封鎖したのです」
「ヘイア王女は…?」
「別の遺骸で葬儀を……」
「王子…現国王には……?」
「話していないままですわ。話せないのです……。あの子は父親を嫌っていました。陛下の……あの…忌まわしい習慣を知らないまでも感じ取って、嫌悪していたのでしょう」
 そこで王妃は言葉を切った。老人もしばらく何も言わずに天蓋を眺めていたが、ふと呟いた。
「…………皇后様、よくぞ耐えられましたね」
 その言葉に王妃は眉根をゆがめた顔をあげ、老人の顔をしばらく凝視したあと、こらえきれずまたか細い声をあげて涙を流した。
 その揺れる背を、皺だらけの手でさすりながら、老人は続ける。
「もはやこれは私の手には負えないでしょう。樹のことは樹を知る者に聞くべきです」


108 :別視点のお話?:02/12/26 23:57
「……誰か、いるのですか?」
「知り合いに良き樹学者がおります。樹のことを知り尽くしている男です。国王に取り付いている樹について知っていることがあるかも……」
 その言葉を敏感に感じ取り、すくっと顔をあげた王妃が急き込み叫んだ。
「その者を!連れてきてください先生、今すぐ。名は?!」
 しかし老人は困った表情をして視線を泳がせた。
「一刻を争う事態なのは重々わかっておりますが、その男は放浪癖があって、一定の地に長期間定まるということがないのです。幸い家はこの王都にありますが」
「名は?名はなんと?」
「カイザヘークといいます。若いですが、樹のことに関しては遥かに素晴らしい知識をもっている男です」
「国中に呼びかけましょう!!」
 叫ぶなり王妃は急いで立ち上がった。老人は慌てて付け足す。
「お待ちください。容易く見つかる男ではありません。あの男のいくところは森の奥深く。人の立ち入らぬ場所がほとんどです」
「じゃぁどうしろというの?!」
 ヒステリックに叫ぶ王女を宥めるように、老人が続ける。
「ですから! ……ガルグ(鷹の一種)を一羽放つのです。伝令をつけて。恐ろしく眼のいい彼らは空からでもすぐに見つけるでしょう。
幸いにも、私は彼の特徴を熟知したガルグを持っています。今夜じゅうに放ちましょう」


109 :別視点のお話?(ラスト:02/12/27 00:08
 王妃はしばらく肩で息をして、悲しみに歪んだ表情を浮かべていたが、それを聞くと安堵したように肩を落とした。
 はじめて、王妃の口元に小さく笑みが浮かぶ。
「ありがとう、ルシュア先生……。本当に頼りになるのは貴方だけです…」
「勿体なきお言葉です。王専属の医者の一族である以上、私の全生命をかけて王に誠意をつくす所存です」
 深く深く頭をたれる老人の禿げかけた頭を、温かく王妃が見つめる。
 再び閉じられたカーテンの向こうにそびえる王の根塊。

 二人は気づいただろうか。
 根が僅かに脈打っているのを。
 そして王の後頭部から、皮膚を割って突き出た白い種子のような石を。
 それがヘイドレクの持つものと、まったく同じ形状であったことを。




110 :別視点の??:02/12/27 00:12
はい長々と。

ファンタジー議論スレの影響か
別視点もあったほうが世界が広がるかなーと思って書いてみた。思わず長かったけども。
面白いって言われるとリレーのし甲斐もあるってもんです。
じゃぁ本編?のほうがんばってくれ。楽しみにみてるYO

111 :名無し物書き@推敲中?:02/12/27 11:07
こういうジャンル初めてなので、気合い入れて読ませて頂いてます。
硬派でシビアな展開にいつも心臓を握り潰される思いをしてました。
(・∀・)イイ!
サイドストーリーまで出来てしまう辺り、
流れによる勢いを持ちながらも濃い話になりそうですね。
発想力&ボキャ貧困なのでROM専ですが草葉の陰からヒソーリ応援してます。ガンガレー

112 :名無し物書き@推敲中?:02/12/29 22:56
独特、硬派すぎて続かない罠。
しかし設定合わせをやると意外さがなくなってつまらんしなぁ。
どうするよ?

113 :名無し物書き@推敲中?:02/12/29 23:05
>>112
後付でつじつまを合わせて行くしかないですな。あんまり面白くない案では
自分が置いた設定、解決した伏線を文の終わりに並べる、くらい?
誰がどうつなげるか分からない、危うい面白さがコレの命ですからねー。

114 :名無し物書き@推敲中?:02/12/29 23:29
おもしろいの書いてくれてる人には本当に悪いが、
リレー小説であまり長文を書かれても続けづらくなるんだよな。
いや本当に面白いんだけどさ、長文で作品の味が固まって
来ちゃってるから、ひょいと気軽には書けないのよ。
そういう訳で、俺は本編の長文は出来るだけ遠慮してもらって、
長文書くならサイドストーリーって形を提案したい。
完結したサイドストーリーは本編書く人にも世界観の構築に役立つしさ。
どうでせうか?

115 :踊りドジョウ:02/12/30 00:26
無茶を承知でいきなり発言。いっそ本流スレ、サイドスレ、設定スレと
三本立てたら? で、設定スレはsage進行で行く。よほど特殊な人でも
無いと設定には目には付けないと思いますが……。

116 :無益なる彫像:02/12/30 00:46
「全く何だここは・・・」
ナイフを手にした少女は、一息ついて、構えを解いた。
周りには、急所を切られ、死んだ者。
そして、手や足を切られてのたうち回る者がいる。
すべて、男ばかりだった。
店のマスターは、呆然としたまま立ち尽くしている。
それは、店のバーテンダーも同じだった。
少女は、イスに掛けて置いた、黒く光を寄せ付けない、大きな布を取ると、
マントの様に羽織った。
「会計」
そうマスターに言う、
ワンテンポ遅れて、慌てたように、マスターは
「ああ、はい、・・・」
と店を見渡し、
「・・・いや、結構だよ。お譲ちゃん」
と落ち着いた声で言った。
少女は笑い、3Rt硬貨を置くと、
「女だと分った途端、態度を変えるんだな。この町では、大抵の男はこんなものなのか?」
マスターは苦笑し
「戦争が厳しくなってね。慰安婦が足りないからな。」
「前線にでもしない、臆病者達に、触らせるものは無いよ」
少女は、皮肉を吐くと、出て行った。


117 :無益なる彫像:02/12/30 00:47
えと、ファンタジー?ポイ世界観ってことで、許してくださると、
嬉しいのですが・・・・。

118 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 01:05
ハードファンタジーと銘打ってあるから、
ここくらいは強い女なんて萌え担当みたいなモンは
ださないで、淡々とやってもらいたいと言ってみる。

119 :karumina:02/12/30 03:31
むーん。
味付けの無い・・・・ご飯は通には美味しいと?
そういう事かいな?

120 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 04:58
炊き込みご飯に味濃すぎるものを混ぜると、台無しになるって感じかな。

121 :踊りドジョウ:02/12/30 05:44
和食をフランスパンで食べる感覚といってもいいですね。
期待される味付けが違いすぎて違和感丸出しって意味で。

122 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 11:32
それも新鮮

123 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 12:36
うん。ある程度はアリ。

124 :karumina:02/12/30 12:38
宮廷の昼食だった。 
119―121の食事が運ばれてくる。
>118
おうじょはいった。
「では、どうしろというのです?」
じょうおうはいった。
「では、どうしろというのですか?」
おうじはいった。
「・・淡々とやってもらいたいんだろう。」
おうさまはいった。
「淡々とやってもらいたいのであろう?」
じいはいった。
「淡々ではなく淡淡で意味は、しつこくないようす とこだわりのないようす という意味ですじゃ」
じいはつけたした
「電子辞書の検索結果ですじゃ、文句があるのであればカシオに言ってほしいのですじゃ。」
コック119は言う。
淡淡の意味を知った上で、しつこくない=ご飯 だが ツウ ならば、それだけで、美味しさが分るのかと、
そう言う意味かと思ったのだけれど。
だから、萌え=薬味(コショウとか塩)はいらないのかな?と解釈して、いった言葉。

125 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 13:08
萌えを塩こしょうととるか、グルタミン酸ナトリウムととるか、人それぞれだからね。

126 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 13:12
正直、萌え論争はファンタジ議論スレでやったほうがよい。



127 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 14:47
>>124
淡淡=ただのご飯とは違うだろ。
それは必要以上に萌えを評価してないか?おれは120の見解に同意。
118は、ハードと銘打ってある=ラノベみたいにはしたくない
という意味だと俺は思った。

128 :karumina:02/12/30 15:02
おけー。おけ。
萌えって人のかんかくだろ?
まあ、いいや。
ライト と ハードのさわなんだい?
この、わからずやにおしえてくれないか?


129 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 15:35
荒れそうな雰囲気がするからそろそろやめませう。

130 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 15:48
踊りドジョウ氏発見!

あからさまな萌えキャラってある意味、
作者の読者サービスみたいな感じがするから俺は嫌だね。
女剣士の何が萌えってそこからある程度、展開やら設定やらが見えてくる。
だが女剣士だって使い方によれば、すごい面白いと思う。

ライトは作者が読者に媚売ってるような小説じゃない?
魔法とか妖精だしてるよー面白いよーって。
俺はこのスレにはあんまり魔法とか妖精とか乱発してほしくないな。


131 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 15:52
そういや、「魔法はむやみに使ってはならんのだ」って見なくなったな。
あの奥ゆかしさがとても好きなのだが。

132 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 16:02
で、本編ってどうすればいいの?
書いていいのか?
例に漏れず少し長めの文章はもうダメ?


133 :無益なる彫像。:02/12/30 16:10
>131
同意。その通りですよ。
>130
そうか? ライトって電撃文庫とかでしょ?
ファンタジーの概念に繋がるので、やめるけど、
電撃面白いよ。
媚売っている奴 いるといえば、いるけどね。
てか、さ、俺の小説。
二つのお国があってな。
それが戦争しとるんだが、少女ってのは、片一方の第2王子なのよ。
で、魔法使い をつかって、逃亡する為に、性別反転の魔法を掛けられた訳さ。
まあさか、その魔法使いが、全てを企んでいたともしらず。
と言う ありがち パターン小説 の一部だったらどうするのさ?


134 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 16:13
それが全然面白くない人間もいるってわかってね。

135 :彫像。:02/12/30 16:19
ありがち、と言う事は、それだけ、それが、ヒットしたという事だよ。
ヒットしてない物の類似品なんて、誰も作らない。
面白くない人は、最先端な人か、少数派なのかな。

136 :ハード支持者:02/12/30 16:25
逃亡するために女になるその王子のプライドに疑問符。
そこらへんを曖昧にできないのがハードでない?
魔法使いにも疑問符。
魔法っていう曖昧なもので終わるより、知的攻防戦のほうが面白い。
女になって逃げるってのは面白いけど、
なんか女になってドタバタする先のストーリーが目に見えるようだ。
そこらへんが萌えなのか。

137 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 16:28
>>133
どこらへんに同意してんのかまったく謎。


138 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 16:38
女になって逃亡ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
変装して顔を隠してても町中見回ってる奴にいつ見破られてもおかしくない、
隠し通すか気付かれるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。ご都合主義は、すっこんでろ。

139 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 16:40
とりあえずイイ女出しとけ、って感じで出すのはやめませう。

140 :無益なる彫像。:02/12/30 16:59
138 と 136
しゃあないやン?
後で、とって付けた設定だってほざいただろうが?
>137

>「魔法は・・・・以下全てに対して、同意。

141 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 17:14
文章のお話に行こう。一案。一日にのべ四十行程度以上は我慢する。
あんまり多く作っちゃった時は冷蔵庫で取り置いて少しずつ出す。
どうだ?

142 :133:02/12/30 18:01
>>140
ああ、そうか。>>133の文意がまったく分からなかった。
>>166がそういう設定だったら、ということね。



143 :137:02/12/30 18:07
だー意味分からないことしちまった。
>>142の名前は137でつ。

だから、魔法はむやみに使ってはならないのだに同意してる割には
自分の小説の後設定に魔法使いがでてくるから、なんでかなーって思ったんだよ。
なんで?
そういうパターンに設定されたらショックだな、って意味?

144 :karumina:02/12/30 18:24
えと。
設定ではっ〜〜と。
国が戦争をしていて、王子が逃亡せねばならんほど ピーンチな訳ですね。
しかも第一王子ではなく、第二王子 
つまり、第一の王子が戦争に出向いて、父ともに死んでいるわけさ。
で、残るは、第二王子のみ そこまで、ピーンチな訳なんですよ?
むやみに使ってないと思うのですが?
楽な気持ちで、書いたのが行けなかったカナ。

145 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 18:33
>>144
なるほどね。
おれがその設定が嫌だと思ったのはね、
ファンタジーと銘うってあるから魔法使いを出すっていう安易さとね、
わざわざ乱世に女に化けるっていう無謀さに
萌え要素をみいだしたからかな。

っていうかこの場所で議論したくないんだよ。
場所かえないか?

146 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 18:55
何処にする?

147 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 19:07
ファンタジ書いてる奴逝けスレは?
ちょうど議論してなかったっけ?萌えとはなにかとか魔法とか。

148 :真に無益なる彫像。:02/12/30 21:12
本当に、いい人たちですね。
貴方達のような人がいるから、このレスがまともでいるんだ。
レスに変わってお礼を言おう。
ブギーポップ風。
で、そこでよいの?

149 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 21:20
おいでませー。

150 :名無し物書き@推敲中?:02/12/30 21:27
>>彫像サマ

貴方はまず主語と目的語をはっきりさせてから来ましょう。
ブギーポップがどうしたって?

151 :彫像。:02/12/30 21:31
148の言葉がよ。
ブギーポップ風だなぁと。

152 :150:02/12/30 22:57
俺かっこ悪いな。そういうことか、スマソ

153 :彫像:02/12/30 23:13
by つけけとけばよかった、と 後から思った。
自分でも、一瞬ハア?となったからなぁ。

154 :朽ち果てた彫像は時を刻む:02/12/31 23:29
漆黒の闇の中、
矢のような激しい雨が降り続いている。
その時、激しく、雷鳴が轟いた。
また、一段と、雨風が強くなった。
馬が草原を走っている、白い貴族用の白馬だった。
手綱は張られておらず、下に垂れている。
雷の光の中、白馬の上の黒い塊りが映し出された。
黒い塊りは振動の中、呟くように言う、
「雷が恐いのか・・・・悪いな」
白馬は答えず、上下の振動が黒い塊りをさらなる雷が映しだす。
黒い塊りは、馬の首にもたれかかっていた。
重い瞼を、薄っすらと開け、流れる景色を映す。
黒い塊りは、瞼を落とした、疲れているからではない、思い出す為だ。
暗い世界の中、老婆の高笑いが聞こえる、
あれは、・・・・・どれぐらい前の事だっただろうか。
昔から、城の一角に、立ち入り禁止の場所があった。
それが、まさか、魔女の住まう場所だとは、思いもしなかった。
場所を知ったのは、じい に父上と兄上が死んだと聞いた時だった。
城の中とは異質の空気の中、
光を吸収するかのような漆黒の服に身を包み、老婆が一人立っていた。
「・・・案外綺麗な部屋だな。」
俺は、ぶっきらぼうにそう言う。
老婆は、ニャリと笑い。
「えぇ。私以外にも、沢山いましたからね。」
部屋を見渡すが、
「誰も居ないぞ?」
「え〜え。それは、この国が滅ぶと、占いに出ていた者で、」
「くっ」
俺はナイフを抜くと、その切っ先を老婆の喉に、向ける。
じい はその二人をみて、おろおろするばかりだった。
「その為に、ここに入らしているのでしょう?」

155 :朽ち果てた彫像は時を刻む:02/12/31 23:29
部屋を見渡し、

156 :カタカタ・・鮭兵:03/01/01 02:22
「その為に、ここに入らしているのでしょう?」
老婆は顔一つ変えず、そう言うと、目をじいの方に向け、
「フェン・ラアワド・ナレジ この部屋から出て行っておくれ、ここからは、
代々、秘密にされてきた場所だぁよ。執事である アンタを入れることは出来ないのさ」
じいは、頷くと、俺に一度、軽く礼をすると、
「では、宜しく、お願いいたします。」
「ああ、そんな事 いわれんでも、分かっているよ。その為にここに住まわせてもらっているんだ。」
じいが、出て行くときに扉を閉めた途端に、完全に異様な空気に支配された。
鼓動が高鳴る。
目を俺に戻し、そして、皺だらけの頬がほころんだ。
「おや、流石に、王家の血か・・・反応しているね。苦しいんだね。付いておいで」
そう言うと、ナイフを無視して、ドアから右の面の壁を押した、すると、壁に筋が入った。
返し扉だったのだ。
「これを、隠す為に、薄明かりだったのか」
俺は妙に納得した。
老婆は振り向き、笑う、
「暗いから、気を付けな・・・すべって死ぬことはないだろうけどぉねぇ」
その首に、小さな、赤い筋があった。
血だ。


157 :鮭兵てか、鮭は美味しい彫像は食う。:03/01/01 02:37
血だ。
やはり切れていたのだ。
俺はナイフの先を見てしまう、無論かすり傷なので、血は付いていない。
「何を驚かれているのです?」
俺は、はっとし、驚いていた顔をしたことに気付く。
「血が・・・・・」
老婆は笑いながら、ランプを手に取ると、火を点けた。
暗いこの部屋では、小さな太陽のように、火が眩しい。
「血など、・・・もう、どうでもいいのですよ。みんな、死ぬのです、貴方さま以外・・・。
さあ、敵兵がここにも来るでしょう」
そう言うと老婆は暗い穴のような階段を下りていく、
俺は、急いで、老婆の後に続く、そこは、部屋より幾段、臭いが強くなっていた。
俺は、すぐに老婆に切り出す。
「おい。みんな死ぬって・・・・降伏すれば、お前らは助かる筈だろ?」
少しの間が過ぎ・・老婆が思い出したように、口を開く、
「今から、貴方様を逃がします。そして、誰も口を開きません。そしたら、殺されるのですよ」
「・・・・魔術を使って、ヤツラを倒すのではないのか?」
「ヒィヒィッ・・・」
老婆は引きつったような笑い声を出すと、
「それはそれは、まんまと、フェンに騙されましたねぇ」
じい、は他の使用人の誰よりも信頼できる人物だった、だから俺はムキになった。
「そんな筈は無い。」
「では、全てが貴方様の為であったとするなら、それでも、ですか?」
「・・・・・・・・・」
「そうでしょう。それに、私達の魔術には、そのような力はありませんよ」
「なっ、お前たちは伝説にあった、魔女だろう?」

158 :彫像は あけオメという:03/01/01 02:54
「なっ、お前たちは伝説にあった、魔女だろう?」
「伝説など・・かつての名ですよ・・・・」
「しかし、子孫なのだろう」
「子孫と言っても、儀式書・道具・を5代前の王がほとんど燃やしてしまったそうで。」
「・・・・それで、何が出来る?」
「ですから、貴方様を逃がす事だけですよ。」
「で、その結果、全員死ぬのか?」
「ええ、まあ、貴方様が、最後まで戦われても、戦われなくとも、敵はこの城に、火を放って、
全てを燃やす気ですからね」
「先ほどは、口を開かなくて死ぬと言わなかったか?」
「口を開かないものなど、敵が来る前に、自決するでしょうねぇ。捕まるのは、逃げていった者達、
ですよ。ヒィィヒィヒィ 知らないのに殺される・・・この世はあわれですねぇ、さあ付きましたよ。」
そう言うと、階段が終わった。
相変わらず薄暗い部屋だった。
「さぁて、貴方の姿を変え、そして、この城から、逃がします」
「・・・外に出れるのか?」
「ええ。 では、城の者も と言いたいのでしょう?でもねぇ。王子さま、貴方様には
厄介な、王族の血が魔力の力に対抗するのさぁ、だからね、貴方様一人分なのさ」
「なら、私だけ残る」
俺は、そう言った。
「あの扉は、こちら側からは開かないようになっています」
「・・・・・」
「では・・・・お姿を変えさせていただきますよ、そこの円の中心に立ってください・・・
ええそうです キヒヒィヒィ」
俺は、老婆の言葉に従い。
円の中心に立った。

159 :彫像は あけオメという:03/01/01 03:12
円の中心に立った。
「tokikoenu 鏡の kilyouwokotouutsi 幽玄に somarisigarasinotikara ・・・・・・」
円の縁取りが淡く輝くと、俺の立っている中心にある、小さな円も同様の光を放つ、
すると、文字が浮かび上がり、空中に浮かび浮遊する、一方床にも、色々な大きさの
円と文字が複雑な幾何学模様を造り上げている。
「akemasite omedetou kotosiha イエソドたる地よ konosaki wasureta」
そのとき、老婆以外の声がした、その声は、暗闇の中で、言う。
「ははっ。流石だねぇ。まったく、同時に魔法陣を二つも出すとはさぁ?」
老婆の声は
「regahahmom kannrilroe バがコウィ・・・グガッ・・・・・・・・!」
老婆の声が、呻き声にかわり、増していった円の光が止まった。
暗闇の中、俺は目を凝らして、老婆を見る。
老婆の腹から、ギラギラと鋭い光が目に反射した、剣だ。
恐らくは、短剣だろう。
老婆ではない声は、こう告げる
「憶えているかい?あんたの娘が生んだ出来損ないの、孫娘の事を」
言い終わると、短剣が消えた。
老婆は、腹を抑えながら、ふらふらとよろめき、しかし、踏みとどまる。
「どうだい、私の腕は?一度では殺さないように急所を外したんだよ?」
老婆は、体中を小刻みに震わせていた。
「なっ・・何故じゃ・・なぜおる?・・・お前は、リイラにしまつさせた筈」
「ああ?母親にしまつさせるように言っただけだろ?」
老婆の目が見開かれる。
それを見て、笑うと、
「ばぁかだねぇ。流石は親子だ・・・」
そして、真顔に戻ると、
「魔法より、剣の方が早いんだよね。」
光が、弧をえがいた。
老婆は、後ろに崩れ去る。
それと、ほぼ同時にして、

160 :彫像は あけオメという:03/01/01 03:29
それと、ほぼ同時にして、
老婆の後ろから、チッと下を打つ音が聞こえてくる、
光が増した円と文字が体の中に入ってくる。
床の幾何学模様が回転をはじめる。
「未完成の陣を強制発動 とはっ・・・・・落ちたものね。」
音がした風を切る音、聞きなれた音だった。
そう、剣が風を切る、その音だ。
そう思った時、右の腕に、痛みが走った。
「痛っ」
さっきまでは、なんでもなかったが、どんどん、体が重くなっていた。
これが、魔方陣の効果が効き始めている証拠たのだった。
「うふ・・・印はつけたわ・・・。逃げなさな。まあ、その不完全な陣では、
城の周りだろうケドね。アハハハハハ・・・・・・。あ、そうそう、三日ぐらいは、
貴方は、走ったり出来ないからね 王族の血は 魔力を弾く、でも、一度染みこめば、
麻痺させるの・・・・・。だからねここで、殺さないの。バイバァイ〜。」
そう言った瞬間。
光が弾けた。目の前が全て、白い空間の中にいた、と思った瞬間、真っ黒の闇になった。
目覚めた先は、馬小屋だった。否、正確に言うなら馬の上だった。
馬は俺に驚いたのか、走り出した。
人々の声がした、危機を感じた、動かない体を無理に動かし、
俺は、俺と馬との間にある、黒い布を引っ張り上げ、自分を隠した。
自分の体を軽く感じた、髪が鬱陶しく感じた。
だが、今はどうでも良かった。
ただ、この馬に揺られて走って、いれば、安全だという 思いだけだった。

161 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 12:42
サイドストーリーだったら、サイドストーリーだとどこかに書いて欲しい。
いっそメール欄でもかまわないから。
本編か?と一瞬おもっちった。

162 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 16:30
荒れそうだったけど、結構読んでくれている人がいるんだ……。
少し感動しかけた。
じゃぁ本編すこしできたので書きたいんですけど、長文はダメなんですよね…

>>141さんの意見を取り入れて一日40行以上はかかないという方向で。
リレーにむかない長文書きでもうしわけない…。
でも書きたいんです……沸くイメージを具現したいのです…。
でも自分だけの物語にしたいわけじゃなくて、誰かが手を入れてあらぬ方向に
変わっていくならそれも楽しいと思っています。
もう少しだけ。

163 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 17:59
僕もちゃんと見てるので頑張れ。思い通りにならないのも
現実だ。2chにも他人がいれば現実は滲み出る。でも頑張れ。見てる。
応援する人がいるのも現実だ。

164 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 18:11
http://www.geocities.co.jp/Outdoors-Marine/4547/index.html

165 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 18:32
>>163
ありがとうございます。
相変わらずの長文ですが、本編復活させてみました。



166 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 18:36
>>94からの続き

「死ぬな…!ジュオォ……クッ……」
 ジュオークの頭を胸に抱え込んで、ヘイドレクは祈るように叫んだ。
 こげ茶色の髪にべっとりとついた血。
 ヒューヒューと喉を通るたびに鳴る、か細い息の音。
 ついに恐れていた悪夢が現実となってしまったのだ。惨劇は起こってしまった。

 あのとき、本能が命じたとおりに、出て行くべきだったのだ。
 もっと自覚するべきだった。
 自分はもはや人間ではないことを。
 取り返しのつかないことが起こってしまう前に。

「…すまない………本当に…すまない ことを………」
 歯を強く噛み締め過ぎて小刻みに震えているヘイドレクから涙がぽたぽたと
ジュオークの頬に落ちる。
 それはどす黒い血と泥に混じって、顎の方へ伝っていった。


167 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 18:40


 誰か、誰でもいい。誰か……助けてくれ。
 この友人を救ってくれ……!!

 次々と滲んでくる涙に、ヘイドレクは眼を強くつぶった。
 聞こえてくる、風の声ほどの弱弱しい息の音がとぎれぬよう祈りながら。
 鉄臭いにおいが鼻をかすめる。そしてさっきまで飲んでいたポートレースの匂いが
わずかに香ってくる。
 そしてそのうちに、血の匂いにまぎれて薄く匂っていただけの草の匂いが、段々濃くなり始めた。
 まるで草を顔の前に差し出されているような鮮烈な香りだ。
 ヘイドレクはそっと双眸を開いた。ジュオークを抱える自分の手の異変が、
その視界に飛び込んできた。
 手が緑色になっているのが見えたのだ。
「……は、はは、今度は…なんだよ…」
 泣き笑いのような引きつった笑みを浮かべて、ジュオークの肩に置かれた自分の右手
を凝視する。
 それはゆっくりと浮き出て、手の甲を覆ってゆく。萌黄色をした何かが。


168 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 18:44
 ヘイドレクは眼を凝らした。
 自分の手の甲に生えてくる無数の…芽?
「やめろよ……」
 声が怒りで戦慄く。口元の笑みは凍りついたままで。
「なんなんだっ!!!!」
 怒り狂ったヘイドレクが憑かれたかのように、無我夢中でその芽を毟り取る。
 だが掻きとっても掻きとっても、芽は物言わず、無数に生えてくるばかりだ。
 ぽろぽろと取れた芽が、ジュオークに降り注ぎ、赤く染まった身体に、
鮮やかな緑色の斑点をつけてゆく。
 さわさわ…、と耳のすぐ下で音がして、ヘイドレクはハッとして、急ぎ自分の頬に
触れた。

 ぽろぽろ、と萌黄色の芽が落ちた。


169 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 18:55
 手の平にさりさりと柔らかな紙のようなものの触れる感触。
 ぽろぽろと頬から落ちたものを手のひらに包み込み、ゆっくりと目の前で開いた。
 まぎれもなく、何かの植物の芽だ。
 しかし芽はジュオークを狙う様子はなく、ただヘイドレクを埋め尽くしていった。
 ヘイドレクの手は芽におおわれ、通常の三倍の大きさまで膨れ上がっていく。
「もう止めろ……俺を、人間に戻せ……。……戻してくれ!!!!」
 ヘイドレクは両手で顔を覆い、叫んだが、口の中に折れた芽が入り込んできて、
噎せこんだ。
(俺はもはや、人間の姿ですらない……)
 絶望的な気持ちで塞がれることを免れた視界から、ジュオークをみた。
 それから、口に入ったいくつかの芽を脇に吐き出す。
 しかしヘイドレクは変貌した身体が、この瀕死のジュオークを襲わなかったことに
感謝していた。芽は生えてくるだけで何もなかったからだ。

 ミシ……

 背後から、下生えを踏むかすかな音が耳に飛び込んできた。
(…誰かいるのか!?)
 反射的にヘイドレクは振り向いた。すがるような気持ちで。


170 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 19:01
どぅわっ。調子のって40行超えた……ッ。
さっそく自分の言葉を破っているなんて…ごめんなさい。>>141さん

逃げよう……。

171 :彫像は酸性雨に弱い。:03/01/01 19:38
ああ、悪かったね。
116の作者だよ。
やっぱり、あの少女があのままの文では、流石に
浮かばれないと思って書いたんだ。
つまり、154―160までは、つうかもちっと、続きあるんだけど、
 が116の少し前のところだよ、 安易に考えた設定も、練っていくうちに
中々のものになってきたんでね、書いたんだ。
あと、気軽に書いたもので、叩かれて、そのご、誰もこないから、
何とかしよう というきもあったんだけどね。
まあ、それだけだよ。確かに読み手に対して長々と休みなしに書くのは大変で、失礼に
あたるね、でも、一度書くと、止まらなくなる癖があるのです、
・・・・以後、気をつけます。失礼しました。
では。

172 :名無し物書き@推敲中?:03/01/01 20:20
>>171
うーん。だね、HNもあるもんね…。
でもサイドならサイドだと分かるようにしないと本編と混ざっちゃうからなぁ…。
なら、あんまり採用したくない案だけど、
始まる最初か最後の一レスをつかって
「>>○○->>△△ サイドストーリー」とか入れたほうがいいかも。

あの設定を採用したからには叩いた人をうならせるような
面白さを期待しているよ。

173 :ま、本編進めてみる:03/01/01 21:09
 それは足音ではなかった。
 ヘイドレクから伸びた芽、それが細い茎を伸ばし、双葉を開く音だった。
 さり、さりり、みきり。かすかな音が無数に響く。芽は無数に萌え、育ち、ヘイドレクの背後に緑の絨毯を現出せしめた。
 芽が伸びるたび、もとからあった下生えが萎れ、朽ち、土に帰った。
−これは−
 呆然とヘイドレクが見守る前で、妖樹と化したヘイドレクの芽は一斉に成長を始めた。
 日光の代わりに月光を浴び、水の代わりに木々を朽ち果たし、その滋養分を啜って。
 ものの五分を要さず、木々は怪異の姿持つヘイドレクの丈を超えた。超えてまだ、木々は伸びゆく。
ついには茂る森を覆う天蓋となるものもあった。
 ヘイドレクはこのおぞましき奇跡を、なかば屍と化した友を抱えて見守った。

 木々は己を育んだ森を外方より包み切ったとき、その成長を終え、次なる変容を始めた。
 四方八方、無限方位に伸び広がった枝々の先端に、くびれが生じたのだ。
 くびれた先は震え、膨らみ、樹皮を割り、艶めかしく色づいた。
 いつしかそれはずっしりとした質量を誇示しつつ、枝先からぶら下がっていた。
 戦慄すべきそれら無慮数万の果実は、毒々しい鮮紅色に染まっていた。

   とりあえず芽を萌えさせてみました(w

174 :一応本編:03/01/01 21:52
怪芽が萌えた!(w


 下生えの朝露に足をぬらしながら、男が歩いている。
 その初老の農夫は、どこかビクビクとおびえた様子で、何かを探すように辺りを
キョロキョロと見回しながら、路を塞ぐ低木の枝を掻き分け、歩いていた。
 腰に錆びている古い鎌がかけてある。
 しきりにその鎌に手をかけながら、農夫は朝霧のうっすらとかかる森をうろうろと
歩いていた。
 しかし、見慣れたはずの森の異変に気づいて、農夫はハの字に歪んだままの眉毛の
下の丸い大きな目をいっぱいに見開いた。
「……なんだこれは……」
 霧の中でも鮮明にそれは視界に飛び込んできた。
 森に寄生したかのような巨大な妖樹。天をつくほどの壮大な枝ぶり。
 その枝枝にぶらさがる、目に痛いほど真っ赤な奇怪な果実。
 しかしその周りの木々がいっせいに枯渇してしまっている。


175 :一応本編?:03/01/01 21:55

「まさか、本当に……お?」
 木の根のところに、埋もれるようにして青年が横たわっているのが見えた。
 農夫は飛び上がって、慌てて青年の所に駆け寄る。
 そして青年の様をみて、一瞬痛そうに顔をしかめた。
「……おお生きとる。しかしひどい傷だ。…うーん、まさか本当にいるとは」
 ぶつぶつと呟きながら、農夫はこげ茶色の青年を抱え上げた。青年の身体に積もっ
ている草が、はらはら落ちる。
 農夫は気味悪そうに苦い顔をしながら、上を見上げた。
 視界に毒々しい赤が飛び込んでくる。
 ジュオークを抱え、農夫は肩をすくめて一目散にその場を去っていった。

 湿った冷たい風が、その妖樹の枝枝をすりぬけて、泣いているような音をたてている。


謎を増やしてみる、と。

176 :彫像は溶け始め輪郭を失う。:03/01/01 22:15
>172
うえい。
どうしょ、期待されるとは、
予定では、あと、一 二回で おわるんですよ。
皆様のご要望にこたえて、シナリオを考えたので、
現実的に作らさせていただきました。
期待しない方が 100%いいです。
期待すると凹むよ。
たとえ、それが、嫌味 皮肉 でいった言葉だとしてもね。

177 :彫像 個人的外伝。:03/01/02 01:06
温かい場所に居た。
だが、俺の心は落ち着かなかった。
目をあけなければ、と、俺が言う。
しかし、それは、温かさの中に消えていった。
それが、何度か繰り返された。
その時、プツリと、温かさが消えた。
目を大きく見開く、
緑色の海が流れている。
白馬が走る、上下振動と、風を切る感覚が、
俺がまだ馬の上に居るのだと、実感させる。
(雨はもうやんだんだな)
そう思い、上の方を見た、
白い雲が切れ切れに浮かび、太陽が輝いていた。
と、前方の左右に森の木々が目に入った。
(やばいっ)
そう思うより早く、手を手綱へと伸ばす、
手が手綱に触れたと思った瞬間、確認の為に目を手綱から、前方に向けた。
前に障害物が無いと思った瞬間、体に強い衝撃が走った。
俺の体は、強い力で、後ろに弾かれ、そして、そのまま、背中から下に落ちた。
「グッ・・・・ハッ」
一瞬何があったか分らず、ただ、空を仰いだ、
呼吸が出来ず、少しの間、地面の上で、喘いだあと、
上半身を起こして、白馬の方を見る。
白馬は、一度こちらに目を向けると、背を向けて走っていった。
俺は、待てとも言えず、上半身をゆっくりと横たえると、
痛みを思い出すかのように、空を仰いだ。
しばし、風の音だけとなる。

178 :彫像 個人的外伝。:03/01/02 01:14
116からはじまった、わけのわからん物語。
>>154−160 177
ダイジェストは144に書いてある。
まだ続く、がっ・・・116のは 経由しない。
ごめんなさい。116を含もうとすると無駄に、長くなるので勘弁を

179 :一応本編:03/01/02 20:58
登場人物を増やしてみた。


 町の隣に茂る森を少し入っていったところに、息を潜めるように家が建っている。
乾いた土の壁に蔦が這い、茅葺きの屋根のところどころから草が生え、花をつけて
いる。屋根から灰色いずんぐりと太った煙突が突き出ていて、白く煙が昇っている。
 窓の内側に見えるポツンとひとつ置かれた鉢植えから伸びているハーブのような草
や、外にきちんと積み重ねられた薪や樽から、そこの住人の清く慎ましい生活ぶりが解る
だろう。
 家の中にいるのは、一人の若い男だった。
 中途半端な長さの黒髪を大雑把に、細い何かの植物で束ねている。髪と同じ色の眼には、
丸い眼鏡がかけてあり、気の弱そうな面立ちだ。
 眼鏡の男は一人で嬉しそうに弛んだ表情を浮かべながら、コップに注がれた温か
な飲み物を飲んでいた。
 旅人のようなローブをまとった風情からはそこの住人ではないことがわかる。
 しばらくすると、重い足音が近づいてきて、戸口がどんどんと鳴った。
「どーぞー?」
 驚く様子もなく、眼鏡の男は戸口に向かって言った


180 :一応本編:03/01/02 21:29

「空けてくれんか!?」
 戸口の向こうから切羽詰ったような声が聞こえてきたので、慌てて戸口にたち、
開けてやる。戸口の外に立っていたのは、あの農夫だった。
「あ、ご主人。どうでした?」
「あんたのいった通りだった。ほれ」
 農夫は抱えている青年を少し持ち上げてみせた。頬に乾いた血をはりつけたその様を
みて、眼鏡の奥の目が見開く。
「やばいですね。おわ、片方の眼がない?!」
「どうにか生きてるようなんだが。なんとかできないかね?……ところで家内は?」
 きょろきょろと部屋を見渡して、農夫がいうと、
「町に買い物に行きましたよ。砂糖かなにか何か切れたらしくて。それより手当てして
みましょう。奥のベットお借りできます?」
「ああ。一刻を争う事態だ。構わんよ」
「じゃそちらへ」
 農夫は奥のベットに恐る恐る青年を横たえ、一方青年は熱湯を沸かしにいった。


181 :一応本編:03/01/02 22:39
「それはなんなんだ?ルポワくん」
 青年の顔にべっとりと小さな葉がのせられ、その上から黄色い液に浸された布があて
られている。その主人は不思議そうな顔をして、眼鏡の青年をみた。
「カラゴラ系植物の樹液にひたしたものです。炎症をおさえる効果がありまして。
……一通りやってみましたんであとは大丈夫と思いますよ」
 ルポワと呼ばれた青年は浮き出た汗を指の背で拭きつつ、笑って顔をあげた。
「……何かに刺されただけじゃないですね。肉が吸い取られたのかな、あちこちえぐれ
てましたけど。それにしても酷いな、これは」
「…ほんとに誰がこんなことをしたのか……。むごいことをするもんだ」
 眉をひそめて、主人は包帯にまかれたまま眠っている青年を見やった。
 包帯からはみ出ている痛ましい傷跡に身震いする。
「ところで」
 ルポワの表情から弛みが一斉にひき、黒い瞳が何かを捉えたかのごとく静まる。
 横たわる青年のこげ茶色の髪の毛の中から緑色の芽を摘み上げると、目の前で
方向を変えながら眺め、主人の方へかざした。
「これはどこから持ってきたんです?」


182 :名無し物書き@推敲中?:03/01/02 23:08
 差し出された芽に不思議そうに頸をかしげたあと、主人はつと顔をあげて、大きな丸い
眼を開いた。
「この若者が倒れていたとき、上にふりかかっていたよ……それより思い出したんだが森に奇妙な………」
「すごいですね。多分ですけど、これはカラゴラ系植物の一種でモーリエというんですが、土に敏感でしてものすごい山奥、それも滅多に人の入れないような山奥にしか生えて
ないんですよ」
 言いかけた主人をさえぎってルポワが興奮した口調で早口に続ける。
「信じられないなぁ。この芽は治癒能力が非常に高くてですね、多分この若者が
助かったのもこれのおかげのようなものですね。僕も前々から探してたんですこれ。
でも気になることは、これは芽なら貴重ですが、成長すると厄介なんですよね。これは
まだ芽だからいいですけど」
 その緩い表情からは予想もできないその早口の説明に、主人は声を出すのも忘れて
ただただ圧倒されていた。
 ルポワの方といえばまるで子供のように興奮しきった表情を浮かべて、目に見入って
いる。


183 :山崎渉:03/01/06 16:00
(^^) 

184 :名無し物書き@推敲中?:03/01/06 21:16
と、思えばいきなり立ち上がった。
「まだあるかな。行ってみてきます!」
「え……止めといたほうが」
「いやいや、こんな貴重な芽ほっとけませんよ。どのあたりで?」
 気迫に押されて主人は、びくびくしつつ窓の外を指差すと、
「ここを真っ直ぐ行くと、多分……ある…はずだがしかしな………」
「わかりました!いってきます!」
 主人の言いかけていることなど全く耳に入っていない様子で、ローブを被りなおすと、
ルポワは見かけからは想像できない速さで戸口を飛び出していった。
 窓の外に、全速力で駆けてゆく後姿が、森の中に消えて行くのが見えた。
 主人は肩をすくめて、病人に向き直り、毛布をかけなおしてやる。
 笑みの含まれる口元からため息が一つ零れた。
「植物バカってやつかね」


185 :名無し物書き@推敲中?:03/01/06 21:47

 森の中に入った途端だった。
 彼はその異変に気づいた。木々が騒がしくない。
 一羽の鳥もいない。
 ずり落ちてくる眼鏡を抑え、全速力で走りながら彼はある書物の内容を
思い出していた。
 先ほどの青年に降りかかっていたモーリエについてのことを。
 確かにあの芽は貴重だ。滅多に取れるものではないから。
 それが土に敏感で、発芽するためには種子が発芽するに耐えうる、厳しい条件を
クリアした厳選された土壌が必要となることからも『貴重』なのだが、それよりも―――
 その芽は手に入れること自体が非常に困難なのだ。
 それがモーリエの芽が入手困難な一等秘薬せしめたる所以でもある。

 なぜそこまで入手困難だと言われるのか。
その答えは、《緋の番人》と呼ばれる『果実』が芽を守っているからというのにある。

 彼らは種子を守る。そのためには敵と見なしたものは徹底的に潰しにかかる。
 ゾク、と背中が粟立つのを感じて、ルポワは唾を飲み込んだ。
 恐怖からではない、抑えきれない期待と興奮からだ。
 そんな果実がなるというなら是非見たい、この植物バカの頭にはそれしかなかった。

186 :名無し物書き@推敲中?:03/01/06 22:08
モーリエの芽があるということはその《果実》もいるはずだ。
 あの若者はどうやってその芽を手に入れたのか。
 《果実》の目をくぐり抜けて、芽を手に入れる方法があるのか、疑問だ。
「書物どおりの風景になってきましたね……」
 森の異質な雰囲気に走るスピードを緩めながら、ふと、ルポワは近くにそびえている
大樹を見上げた。
 樹皮がしなびている。
 眼鏡の奥の目を細めながら、その樹皮に触れる。
 表面がまるで腐ったようにぶよぶよしている。またすぐに手をひっこめ、ローブの下に入れると、考え込むように首をかしげた。
 おかしい。
 書物によれば、モーリエは発芽してから成長するまでに数百年を要するはず。
 近隣の木々をゆっくりと侵食し、肥大してゆく怪異の樹のはずである。
 しかし、これはまるでモーリエの木のある近隣の樹林の様子に似ている。
 少なくとも前にきたとき、こうではなかったはずだ。
 なぜだ?
 胸のあたりでざわざわと黒い影のような不安が沸きおこる。
 そして気づかないうちに、かきたてられるように駆け出していた。
 警告のように鳴り響く心臓を抑え、ルポワは森の奥へと飛び込んでいく。



187 :名無し物書き@推敲中?:03/01/07 02:47
 ふと頬に冷たい刺激を感じた。
 いくつも重なる。ぽつぽつと小さな粒が空から−−−雨が降り始めた。
 ローブを頭までかぶり直し、なおも走り続ける。
 降り注ぐ雨粒は頻度を増しはじめ、視界がぼんやりとかすみはじめる。
 囁く程度だった雨が次第に、騒音をたて始め、視界が緑の靄でかすむ。
 木の根に引っかかりそうになって、ようやく走るのを止めたルポワは上を見上げた。
 雨粒が細い針状になって、放射線状に降りそそいでくる。
 慣れない急激な運動で彼の息は切れ切れになり、ゼイゼイと息をするたび重たく肩が
上下する。
 息で曇った眼鏡を拭き、もう一度かけ直したところで、彼は左の視界の端のものに気づいた。
 とっさに顔をそちらへ向ける。

 雨のためにぼんやりとしたシルエットばかりだったが、その色は、
 はっきりとルポワの脳裏に焼きついた。
 彼はゆっくりと、そこに近づいていった。
 急に視界が開けた場所に出た。
 木々は消滅してしまっていて、ホールのように円形状になっていて、
 その中心に、まるで王のような迫力を持って、巨大な樹がそびえていた。
 枝枝に、恐怖の象徴のように毒々しい《果実》を実らせて。
 

188 :名無し物書き@推敲中?:03/01/07 03:25

「うへー寒い寒い」
「お疲れさん……っと見張り交替の時間か?」
「ああ、交替してきた。あんなん高いわ寒いわでやってられねぇよ」
「まぁこっち来て火に当たれよ。飲むか?」
「あれか?いいねぇー―――よいしょっと……あーあったけー」
「待ってろ、おい誰かコップ投げてくれ!」
「ふぅ。酒でも飲まにゃあ……って気分だな」
「おいジュオーク!まだ酔うなよ?! で、どうだった見張り台からは?」
「言ったろ?最悪だよ。見えるのは赤い輪をつけた黒いお月様だけよ」
「こっからも見えるぜ?ちょっと葉っぱに隠れるけどな」
「ばか。こっちは真正面にあんだぜ。気持ち悪いったらねぇよ」
「確かにあんなんずっと見てたら狂いそうになってくるよな」
「ああ。このまま月蝕は終わらないんじゃないかって思えてくるね。やだやだ」
「そしたらこの兵役も終わらないのか……」
「―――終わると思うよ。そしたらどっかで飲もうな、爪の垢みたいな給料でも
給料は給料だしな。……って何泣きそうになってんだ?ヘイドレク?」
「あ?だーれが泣きそうだって?ちげーよ。ちょっと……家族が心配なんだよなぁ…」
「ああ、お前家族がいんの?」
「お前は?」
「俺は孤児だからなぁ」
「そうか」
「家族がどうしたんだ?」
「無事だったらいいなあと思ってさ。親父も兄貴も俺もいないから、母親一人なんだ」
「ふぅん」

189 :名無し物書き@推敲中?:03/01/07 03:37
「…―――俺、もらった金は使わないで土産でも買おうかと思ってるんだ」
「いいんじゃない?……でも、何が買える?」
「一応一回も使ってないからな、ましな額にはなるはずだ。母親に反物でも買うよ」
「嘘つけ。一回も?なんだその禁欲さは」
「うるせぇ。お前はもらった途端に使いすぎだ」
「えらいですぅーヘイドレク君は母親思いですぅーすごいですぅー」
「お前からかってんだろ?」
「からかってないですぅー。母親思いヘイドレク君に拍手ですぅー」
「止めろばか!俺がなんか恥ずかしい!拍手するな!」
「い、痛いですぅー。叩いたですぅー」
「もういいって!やめろよ。力抜けるだろ」
「あ、あれあれ止まらないですぅー??口癖になりそうですぅー」
「はぁ?」
「これハマッたですぅー」
「………あは…本当に止まらなくなってる!!ぎゃははっはははは!!!」
「笑うなですぅー」
「腹痛ぇー!!やめろってばあっはははは!!!!」」
「笑いすぎですぅー!俺は酒でも飲むです!」
「誰か止めてくれ!はっはははっはああははは!!!」
「いたっ!もうひどいですぅーヘイドレク君はぁ」
「ああははははは………え?」
「いたた、痛たたたっ。痛いですって」
「…おいおいー何やってんだよ?俺何もしてないけど?」
「痛ぇって。イタタ…刺さってる刺さってる!」
「ジュオーク?」


「お前の手が俺の右目に刺さってるんだよ」




190 :間違ひ…:03/01/07 03:43
うーん。とんでもない間違いに気づいた……。
せっかくできたのになぁ……鬱。
一番最後の科白の『右』は『左』と読んでください。
左目が潰れたんですので。
一応訂正しときます。


191 :名無し物書き@推敲中?:03/01/07 03:51
ageときます。

192 :そして:03/01/07 05:18
成美の秘められた蕾へと、加藤の舌が蛇のように伸びた。
ビクンと思わず腰を逸らす成美を、力任せに左手で押さえつけ
ながら蕾の奥の壺へと右手の中指と薬指をなめらかにねじ込んだ。
くいと指をぬるぬるとした壁に向かい突き上げると、成美の腰は
激しく前後に揺れ始めた。
その行為を激しく続けながらも、一方で加藤の舌は成美の首筋から
胸元にかけてゆっくりと唾液をその白い肌に塗りつけながら動きつづけた。

成美の口から抑えきれない悦びの声があふれ出ていた。

193 :量産型させ子ライオネス・オスカー ◆fzDhiHYsdU :03/01/07 11:15
言い知れぬ快感に身を任せていた成美は干し柿のような加藤の
乳首を刷毛で掃いた。みるみると加藤の乳首が勃起する。
加藤は童貞だった。生まれてこの方、女を抱いた事がなかった。
女とは蛇だと幼少の頃から思っていた。
刷毛で乳首を掃かれたとき加藤の胸中に成美への憎しみが燃え上がった。
「なぜお前は刷毛などで俺の乳首を」
「アジャ昆布をお袋買って」
「なんだと。もういっぺん言ってみろ」
「オナニィーッ、イッパァーツ!」

SEXちんこマジでイク五秒前忍者ハットリ参上!SEXちんこマジでイク五秒前忍者ハットリ参上!

194 :名無し物書き@推敲中?:03/01/08 00:39
エロさもハードファンタジーに必須なのだろうか。
まだ程遠い展開だな…

195 :未だ…:03/01/08 07:48
 ジュオークの目から血飛沫があがった。
 そのまま血を噴き上がらせながら、仰け反るように仰向けに倒れてゆく。
 ポツ、ポツ…、と冷たい血の飛沫が頬に飛んでくる。
 頬に飛んできた液体に手を触れる。
 そして再び自分の手のひらを見やった。
 しかし、そこにあったのは人間の手ではなかった。
 血に塗れた手が、デコボコの醜悪な表皮に覆われ根と化した自分の手が、あった。
「う、うあああぁぁぁ!!!」
 己の手から逃げるように、抜けた腰をひきずり後ずさる。
 血のついた根を振り払うようにして、顔を背けるとヘイドレクは追い立てられるように
駆け出した。
  助けてくれ誰か助けて助けて助けて助けて

 現実から目をそらす様に、両目を頑なに瞑ったまま、ヘイドレクは走った。
 目じりから涙が滲みだす。親友の血飛沫がまた胸の奥に蘇る。
 どこへ行けばいいのか分からない。
 この体が、自分が、どうなってしまうのか分からない。
 嫌だ、嫌だ助けて助けて誰か────!!!!

 そのとき、柔らかな衝撃が、ヘイドレクの足をとめた。
 誰かにぶつかったのだ。
 反射的に顔をあげると、上から静かに手が下りて、ヘイドレクの頬を拭いた。
「おやどうしたの、ヘイド。雷が怖いの?」 
「おかあさん…」
 口から自然にその言葉が零れて、ヘイドレクはぶつかったのが母だと気づいた。
 同時に、自分が母の腰あたりの背丈しかないことにも気づいたが、それも当然だった。

196 :未だ…:03/01/08 07:51
 彼は母のおなかに顔をうずめて、甘えるように顔をこすった。
「あらあらこんなに濡れて、走ってきたのね」
 いつの間にか、頬の血は雨粒となり、外は雨が降り注いでいた。
 母は大きな乳白色のローブをまとい、彼をローブの内側にいれてくれた。
 ヘイドレクは母に何かを言おうと思ったが、遠くで雷がなったので、思わず叫んで母に隠れた。
「怖がりねぇヘイドは」
「だっておかあさん、かみなりがおちてきちゃうよ」
「大丈夫よ。雷は一番大きな人のところへいくんですもの」
「じゃぁ、お父さんがあぶないよ」
「ふふ…大丈夫。お父さんは家の中よ。はやくおうちに帰りましょうね」
「うん」
 温かなローブの内側は母の匂いがした。
 それだけで、何もかももう大丈夫な気がした。あの雷さえも。
 満たされた気持ちでヘイドレクは母の歩調に合わせてとことこと歩き始める。

 ぼたり、と後ろで何かが落ちた。





197 :終わり…:03/01/08 07:52

 振り向くが、母のローブで何も見えない。
「おかあさんなにかおちたよ?」
 母は何も言わずに黙って歩き続ける。その沈黙に異様なものを察して、ヘイドレクは
雨の中、母のローブから上をのぞきこんだ。
 首から上がなかった。
 思わず後ろを振り返ると、母の首が転がっていた。優しそうに微笑んだままで。
「どうしたの、ヘイド」
 まるで何の変哲もないように、母が言った。背中を冷たい汗が流れてゆく。それとも雨か。
「どうしたの。そんなに怖い顔して」
 ああ、と彼の唇から嗚咽が零れ、その場に力なくへたり込んだ。
 母の口元から、天へと一直線に植物が細い茎をのばしはじめたのが見えたのだ。
 それは母の目じりや、鼻や皮膚を突き破って、伸びてゆく。
 彼は知らずに頭を振っていた。
 嫌だ。もう、嫌だ。嫌だ。
「おかあ、さん────」
 熱を持った涙がとめどなくその頬を流れてゆく。
 自分の腿の肉を爪の先でかき集めるように、力を入れながら、
彼は天に向かってただ吼えるように叫んだ。


198 :名無し物書き@推敲中?:03/01/09 09:16
頬に水の落ちてくる感触で目が覚めた。
目蓋を開けると、目の前に灰色に濁った雲一色となった空が見える。
遠くで、雷が轟いているのが耳に入ってきた。
夢、か…────。
独りごちて、その頬に落ちてきた雨粒に触れようとした。
が、触れられなかった。
自分の体が全然動かないのだ。抑えられている感触、そう感触すらなかった。
首から下がまるで消えてしまったように。
血の気が引いてゆく頭に、追い討ちをかけるように降り始めた雨が流れる。
(無い?
 体が無い?)
怪訝に思い、かろうじて首を曲げて下を見た。
そこにあったのは巨大な樹だった。樹と化した己の四肢があった。
壮観な眺めであった。
ヘイドレクは唇がわななき、必死に目を覚まそうと頭を振ったが、目は覚めたままだった。
とっさにもう一度天を仰ぎ見る。
ぞっとした。そうだ、目を覚ましたときに感じた微妙な違和感。

───視界の位置が高すぎるのだ。
 

199 :山崎渉:03/01/19 03:42
(^^)

200 :神神神 ジョン・スミス 勇者 ◆AIWOEVCG6U :03/01/24 00:50
つーかリレースレ荒らしはエロしかねーのかよおい!

201 :000:03/02/27 14:31
 ヘイドレクは咄嗟に何が起こったのが理解できなかった。
 もう一度、下を見る。
 奇怪に折れ曲がりながら、その枝枝を広げ、新緑の葉を茂らせ、
真っ赤な果実をぶら下げている、樹がある。
 その樹が自分の体となるはずの場所にある。
 どういうことなのか。
 今までもさんざん不可解なことが身に起きたことから考えても、答え
は一つ、『自分の体が樹になってしまった』としか考えられなかった。
 自分の樹の周りにあったはずの森は、奇妙なことに一掃され、
自分の周りには茶色い土ばかり露呈し、それを遠くから見守るように、
威厳をなくしたように黄色く変色しかけている葉を茂らせた木々が
円状になってただずんでいる。
 まるでコロセウムのように。
 言葉がなかった。
 しかし悲鳴をあげようとしてもヘイドレクにはもはや口さえもなかった。


 うちのめされているヘイドレクの遥か足元では
 今、二人の男が『緋の番人』による制裁をうけているところであった。

202 :名無し物書き@推敲中?:03/03/03 10:26
虫の息age

203 :名無し物書き@推敲中?:03/03/04 17:08
「緋の番人」は、後ろ手に縛られている二人の男を淫蕩な目付きで一瞥すると、
蛇のような赤い舌を出して己の薄い唇をちろちろと舐めて湿らせた。
反抗的な目付きの長髪の青年に息がかかるくらい顔を近付けて、いきなり
服の上から乳首を摘み上げる。
「アッ」
「うふふ、感じやすいのね。たっぷり御仕置きしてあげたくなっちゃうわ……」

204 :名無し物書き@推敲中?:03/04/11 17:14
「ねぇあたしのも触って……、もっと……」
 緋の番人の節くれ立った細い枝が、人間の指のようにしなやかに、
青年の長い髪を、その枝に絡ませる。
 緋の番人の顔は木の表皮で覆われ、もはやこの世のモノとは思えない。
 その奇怪な相貌に、震え上がりながらも青年は次第に脳天を貫くような
痺れに感覚が麻痺し始めた。
 柔らかな舌が自分の鎖骨をちろちろと舐め始める。
 青年の耳にくぐもった笑い声が響いた。

 ──この奇妙な生き物のものの声だろうか。

「ほら。触って欲しくてこんなになっちゃってるのよ…」
 それは最初、艶かしい女の声だった。
 だがやがて青年は、その声が自分の良く知るものだと気づき始めた。
『ねぇ、抱いてよジーノ』
「…シャーラ?!なんで、こんなところにいる?お前は……」
 言いかけたジーノの唇を、柔らかな少女の唇がふさいだ。
 甘い花の香りがする。
 青年よりも明るい亜麻色の髪の毛をふわふわと揺らしながら、
少女は豊かな乳房をジーノの胸に押し付けた。
 眩暈がするような気がして、ジーノは少女を恐々抱きしめた。
 胸にあたる柔らかなもの。今にも折れてしまいそうな腰に、手をまわす。
 頭に上った血が一気に下半身のうずきに変わる。
 この少女を粉々にしてしまいたいような凶暴な衝動が沸いた。
 今ならそれができる。いや、一刻も早く、そうしなければおかしくなりそうだ。
 ドクンドクンと波打つ下半身に、シャーラの手が触れた。



205 :名無し物書き@推敲中?:03/04/11 17:16


キィィィィィイィイイイアアァァァッァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!


 夢恍惚となったジーノの耳にいきなり、鼓膜をつんざくような悲鳴が響いた。
 同時に顔に何か液体のようなものがどろりとかかる。
 ジーノは青臭く、苦い味が口にひろがり、ようやくハッと我にかえった。
 今までこの手で抱いていたはずの少女の感触がなくなっている。
 血の気が引く思いで、無我夢中で顔の粘液をこそげ落としながら、ジーノは
気配の消えた少女が同じように怯えているのではないかと不安になった。
「シャーラ?!どこだ!シャーラ!!」
「なんですか!!」
 返ってきたのは、男の声だった。
「いや、あんだじゃなくて……」
 怒鳴り声で反してみて、なにかおかしなことに気づく。
 慌てて顔の粘液を取り除き、瞼をひらくと、そこにあったのは真っ二つに
切り裂かれた心臓のような、しかし人間と同じぐらいの背丈をした巨大な真っ赤な果実だった。
 自分の身体に付着しているのは、その果汁だと気づくとジーノは腰が抜けたのもかまわずザザザと後退した。
「………!!!」
 声にならず金魚のようにパクパクと口を動かすだけのジーノの上から、
比較的冷静な声が降り注いだ。
「色々な攻撃パターンがあるようですね。さすが太古から生きているパワーというか……」
 驚いて上を見上げると、眼鏡をかけ、自分と同じように赤い果汁まみれになった男がいた。
「あんた…何だ?」
「今はあなたと同じ彼らの標的です。まず逃げましょう」
 男は眼鏡の奥から、どこかを睨みつけるようにしていった。
 ジーノがその視線の先をたどると、この森にひとつだけ不自然なほどに膨れ上がった大木が
悪魔のような果実をその両手にみのらせて、森の空白の真ん中に佇んでいた。

206 :山崎渉:03/04/17 14:03
(^^)

207 :山崎渉:03/04/20 01:51
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)

208 :名無し物書き@推敲中?:03/05/07 02:43
「まさか」

209 :山崎渉:03/05/22 03:29
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―

210 :山崎渉:03/05/28 10:43
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉

211 :名無し物書き@推敲中?:03/06/29 18:10
>205
初めてここに来たんだけど……ここで終わりかよう〜。
すごく面白いじゃん!
余力があるならぜひ続きをきぼんぬ。

212 :名無し物書き@推敲中?:03/07/02 21:29
リレー小説だが、テーマが特殊だからな。
設定を壊したくないというのもある。参考資料か何か欲しいところ。

213 :名無し物書き@推敲中?:03/07/13 06:12
同じく続ききぼんぬ。

214 :山崎 渉:03/07/15 11:42

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄

215 :微妙リレー:03/07/29 14:15
「逃げるって…待ってくれよ。あいつら何なんだ?オレはただ、
この森を通ろうとしてただけなんだ。バケモノの森だなんて誰も言わなかったし!!」
 眼鏡をかけた男は、ちら、とジーノの方を見た後、再び、モーリエの大樹を仰ぎ見た。
「ええ…、そうですね。こんな森ではなかったんだ昨日までは……」
 男が呟いた時、赤い蔦のような果実の腕が、ジーノに向かって伸びてきた。
「あ、う、後ろあぶねぇ!!」
 ジーノが叫んだのと同時に、男は身を翻して飛び、振り向きざま、
長剣をしなやかにのばして、その蔦を切りつけた。
 あまり、その様が見事だったので、ジーノは声を忘れてたたずんでいた。
「す、すげぇ…」
「ボーっとしてはいけません!!立ち止まらずに走って!!」
「え?ああ……」
「この番人たちは我々をあの大樹のもとに引きつけようとしています。
大樹から離れなければ!!」
 ジーノは振り向いた。
 なるほど、いつの間にか攻撃をよけて走っているうちに、森の空白の中心地へ
追いやられている。初めにいたところが遠くに見えた。
「い、いつのまにこんなとこまで来ちまったんだ……」
 ひとりごちたジーノの上に、男の怒鳴り声がひびいた。
「はやく!!!」
 その背から、奇怪な声をあげて果実たちが這ってくるのが見えた。

216 :微妙リレー:03/07/29 14:16


「ひぃい!!」
 真っ赤な番犬のようだ。
 ジーノははじけるように駆け出した。無我夢中になって。
 うしろで叫ぶ男の声も聞こえなくなるほど。
 とにかくこの大樹から離れ、町へ出なければいけないと念じながら。
「なんなんだよぉおおお!!!助けてくれよオオ!!」
 恐怖で涙がにじんでくる。
 あの奇怪な赤い生き物はなんなんだ。なぜあんなものに狙われるのだ。
 ぐるぐると考えても何もわからなかった。
 すると、突然声がした。
「ふせてください!!」
 ふせる?
 ジーノは訳がわからなかったが、とっさに指示通りにその場に倒れこんだ。

 びゅん!!

 頭上で風をきる鋭い音と、ぶちん、と何かがちぎれる音がした。
 どすん、と脇に落ちた気がして、そうっと覗き込む。
 それはさっきの赤いバケモノの腕のような部分だった。
 ちぎれたところから赤い液を滴らせて、魚のようにビクンビクンとはねている。
 まるで本当に生きているかのようだと思った。
「ひ…ひぃい……」
 あまりの気味悪さに、声がかすれてでなくなった。

217 :微妙リレー:03/07/29 14:17
 ジーノの上から、さっきの男の声がする。
「だめですよ!闇雲に走っては向こうの思う壺だと言ったでしょう!!」
「え?あれ、なんであんたがココに」
 さっきの眼鏡の男である。
 一緒に走ったおぼえはない。一人で逃げたはずだった。
 不思議に思ってあたりを見回すと、無我夢中で走り回ったのにも関わらず、
さっきの場所から少ししか離れていなかったのである。
「どうなってんだ?!」
「方向感覚が麻痺していくのかもしれませんね。とにかく私と一緒にいたほうがいい」
「あんた何なんだ?!」
 やってくる蔦を綺麗にかわしながら、剣をふるう腕は軍人とみまがうほどだ。
 見た目からは貧弱な学者のようなのだが。
「自己紹介している暇はありませんが、とりあえず。私はルポワといいます。
あなたは?」
「じ、ジーノ」
「ではジーノ、あなたは丸腰だ。せめて武器は?」
「な。なんにもねえんだ。短剣があったがう、売っちまった」
「ではこれを!!」
 そういってる間にも蔦の攻撃を巧妙にかわしながら、ルポワは胸元から
短剣をとりだし、男になげた。
 刃渡りは大人の手の大きさほど。簡素な革のケースのついた短剣だった。
「小さっ!」
「文句いわないで下さい!!もともと植物採取用の剣なんですから。
それよりもついてきてください。こっちです」
 ローブを羽のようにひるがえしてルポワが駆け出す。
 その声の確かさに、なにかしら頼りになるのをおぼえてジーノはあとを追った。

218 :微妙リレー:03/07/29 15:44
 ルポワのあとを追おうとして走り出したその時だった。
 誰かに足を掴まれて、ジーノはいきおいのまま突っ伏した。
「ぐわあっ!!」
 尋常な締め付けではなかった。
 恐怖におののいて自らの足を見やると、足に捕まっている女が見えた。
 女?
 何もまとっていない裸の女が、ジーノの足首を掴んだまま伏せて
肩を震わせていた。陶器のような白い肌には、赤い樹液がまみれていて、
金色の髪の毛が流れるように地面に散らばっている。
 ジーノは驚いて探検を持ってない手で、女の柔らかな髪に触れようとした。
 ゆっくりと女が顔をあげた。
 背中の毛穴という毛穴から異様に冷たい汗が噴出す。

 女の顔には目がなかった。

 目のある部分は落ち窪んでおり、白磁の肌が茶けたしわしわの樹皮と化し
美しい金の髪は、膨らみ始め蔦と変化していった。
 もはや声もでないジーノの四肢に、緋の番人の手足が絡みつき始める。

219 :微妙リレー:03/07/29 15:52

 ジーノは体中が強張って、動けなかった。
 ただ、蜘蛛のように全身に蔦を巻かれながら、太い果実の中央に光る
金色の目のようなものと目が合った。
 それは番人の目に違いなかった。
 ジーノは遠くで、ルポワという男が叫びながら近づいてくる音を聞いた。
(無理だ、俺たちは捕まっちまったんだ……。)
(逃げられるわけねえよ、こんな悪魔みてえなバケモノから)
 やがてルポワの叫び声がした。
 あの男も捕まってしまったのか。
 そう思っていると、いきなり堅いものが首にまきつくのが分かった。
 木の匂いから、それが枝であるような気がした。
 しかし次の瞬間、首を締められたまま、体が急激に上に押し上げられるのが分かった。
体が地面を離れ上へ上へ向かっていく。
 ぼんやりと目をあけると、大樹が眼の前に見えた。
 大樹の幹の木目が下へ下へと下がっていくのが見える。
 何者かによって、自分は上へ向かっているのだと思った。
 ふととなりを見やると、首に枝を巻きつけたルポワが、自分と同じように
上昇してゆくのが見えた。彼の方は頭から血を流していた。自分を助けにきたときに
頭を殴られたのだろうか。すっかり気を失ってしまっているようにみえる。
 彼の手から、赤いバケモノの果汁にまみれた長剣がするりと落ちた。
 そして今は豆粒ほどにしか見えなくなってしまった番人たちのうごめく地上へ
と、キラキラ刃を反射させながら落下していった。

220 :名無し物書き@推敲中?:03/07/29 15:58
相当放置されてたので続けてみました。
ってかハードファンタジーってなんだかよく分りませんが。

221 :名無し物書き@推敲中?:03/07/31 02:04

 死にたい。
 早く楽になりたい。

 死は甘く優しく、ヘイドレクの苦しみを溶かしてくれるように思えた。
 その白い光のように強力なものが、自分を無にしてくれれば、現実も一緒にきえさって、
また家族のいたあの頃に戻れるような気がした。 
(誰か俺を殺してくれ)
 自分はもはや人間の体をもたなくなってしまった。
 自由に動かせる四肢ももたない。人間ですらなくなってしまったのだ。
 いま自分を人間にかえせるのは、ただ死のみだ。
 ジュオークをあんなふうにしてしまう前になぜ自ら命を絶たなかったのだろう。
なぜ人間を喰らう恐怖に苛まれながら命をたつ選択肢を選ばなかったのだろう。
 俺は知りたかったのだ。
 なぜ自分がこんなことになってしまったのか。
 母親をあんなふうにしたのは何だったのか。
 しかしこのザマはなんだ。
 俺は友人を瀕死の状態においこみ、自ら樹と化して森を破壊しているだけだ。
 ヘイドレク、おまえはもうバケモノなんだ。
 人食いのバケモノ。
 おまえが生きているだけで、罪なんじゃないのか。
(早く……楽に………)
(……誰か……)

222 :名無し物書き@推敲中?:03/07/31 02:47


 『汝を死なせはしない』

 幾重にも重なった膜を通したような低い声が、体全体に響き渡った。
内側から聞こえるようでもあり、それは外側からの声のようでもあった。近くから聞こえる
のか、遠くから叫ばれているのか、わからない。
 ヘイドレクは突如響いた声に意識を集中しようとした。
(……どこから聞こえてきやがるんだ?)
 もう一度、輪郭のつかめない不可思議な声が響く。

『破壊者よ。汝が初めに壊すべきは汝自身』
『それは死にあらず』
『然し死の苦しみを要する』

(破壊者……前にも同じことを言われたような気がするぜ)
 自嘲気味に彼は思った。笑いたかったが、口の感覚がなくなってしまっていた。
 声に返すように頭の中で念じる。

(すべての元凶はお前だな!!
あの時もそうだ、お前は俺のことを『破壊者』って言った)
(あれから何もかもおかしくなってやがる!!)
(これ以上何がしたい!?)
 念は手ごたえのない闇の中に溶けていくようだ。

223 :名無し物書き@推敲中?:03/07/31 02:59


 一呼吸おいて、先ほどよりももっと不鮮明な声が響いてきた。
 聞き取るのはより困難になっている。もはやずっと彼方から囁かれているような
虫の息ほどの声だ。

 『………は……らず。…が……うと…………を……』

 なにも聞き取れないことにイライラしながら、それでも用心深く、ヘイドレクは
耳をすませた。
 だんだん声は遠くなってしまう。
 しかし、最後の余力を振り絞ったように、声は一瞬鮮明さを取り戻した。

 『あ は…強 い………ぐ…消え…る………左手を……』

(ヒダリテ?)
 聞き取れた単語をもう一度反芻しながら、彼は左手の感触を思い出そうとした。
 その時、ビクン、と指先に電気が走ったような痺れを感じた。
 それはまったく唐突に彼を襲った感覚だった。
(左手がある!!?)
 彼は自分の左手だけが感触を取り戻していることに気付いた。
 他はすべて、口や足でさえ感覚を失い、それがあることさえ実感がないというのに。
 左手の親指を、まるで初めて手に入れたロボットか何かのように慎重に動かした。
ピクン、と反り返るのが分った。人差し指、中指、薬指、小指。五本全て同時に握り締め、
また開いて限界まで伸ばしきる。また、手の平を、前に曲げてみる。ひらひらと前後左右に
動かしたあと、肘から曲げる。
 どうやら自由になるのは左腕全体のようだ。

224 :名無し物書き@推敲中?:03/07/31 03:16

 たとえ一部分でも自由に動かせるのだ。
 自分が少し人間に戻った気がしたが、彼には不可解だった。
 なぜ、あの声の主は、この手を自由にしたのだろう?
 俺に何をさせるために?

 空を揺るがすような雷鳴が耳に飛び込んできたのはその時だった。
 夢から冷めたように、体をぬらす雨の温度が身に突き刺さった。
 体から伸びた枝という枝に、雨の雫が降り注ぎ、葉の表面を光らせる。
 雨の匂いがした。葉の青臭い匂いや、樹の香が色濃くたちこめている。
 そしてもう一度、空を粉々にしてしまうような雷の音が響いた。
 地上から遥か上にいるヘイドレクには、自分の真上でなっているのではないかと
思うほど迫力をもって響いた。いまにも体が散り散りになってしまうのではないか
と思うほどだった。
 次の瞬間はっとした。

  ───怖がりねぇヘイドは

 夢の中で聞いた声が蘇った。母の声だった。

225 :名無し物書き@推敲中?:03/07/31 03:32
 あれは夢だったか、それとも小さい頃の記憶なのか、分らない。
 続きを思い出そうと意識を集中させる。
 違う、他になにか言った。彼女は……

  ───大丈夫よ。雷は一番大きな人のところへいくんですもの

 そうだ。雷は一番高いところへいく。
 今、自分がいるところは一番上に違いないが、木の枝がまるでキノコの傘のように広がって
しまっていて、突出しているところはない。
 いま、この腕をのばせば、雷を呼ぶことが出来るだろう。
 あの飢えた獣のような雷はすぐにでもこの腕に噛み付くにちがいない。
 この体を一瞬のうちに切り裂いて、燃やし尽くすだろう。
 俺は、死ぬ。
 今度こそ、死ぬのだ。

 先ほどまで死は甘美な響きをもったが、今は具体的なカタチをもって喉元に突きつけられていた。
死ぬほどの痛みならこれまで幾度も味わった。痛みは一瞬だと思えばいい。
 しかし死をよく見ようとすればするほど、それは濁ってしまって何も見えなくなってしま
うのだった。ただ苦味と腹の奥にくすぶる不安を残して。

226 :名無し物書き@推敲中?:03/07/31 03:52
(迷うな……っ!)
 彼は自分自身を奮い立たせようとした。
 でなければ、死の中に飲み込まれ、左手の自由が再び失われてしまうような気がしたのだ。
 すると、もう一度先刻の言葉が、彼の身の内に蘇ってきた。

  破壊者よ。汝が初めに壊すべきは汝自身
  それは死にあらず

(はは、なかなか無茶なことを言いやがる……)
 いやな汗が全身からふきだす。
 冷たい雨のせいでそう思うのかもしれない。
(雷が落ちて死なない奴がいるか…?)
 死にあらず、とあの声は言ったが、到底死なないとは考えられなかった。
 しかし、考えてみれば、それならそれでいいかもしれない。
 彼は静かな覚悟が体の中で形を成しはじめるのを感じていた。
 ここで、このまま自分を失い、人間を喰うバケモノになるのと、得体の知れない声にまかせて、
自分を破壊するのと。どちらが自分にふさわしいのか、ようやく答えがでそうになっていた。

(ジュオークは、助かっただろうか?)

 ふと友の顔が頭をよぎった。
 導かれるようにして、ヘイドレクはすぐ頭上にある、灰をしきつめたような空に向かって、
その左腕を高く高く伸ばした。
 

227 :名無し物書き@推敲中?:03/07/31 03:56
コソーリと続き。
しかもよく分らん文章。落ちるか上がるまで続けてみよー。
文章練習もかねて。

228 :山崎 渉:03/08/02 01:41
(^^)

229 :名無し物書き@推敲中?:03/08/02 03:00
掻age

230 :山崎 渉:03/08/15 12:35
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン

231 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 14:35
>227
この板でスレが落ちるってことはまずないよ。
のんびりマターリやりなさいな。

この小説、HTMLにしてまとめてみようかな。
読みやすいように改行とか整形してさ。いいかな?

232 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 15:20
しかし、続くのは>>7なんだよな……すべては>>7へのストーリー……
ハードにすればするほど、滑稽に思えてしまう。

233 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:08
そうだ、京都ヘ行こう。

234 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:16
唐辛子を両手に抱えて為吉は思った。

235 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:18
しかし、為吉の愛人の子供はうんこを踏んでしまった。

236 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:19
ある意味危険だ。

237 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:21
脳内危険センサーが鳴り響く中、為吉は東名高速を駆ける風になった。

238 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:24
所変わってここは幻の大陸、ムーです。

239 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:25
現在ムーでは、「秋葉原」の「はばら」がブームだった。

240 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:27
全く意味が理解できないな。

241 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:29
それが口癖のモンドリアルガバメギブリンは「秋葉原」の「きは」を練習していた。

242 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:31
きはーーーーーーーーーー!!!!

243 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:32
「きは」は難しかった。

244 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:33
ルール、一行以上書くなよ。

245 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:34
モンドリアルガバメギブリンはそんなことを言う「はばら」の師匠を憎らしく思う。

246 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:35
最近セックスしてないな。

247 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:41
一行リレー小説「奇跡の価値」、第一章完。

248 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:44
第二章から第二百九十八章までは作者の都合により省略します。

249 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 22:47
なんだってぇぇぇ!!

250 :名無し物書き@推敲中?:03/08/29 23:36
第二百九十九章:
 ヘイドリックは風の歌を聴いていた。高みから見下ろす世界は優しかった。


251 :名無し物書き@推敲中?:03/08/30 08:43
クロイツワァールの丘。元は精霊たちの住処であったというここは、未だ人の手の入らぬ未開の地でもあった。

252 :名無し物書き@推敲中?:03/08/31 02:05
「ここがさいたまか……」

253 :名無し物書き@推敲中?:03/08/31 10:45
太陽が眩しい。

254 :名無し物書き@推敲中?:03/08/31 11:47
子供たちが、銘菓十万石饅頭を口にする。

255 :名無し物書き@推敲中?:03/08/31 13:58
うまい、美味すぎる!

256 :名無し物書き@推敲中?:03/09/01 16:36
しかし、さいたま銘菓十万石饅頭には、欠点があった。

257 :名無し物書き@推敲中? :03/09/01 21:15
なんと、食べてしまうとサイタマ〜と叫ぶ副作用があったのだ!

258 :名無し物書き@推敲中?:03/09/02 13:05
「なんと言うことだ、我々は十万石饅頭に最後の希望を託したというのに、なぜ今ごろになってそんな欠点が……」

259 :名無し物書き@推敲中?:03/09/02 20:00
あげ

260 :名無し物書き@推敲中?:03/09/02 20:35
その時、異変は起きた。
突然、天から万物の根源たる太陽が大地へと向かって落ち始めたのだ。
ゆっくりとした回転で太陽に顔が現れる。現れた顔はサイタマーと叫び始めた。

261 :名無し物書き@推敲中?:03/09/03 10:43
ヽ(゚∀゚)ノさいたま〜! さいたま県民全員が一斉に叫んだ。世界中にさいたま旋風が吹き荒れる。

262 :533:03/09/03 16:21
ハ!?

・・・全部夢だったのか

263 :名無し物書き@推敲中?:03/09/03 16:30
ユメオチ(・A・)イクナイ! さいたま県民全員がつっこんだ。 533は死んだ。

264 :名無し物書き@推敲中?:03/09/03 20:31
「お願い。力を貸して。
 このままでは、世界中がサイタマに沈んでしまう」
「……姫。私のような世捨て人にそんなことを頼んでどうするおつもりです。
 全ては、20年前のあのときに決まっていたことなんですよ」
「そんな。民の苦労も、笑いも、
 みんな、あのサイタマのためにあったと言うのですか!?」

265 :名無し物書き@推敲中?:03/09/05 17:20
しかし、頭の中から声が聞こえてきた。
「サイタマサイタマサイタマサイタマ・・・」
悪夢はまだ終わっていない・・・

266 :名無し物書き@推敲中?:03/09/05 19:36
このさいたまの呪いを解くためには、姫の純潔が必要です!

267 :名無し物書き@推敲中?:03/09/05 23:40
アル>超えられない壁>>デル姉>アレックス>>ソフィア
>>>>超えられない壁>>>ディーオ>クラウス>他シルヴァーナの人たち>>
>>>>絶望的に超えられない壁>>>>モラン

268 :名無し物書き@推敲中?:03/09/05 23:43
姫が迷っていると、異世界から何かが着弾し、サイタマを打ち砕いた。
空から「スマソ、誤爆」という声が響いた。

269 :名無し物書き@推敲中?:03/09/06 16:36
時すでに遅し、姫はサイタマと化した。
「サ・・サイタ・・・・マ・サイ・・・・・タマ」
「姫ェーーー!」
このまま姫を殺すしかないのか?

270 ::03/09/06 17:51
 目の前に一人の少女がいる。

 少女は背を向けている。
 背中に垂らされている、つややかな漆黒の髪の毛は、太陽光を含んだ風にさらさらとなびく。
 華奢な手足には大小の鈴がついた装飾具がはめられている。大きな白い一枚の布を巻き、上から
幾重にも銀紐で押さえつけているだけの衣装から見ても、この少女は今夜、何かの儀式を行うの
だろうということがわかった。
 肩がかすかに動いて、少女がこちらを振り向いた。
 長いまつげに縁取られた円らな瞳を、とたんにうれしそうに細める。
 その笑顔をみた瞬間、カラダの中を暖かな血がめぐっていくのを感じた。耳奥に鼓動が響くのだ。
少女が駆け寄り、少年は少女を抱きしめる。
「綺麗だ、タウニ」
 腕の中で少女の、花を揺らすような笑い声がする。
 さわさわ、と頭上で木の葉も笑い声のような音をたてた。
「ね、ラライノ。《タ・カーファ》にきてくれる?」
 少年は無論だ、とでもいうようににっこり微笑んでうなずいた。
 二人は互いに陽光のような疼きを、胸のうちに感じた。それはこそばゆかった。
 やさしく視線がひとつに繋がると引き寄せられるように唇を重ねた。
 甘い花の匂いがする、と少年は思った。
 ヒメーダの花の匂いだ。

 



  暗転。

271 ::03/09/06 17:52
 さっきよりも成長し、まだ幼さを匂わすものの全体的に大人びた少女が、無邪気に
首をかしげてこちらを見ている。
 夕方になりかけた空が、丘の向こうの平原をすべてオレンジ色に染め上げ、薄紫色の雲が空の
上にところどころボンヤリ浮かぶ。
 顔半分に赤い光を受けながら、少女は、もう背丈が少女よりも大きくなった少年の手をまだ握っている。
「ほんと?」
 少女の唇からもう一度、その言葉がこぼれる。
 少年は少女の顔をみない。
 むずがゆいような気持ちで唇をかみしめたまま。
 少女の瞳が、斜陽をうけてきらきらときらめいた。涙が浮かんでいたのかもしれなかった。
 次の瞬間、喜びで顔をくしゃくしゃにして少年に抱きつく。
「約束してね!ほんとうに……あたしをお兄さんのお嫁さんにしてね」
 警鐘のように、頭上で木の葉がざわざわと騒いでいた。
 しかし双子の耳には何も入らない。 
 互いの体温のほかには。




  暗転。


272 ::03/09/06 17:53


 内臓を切り裂くような叫び声。
 双子の夢物語の最終章が幕をあける。それは夜。
 大勢の足音が二人の間の絆を踏みにじる。
 暗闇の中。月もない夜だった。星もなかった。
 誰も彼も惨劇に目をつぶりたかったのだろうか。
 少年は両手を何かで潰され、喉も目も潰され丘の見えない場所に引きずられていく。
 血のにおいが満ちる。
 潰された足の痛みで少女は気を失う。



  暗転。  

273 ::03/09/06 17:54

 来ない、来ない、来ない。
 あの丘の上の樹の幹に少女はくくりつけられたまま朽ちようとしていた。
 兄ラライノは襲撃の夜から姿がない。
 彼女は何も知らずに兄を待ち続けている。
 来ない来ない来ない。
「あれはおまえなぞ愛しておらぬ」
 いつのまにか傍に立っていた老木のような村の長老を、ぼさぼさになった黒髪の間から
見上げた。ヒューヒューと飢えた喉からは息しか漏れない。
「お前を捨てたのだ」
 嘘。嘘。嘘。
 約束した。彼はあたしを愛している。それがすべて。
「村を清めた娘が、もっとも重い罪で村を汚すとは」
 兄さん、来ない、来ない、来ない。



  暗転。

274 ::03/09/06 17:55

「まだ生きているのか」
「驚いたな。見ろ、樹と同化しかかってるんだ」
「《タ・カーファ》での踊りは見事だったもんだが、こうなってみるともはや魔女だな」
「魔女というか妖怪だよ」
「あはははは」
「早くくたばれ。おまえのせいで村は樹神の恵みを失うところだったのだぞ」
「そうだ死ね」
「死んで詫びろ」




  再び暗転。

275 ::03/09/06 17:59
 潰れた少女の足は樹の表面に吸収され、そこから樹の養分が流れ込み、少女はまだかろうじて生きていた。
 顔は黒髪が覆ってほとんど見えなかったが、腕の皮膚が老婆のようにしわしわになり、骨と皮だけになっている。
 悲しみは何千回も何万回も少女の腸を焦がし、やがて絶望と全てに対する憎悪になった。
 強い憎しみのエネルギーを樹が吸い取り、徐々に少女を体内に取り込みつつあった。
 少女は深い深い悲しみの泥沼に浸かったまま、兄を待った。
 しかし、来なかった。
 来ないはずだ。兄はとうに村を当に離れたのヒメーダの樹の下で息絶えていたのだから。
 しかし少女はかたくなに兄を待った。
 長老の言葉が彼女の心にしみ広がり、激しい怒りと混ざって、彼女の臓腑をずたずたにした。

 ──いつか。

 少女は最後の息をゆっくりと深く吸い込む。

 ──いつか私は兄を見つけ出して、この世界といっしょに殺してやるわ。
   ラライノの愛が私のすべて。
   それがないなら、最初から何も無いのと一緒───

 ゆっくりと息を吐きながら、彼女は世界に呪いをかける。
 強い呪いは強い力を彼女にあたえた。
 彼女の力を吸った樹は、誰もが目をみはるほどに成長し、成長し、
 やがて天に届いてしまった。 

276 :名無し物書き@推敲中?:03/09/06 18:15
その時、激しい誤爆の嵐が、姫に直撃した。

277 :名無し物書き@推敲中?:03/09/06 22:49
世界樹の産声。

278 :馬鹿二号 ◆ZTH7lDqG12 :03/09/07 00:29
そして男は運命の戦いをいどむのであった
>>6

279 :も し か し て:03/09/07 00:30
糸冬 了 で す か?

280 :本編:03/09/08 01:26
 身体を貫かんばかりの爆音が轟いた。
 ぐらぐらと空気が悲鳴をあげて振動し、同時に閃光が辺りに満ちあふれ、
ヘイドレクは突如全身を押しつぶしそうな圧力に、絶叫した。
 四肢をのこぎりで切り刻まれるような衝撃と、身体を雑巾のように絞られているような
圧迫感が同時に遅い、時間の流れてゆくのが激流のように全身に重い水圧を伴って押し寄せる。
 かと思うと、次の瞬間、顔の熱湯を浴びせられたかのようなじりじりと焦げるような鋭い痛
みが、顔の左半分に走った。
 そして突然、茫洋たる宇宙に投げ出されたかのように、あらゆる束縛、無論重力からでさえ
も解放された。ヘイドレクは何が起こっているのか分からず呆然とした。
 辺りは純白といってもいいように何もなく白光で満ちていた。
 完全なる無の中に、ヘイドレクは浮いているのだった。
 一瞬、長い夢を見たようにも思った。
 黒い髪の美しい少女の微笑む顔が脳裏をかすめ、再び何も分からなくなる。


281 :本編:03/09/08 12:23

 シャンシャラン シャンシャンシャン

 何処かで不規則に鈴の音が響く。誰かが動く音に呼応しているかのようだ。
 遠いところから聞こえてくるのか、それともただの幻聴だろうか。
 やがてそれも聞こえなくなる。
(死んだか……?)
 少なくとも生きている感じがしなかった。
 これは肉体の感じることができる世界とは程遠いところにいるようだ。
 では此処は何処だ?
 死後人々がゆくという、世界樹の頂上にある《神々の庭》だろうか。
 ああ、でも此処には神すらいない。何もない。
 此処は……?
 
 『時間の歪みの中にいるのだ。我々は《時の気泡》と呼ぶ』
 
 突然、何処からとも無く聞き覚えのある声が、ヘイドレクを包み込んだ。
 紛れも無くそれはヘイドレクが雷を受ける間際、彼の左手を解放した声に違いない。
 しかし声の実態は何処にも無かった。


282 :本編:03/09/08 16:19
「あんたか……俺を助けてくれたあん時の声……」
 身体に重くのしかかる様だった疲労や圧迫感は今は無く、ヘイドレクは虚空に向かって、言葉一つ一つを
確認するように話し掛けた。
 声の主が何処にいるのか分からなかった。遥か頭上から発せられているようで、背後から話し掛けられて
いるような感触もあった。
 声の主は何も答えなかった。ヘイドレクが言い迷っている先の言葉を促すかのように。
 ヘイドレクは続けた。
「俺は…同じ声を聞いたよ。夢ん中でだ。あんたは……確かラライノと呼ばれてたな…」
 しばらく沈黙したあと、声の主は深呼吸をするかのように静かにゆっくりと答えた。
『その通りだ。我が名はラライノ』
「やはりな。ただ妙なのは……あんたのその声は少し…大人びているな」
 返事は無かった。ヘイドレクは先を続ける。
「夢だからよく分からないが、あんたは若い時に、死んだみたいだった。それが今のあんたの声はまるで
すっかり大人になってやがる。まるで死んだあと、成長したみてえだ。そんなわけはないのに……」
 沈黙が空間を満たす。
 どちらも言葉を発しなかった。そのまま互いに黙りあっていた。

283 :名無し物書き@推敲中?:03/09/08 22:20
『……それの記憶がお前の中に流れ込んだのだな』
 長い沈黙のあと、再び低い声が満ちた。
 それ? 何のことだろう、とヘイドレクはキョロキョロと辺りを見た。
『……お前の胸にある種だ。雷で焼けてしまったが』
 種、と言われてハッとした。ふっと胸を見るとあの首飾りがあった。
 今や黒曜石のような輝きは消えうせ、焦げ付き鈍い光を放っているその石をヘイドレクはマジマジと凝視する。
 これが俺の変わりにあの凄まじい落雷を受けたのだろうか。
『それがお前を今まで死に追いやろうとしていた世界樹の枷だ。お前の母親の命を吸ってな』

  ドクン……───

 全身が冷水を浴びせ掛けられたかのように凍りついた。
 ああ、母さん…! ヘイドレクは喉奥から叫びにも似た悲しみが突き上げてくるのを感じた。
 《世界樹》その呪わしい言葉をまた再び彼は聞いた。それは確かに彼の運命の上に突き立てられたナイフに違いなかった。


284 :名無し物書き@推敲中?:03/09/08 22:27
「俺はその世界樹をぶっ壊してやる!」
 彼は知らぬうちに叫んでいた。
 いつのまにか握り締めていた拳に、見る間に血管が浮き出る。ふるふると四肢がやり場のなかった憤りに震え始める。
 声の主は何も答えない。
 ヘイドレクは口角に泡を飛ばす勢いで、どことも分からぬ声の主の胸倉をつかまんばかりに腕をふりあげて叫んだ。
「教えろ!その世界樹は何のために俺を!俺の母さんをあんな目に……!!!」

『お前が私の《呼の種》を体内に持っているからだ。ヘイドレク』

 

285 :名無し物書き@推敲中?:03/09/09 00:40
 ディ・フェイ
 《呼の種》 口の中でその名を反芻するが、聞き覚えは無かった。
「それが…その《呼の種》が何だって……?」
 頭が混乱して、ヘイドレクは前髪をがしっと掻きつかむ。ふと顔半分がピキ、と痛んだように思った。
『お前は私と繋がっているのだよ。私の魂を繋いでいるのだ』
「だから、世界樹は、俺を殺そうと…するってのか?────何のために?」
『私を抹消する為だ』
 消す?
 脳裏をまた一つのビジョンがよぎる。樹にくくりつけられた少女の断末魔の呪いの言葉。 
 (ああ、あの黒髪の美しい少女か)
「………そうか」
 全ての経緯が漸く此処で目に見える糸となり始めたのだ。



286 :名無し物書き@推敲中?:03/09/09 00:58

 しかし、だからといって全てが許されるはずが無かった。
 彼の母親を、そして彼自身と周りを巻き込んだ事態が無くなったわけではないからだ。蘇った悪夢に再び拳を握り締めると、
ギリギリと歯軋りする勢いでヘイドレクは怒りを押し殺した声で言った。
「だけどな、お前には悪いがな、俺はその世界樹をぶっ壊さなくちゃ気が収まらねぇよ……!」
『……うむ。それは、当然の権利だろう』
「…………」
『私の能力の枷は外された。これからお前の行く先に大いに貢献するだろう』
「…おい、待てよ。俺はあんたの妹を殺しにいくっつってんだぜ?母親をあんなめにあわせた上に俺も死ぬ目に合わされたからな。
その樹をぶっ倒すだけじゃ済まねえかもな。油をかけて丸焼きにしても足らねぇと思うぜ」
 沈黙だけが返ってきた。
 声の主は反論もしないで、ただまるでヘイドレクを傍観しているかのように黙っている。



287 :名無し物書き@推敲中?:03/09/09 01:04

『いいのだ。多分、私だけがあの樹を殺すことが出来るのだから』
 声の調子は穏やかだった。そして何処か悲しかった。
『彼女は私を殺し、この世界を破壊しつくすつもりでいた。私は殺されるのは構わないのだ。一向に……。
しかし世界が破壊されるというなら私は全力で彼女を止めなければならない。そして、それが出来るのが私だけなのだ』
「随分、自信があるな……」
 もし顔が見えるのなら、彼は微笑んでいるに違いない。
 とても悲しそうに、全ての覚悟を決めた微笑を浮かべているだろう。
 声ばかりをやりとりするうちに、ヘイドレクはまるで目の前に相手が立っているかのような錯覚に落ちていた。
『……《緑光の民》と呼ばれし者の定命かもしれぬ』
 ヘイドレクに言ったというよりもそれは独白に近かった。どこか自嘲を含んだ物言いだった。
(セドタ・カーファ。緑光の民、か)


288 :名無し物書き@推敲中?:03/09/09 01:13
 その時、ヘイドレクのはるか真上から、地鳴りのような唸り声が空間を揺らし始めた。
 腹にずしんと沈み込むような恐ろしい響きがあたりを満たす。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオッゴゴゴゴッゴッゴゴオゴッゴゴ………

『《時の気泡》がはじけ始めたようだ。もっと話すことが出来たと思ったのだがな……』
 何も無かったはずの無の空間に、風が起こり始めた。
 ゆっくりと風が旋回をはじめたのが全身で感じられる。
 同時に痛みや疲労といった、今までかけ離れていた感覚がゆっくりと身体に戻り始める。
 頭が朦朧としはじめた。声がぼんやりと輪郭を失ってゆく。
 遠ざかってゆく声が、しきりにヘイドレクに呼びかけているのが聞こえる。

『《呼の種》はお前の助けとなる。ヘイドレク。世界を、世界樹を…赦し…』

 そして巻き起こる風の中に巻き込まれ、轟音のなかに何もかも掻き消えてしまった。
 


289 :名無し物書き@推敲中?:03/09/09 01:17
話を広げるのはいいが、>5-6>23に向かって収拾つけろよ。

290 :名無し物書き@推敲中?:03/09/09 01:26
>>289
はい。全てそこに向かうために書いてます。
うまく>>7に繋げられたら、俺の本懐は遂げられますんで。

291 :名無し物書き@推敲中?:03/09/10 11:00
もう少し文章力が欲しい。

292 :名無し物書き@推敲中?:03/09/11 00:58
 蜂蜜のような甘さと微かな酸っぱさが交じり合った不思議な香りが鼻孔をつき、次の刹那、人肌よりも
少し熱いくらいの温度に塗れた柔らかな布が頬にあてられた。
 まだ夢と現実の狭間を行き来していたヘイドレクの意識は、その刺激に一瞬にして現実に引き戻された。
 彼はゆっくりと双眸の瞼を開いた、重くのしかかる疲労を時間をかけて克服しながら。ただその動作で
さえ、彼に残っているだけの体力では、岩を持ち上げるにも等しかったのだ。 
 彼の視界に飛び込んできたのは、一滴の雨水だった。
 唐突のことに、彼は驚き、目を瞑り低くうめいた。
 するとその気配に気づいたのか、彼のそばにいた人物が慌てて彼の顔に手を当てたのが分かった。
「…あら、気がついたのね」
 どこかしっとりとした雰囲気を持つ声だった。柔和な響きの中にもしっかりとした芯のようなものがあっ
て、聞くものをどこか安堵させる声質を持っている。彼の瞼の上におかれた手は、ひんやりと冷たく、
頬に当てられた粘着性のある液体を多量に含んだ湿布の熱と、ひどく対照的だった。
 もう一度、重たい両瞼を持ち上げると、同時に彼の両目を覆う指が静かに退く。
 蓋を除かれ、今度視界に飛び込んできたのは、はるか頭上で小雨にうすくけぶる新緑の葉、その隙間に
埋もれるように見え隠れする枝々、それと同時に耳には河の音にも似た、ささやくような雨の音だった。


293 :名無し物書き@推敲中?:03/09/11 00:59
 視界の端で、黒いものが蠢いた。
 それに身構えようとして、咄嗟に首だけを起こすと、影の姿が鮮明に目に飛び込んできた。
 黒く厚い布地のフードを肩のところに落としているために、相手の顔は、雨のために薄暗い森の中でも
はっきりと分かった。頭部を覆う白髪は豊かで、後頭部で一つに球状にまとめられている。ヘイドレクを
正視する穏やかな色を湛えた碧眼や、柔らかな笑みを口の端に宿す唇や、顔の真ん中に通った鼻筋のまわ
り、そして首筋を細かく皺が走っていたが、この老婦人の知性あふれる美しさを少しも貶めはしなかった。
 彼女の全身は雨のためにすっかり濡れていた。こめかみのところから乱れた髪が一房落ちてきていて、
雨の雫を滴らせる。彼女は黒いマントの下から、同じように皺の刻まれたか細い腕を取り出すと、
ヘイドレクの頬にあたる湿布の位置を直してやった。
「動かないで。貴方が一番ひどい傷だわ」
 あげていた顔を下ろすと、ヘイドレクの耳ににじむように疲労が波になって押し寄せた。
 老婦の声は遠くで、ぼんやりと霞むように聞こえる。
 しかし、彼女の声の中にヘイドレクは言いようのない安堵感を覚えていた。遠い昔の母の声と、それは
どこか重なるところがあったからかもしれなかった。
 

294 :名無し物書き@推敲中?:03/09/11 01:01

「《血草》とあのガルグ(鷹の亜種。温和な性格と長距離に耐えうる肉体のため伝達用にしばしば用いられる)
がなかったら、今ごろ三人死んでいたでしょうね」
 目覚めたばかりのヘイドレクが意識を失わないように考慮してか、婦人はヘイドレクの全身に同じ湿布を当て
ながら穏やかな調子で話し続けた。今度は腕にあの熱い湿布をあてられたのがわかる。
 ここへ来てヘイドレクは全身を包帯のようなもので包まれていることが分かったが、じりじりと染みとおる
痛みと疲労に、意識もはっきりしなかった。
「森の様子がおかしいのに気づいたのがちょうど森へ入ったころだったかしら。急いで家に戻ると、家には一人、
何があったかは知らないけれど虫の息の怪我人がいたの。彼のいた場所にルポワ君が出て行ったしまったと、
すっかり血の気をなくした主人が私にいってねえ、あの慌てようったら」
 思い出し笑いにくすくすと息を漏らしつつ、婦人は湿布の上から包帯を巻き、ヘイドレクの様子をうかがう。
 彼が息をするたびに、かすかに唇がわななくのを見て、息をつくと、彼女は続けた。


295 :名無し物書き@推敲中?:03/09/11 01:21

「私は昔から草や木が大好きだったから、家にもたくさんの種類の草木があるのだけれど、その中で《血草》という
植物があって、これは風に乗って流れてきた血の匂いに反応して葉を持ち上げる性質があるの。それが葉を
いっせいに上にのばしていたから、私、きっと誰かが怪我しているんじゃないかって思ったのよ。急いで家中に
ある薬草を掻き集めて、手ごろな鞄につめたわ。でもすっかり焦っていたのね。肝心の居場所がわからない。その時
窓をすごい勢いでたたく者があったのよ」

 その時、猛烈な勢いで降り注ぐ雨音に混じって激しく窓を叩いたのは、人ではなかった。
 婦人が窓をあけると、雨に茶と黒の混じった特徴的な幾何学模様の羽をびしょ濡れにしながら、毅然とした姿勢を崩さずに
立つ一羽のガルグがそこにいたのだ。
 ガルグは恭しく猛禽類に見られる鉤状の鋭いくちばしを下げた。礼をするかのように。
 婦人はすぐにその白い羽毛で覆われた足にくくりつけられている紙を見つけた。
 それを解く間、ガルグは身動き一つせずに、じっと部屋の奥を見据えたままだった。素晴らしい躾けを受けたことが、
その小さな全身からあふれる誇りにも明らかだった。
 雨には濡れていたものの、手紙は読めない状態ではなかった。
 そこに書いてあった宛名は『カイザヘーク』
 それこそあのルポワの本名である。

296 :名無し物書き@推敲中?:03/09/11 01:34
 婦人はそこに書いてある内容を読むと、鷹のほうへ視線をなげかけた。
 鷹の丸いながらも鋭利な輝きを秘めた瞳は、婦人の意思を汲み取ったかのごとくに、二三度瞬いた。
「あなたはルポワの居場所が分かるのね」
 頷いたかのように見えた次の瞬間、鷹はもう窓辺を蹴り離れ、翼を大きく羽ばたかせはじめていた。
 慌てて外套がわりの厚手のマントを羽織ると、彼女は慌てて鷹のあとを追い、やがて森の中に倒れている血まみれの
若者三人と、まるで神の断末魔の悲鳴のように真っ二つに裂けた、巨木の残骸を目の当たりにしたのだった。

「────ほんとうに、心臓が止まりそうになったわ。幸い、血はルポワ君の頭から流れていた者と、もう一人の子が
鼻血を出したものだけで、あとは、真っ赤な樹液がほとんど。本当に良かった。私をみて追いかけてきてくれた
主人が二人を家まで運んだけれど、本当にひどい傷だったのは貴方よ。貴方はもう、動かしちゃいけないくらい
だったのよ………」
 うっすらと瞼を開いたヘイドレクの動作に、老婦人の言葉が途切れる。
 睫にふさがれて彼の瞳はよく見えなかったが、しきりに彼の青ざめた唇がわななき、かれが何かを言いたそうにして
いるのを、老婦人は汲み取った。
 耳をすまして彼の口元に耳を寄せると、この青年の唇の奥から、うめきともつかない低い声が零れてきた。



297 :名無し物書き@推敲中?:03/09/11 01:49
ちょい訂正
>>293
6行目「貶める」ではなく「見劣りさせる」のほうが正しいかもしれないので直します。
推敲不足で申し訳ありません。

298 :名無し物書き@推敲中?:03/09/12 20:13
 下生えが何者かによって踏まれ、力ない声をあげた。

 横たわるヘイドレクの耳にはそれは確かに左方、そして此処からそう遠くない場所から発せられた音として飛び込んできた。
 はっとして、顔を向けると同時に左頬に当てられていた湿布がずり落ちる。
「あらあらいけませんよ。まだ動いては……」
 湿布のズレを直そうとした老婦人の耳にも、はっきりと、それは聞こえたようであった。
 雨に混じって風が時折すすり泣くような音をたてる。その中にひっそりと紛れ込むようにして、誰かの足音が
こちらに近づいてくるのだった。
 それも奇妙なことに、ひどく緩慢に、歩くのが覚束ないとでもいうような不規則な足音なのだ。
 激しさを取り戻し始めた雨に、悪化する視界に姿は見えない。
 老婦人も動作のかたまったままの手を、慎重に懐に引っ込め、息を殺して、ぼやけた森の奥を見つめた。
 視界の奥には二股に割れた巨木があるはずである。
 足音と同時におこる微かな振動が、全身に伝わってくる。
 ドクン、ドクン、
 心臓が高く響きはじめる。まるで足音に呼応するかのように。同時に左手がビリビリと痛み始めた。
 身体は大地に貼り付けられたかのように動かない。
 白い霧の奥からやってくる影の奇妙な足音だけがその場に伝わってくるだけだった。


299 :名無し物書き@推敲中?:03/09/14 01:17
 老婦人の息を呑む気配がした。
 やがて容を明瞭にしはじめた影は、その奇妙さも露呈しはじめた。
 色も容も、人間のものではないと瞬時に理解できるほどだったのだ。
 それは目にも毒々しいほど紅かった。大きさはちょうど成人した人間ほどだったが形がヒトとは明らかに異なる。
 頭部にあたるところから下までゆるい曲線を描いて膨らみ、腰のあたりから左右に突出した部分が現れる。
 そしてさらに再び二股に分かれ、まるで人間のいうところの『足』が形成されているのだ。
 その部分でゆっくりと歩いてくる。
 腰のあたりにぶら下がる『手』は先端にいくにつれて細くなっていて、地面すれすれに垂れ下がっており、それが
動くたびに前後に揺れている。
 頭部にあたるところには小さく穴のような目がつき、奥で金色の炎をくゆらせている。
「なんてこと……」
 老婦人が驚きと悲嘆の入り混じったような声で呟いたのが聞こえた。
「緋の番人…」
 無意識に呟いたのだろう。思わず零れたというような消え入るような声だった。

300 :名無し物書き@推敲中?:03/09/14 01:20
 ヘイドレクのように横たわる者からすれば、見上げたその景色は異様だった。
 傍らに佇む奇怪な、《果実》という形容すら間違っている《化け物》
 本来食すはずのそれは確かに動き、ヘイドレクの真横に確かに立ち、彼を見下ろしているのだ。
 金色の目でヘイドレクを見つめたまま、《緋の番人》は微動だにしなかった。
(こいつは俺を殺しにきたのだろうか)
 頭の隅でふとそう思った。しかし攻撃をかわすにはあまりに疲労しきっていた。
 この状態で《緋の番人》が攻撃をしてくれば確実に死んでしまうだろう。
 そう考えていたのはヘイドレクばかりでない、傍らの老婦人も同じ懸念を抱いていた。
「おまえ……俺を殺す…か?」
 見下ろす《緋の番人》に絞りだすようにそう言ったとき、自然口の端が引きつった。
 己の身体から生まれたモノによって殺されるか、そういう自嘲がヘイドレクを笑わせたのだ。
「刺激しては駄目…!これは《緋の番人》といって凶暴な……」
「そんなこと知らない……こいつは、俺から生まれたんだ」
 老婦人の言葉をさえぎるように、ヘイドレクは言った。その言葉は老婦人をどれほど驚かせたのだろうか。
彼女は目をわずかに見開いた。

301 :名無し物書き@推敲中?:03/09/14 01:23


「畜生……」
 まだ此処で死ぬわけにはいかない、しかしもう術がない。
 ヘイドレクは果実を睨み続けながら、どうにもならない己の非力さ無力さに歯噛みする思いだった。

「アッ……!」

 小さく老婦人が虫の鳴くような小さな悲鳴をあげた。
 《緋の番人の》右手が動いた。横たわるヘイドレクの上にかざされたのである。
「私の目の前でそう簡単に殺させないわ!」
 婦人がマントの奥から手を取り出して、《緋の番人》のかざされた『手』にたたきつけた。
 しかしそれには小さなナイフが握られていた。
 刺されたにもかかわらず、《果実》は騒ぐことも攻撃することもなかった。
 その手からポロポロと何かが無数に零れ落ちてきた。
 それは萌黄色をした小さな柔らかな葉であった。


302 :名無し物書き@推敲中?:03/09/14 17:32
なんかいきなり変な用語とか増えだしたのは気のせいか。
途端に面白くなくなってきたぞ。

303 :名無し物書き@推敲中?:03/09/21 22:14
「これは……」
 老婦人がつぶやく。
「モーリエ……────」
 ヘイドレクには老婦人の言葉が何を意味するのか分からない。
 ただ、自分の上にぽたぽたと温かな赤い怪物の《血》と混じって、小さな緑の芽が落ちてくる感触がある。
 鼻腔を果実特有の甘いにおいがくすぐる。その強い香りにまじって、草のにおいがしはじめた。
 爽やかな匂いが意識にかかる靄を飲み込んでいく。
 同時に、体中の血液に混ざって全身をめぐり、四肢にしつこく絡みつく疲労や痛みを軽くしていく。
 重く地面に張り付くような身体が、徐々に軽くなってゆくのがわかる。
 眼にも毒々しい赤色をした巨大な《緋の番人》は、それ以上何もせず、動くこともなかった。


304 :名無し物書き@推敲中?:03/09/21 22:17
>>302
すいません…。
造語は読みにくいだけですね。控えます。


305 :名無し物書き@推敲中?:03/09/22 00:05
違う、読みにくいんじゃない。
仮想の存在に頼りすぎて現実感が圧倒的に薄れたと言いたい。
これまでの流れの空気を読んでないんじゃないかと言いたい。

306 :名無し物書き@推敲中?:03/09/22 03:14
>>305
既存のファンタジーのパターンになってきたと言う事でしょうか。
雰囲気壊したくはなかったのですが……。
すみません。あと2レスだけUPしたらいろいろ学んできます。

307 :名無し物書き@推敲中?:03/09/22 03:19

 全身に力が入ることを確認し、続いて慎重に上体を起こしてみる。
 今や疲労は嘘のようになくなっている。
 ぺりペリ、とかすかな音をたてて、頬に張られていた湿布が剥がれ落ちた。
 黄色い樹液のようなものにひたされた其れには、痛々しくかすかに血がにじんでいた。
 眼にするや、ヘイドレクは反射的にそれがはがれおちた左の頬に手を当てた。
 湿布のせいで濡れていたが、それでも皮膚の凹凸から頬に亀裂が入っているのが分かった。
 思わず皮膚の内部に触れてしまったせいで、鋭い痛みがはしり慌てて手をひっこめる。
 ヘイドレクは神妙な面持ちになると、再びおそるおそる頬に指の腹を這わせる。
 傷は左目のところまではっきりとついていた。そして瞼の上から額の半ばまでぱっくりと割れているらしかった。
 意識が明瞭になると同時に彼はそこでようやく視界がおかしかったことに気づいた。
 左目が開いてなかったのだ。
「おい…眼……俺の左目はどうなってる…」
 なかば放心した状態でひとりごちるように彼は言った。
 

308 :名無し物書き@推敲中?:03/09/22 03:21

「え…?」
 目の前の赤い化け物に気圧されたのか、顔の筋肉を硬直させたままの顔で老婦人はヘイドレクに視線を移す。
「え、じゃない。俺の左目は…その……どうなってるんだ?」
「…あなたの……」
「左眼だ」
「ああ…眼のこと、ごめんなさい。ええと……瞼の傷がふさがるまで開けないでしょうけど、見えるようにはなるはずですよ」
「……そう…か」
「それよりも」
 老婦人は眉をひそめ、伺うように目の前で動きを止めている《緋の番人》を見上げた。
「私には何がどうなっているのか皆目分からないのだけれど……」
 老婦人にならってヘイドレクもその巨体を見上げてみた。
 《緋の番人》と呼ばれ植物学者たちからその凶暴性を恐れられる、生ける《果実》は今、
静かに小さな金色の目でヘイドレクを注視している。
 その眼差しにはヘイドレクを心配するような気配さえ感じられるのだった。 


309 :名無し物書き@推敲中?:03/09/28 03:20
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1063034930/l50
SS紹介スレ

310 :名無し物書き@推敲中?:03/10/03 22:11
 ヘイドレクが、その《果実》に向かって何か言いかけた時だった。
 遠くから人の叫ぶ声がした。叫ぶ、というよりも大声で何かを呼ぶような。
 ヘイドレクよりも先に、老婦人がその声の方をはっとした面持ちで振り返り見た。
 雨の音の中にぼやける声の輪郭が段々近づいてくる。 何かを探すような声だ。
「…………ぉぉ!ォオフィー!おおい、おーい」
 ヘイドレクの身体に力が入る。
 と、突然傍らに座っていた老婦人がマントの中から手をあげて大きく振り上げた。
「あなた!来ては駄目よ!」
 雨にぼやける視界に、朱色の点が灯っている。それに浮かび上がるようにして、枯葉色の人影が見え始め、
それは小走りなのか急速にはっきりとした形になった。
 同時に呼び声も明瞭になる。
「ソフィー!そこにいるのかね!」
 しわがれてはいるが、どこか心強く思われる男の声だ。
 老婦人が急に立ち上がって叫んだ。険しい顔つきになっている、振り上げた手で、マントの端を硬く握り締めたまま。
「来ては駄目、そこにいてちょうだい、あなた」
「お、おまえおまえ……それは……!!」


311 :名無し物書き@推敲中?:03/10/03 22:13
 ランプの燈火が左右に揺れ動きながらその場に止まった。枯葉色のマントに身をつつんだ男の顔は
今、ヘイドレクの眼にもよくわかった。
 ハの字になった眉は恐怖に歪み、その下の丸い眼は信じられんというようにいっぱいに開かれて、
二人の傍らに佇む《果実》を注視していた。
 その時だった、ヘイドレクが巨人の目の中にある光が消えたことに気づいたのは。
 《果実》がゆっくりと、歩きなれぬのかもともとそうなのか、身体を前後左右に揺らしながら、初老の男の方に向き直った。

「──あ、あなた…!」

 今まで動きをやめていた《果実》が動き出したことにヘイドレクも驚いたが、もっと驚いたのは傍らの老婦人であった。
 彼女はあの獰猛な《緋の番人》が、向きを彼女の夫のほうに変えたことで、心臓が止まるかと思うほど驚き、
擦り切れる寸前の糸のようなか細い悲鳴をあげた。
 枯葉のマントに身を包んだ男は蒼白になって固まってしまっていた。


312 :名無し物書き@推敲中?:03/10/03 22:14

 しかし《果実》は彼女の夫を見もせずによろよろと半回転し、向きを変えると、何もせずにまた元来た方向へ、
あの真っ二つに割れた巨木の方角へ歩きはじめた。
 それが霞む視界の遠くへ赤い点になってしまうまで、誰も何も話もせず、身動きもしなかった。
 やがてそれも見えなくなってしまうと、雨の音がやけにはっきりと耳に飛び込んできた。さっきよりも勢いがなくなっている。
 空が薄暗くなっているのはもう夕刻になりかけているからなのだろう。
 先に固まっている空気を切り裂いたのは、老婦人だった。
「………歩けるかしら」
 顔をあげると、老婦人が上からヘイドレクを微笑を浮かべて見下ろしていた。
 彼女も今しがたのことではりつめていた緊張がとけたのか、微笑には明らかに疲れが浮かんでいた。
 ヘイドレクは緊張が解けたことに微々たる疲れは感じたが自分の中の肉体的な疲労がいまやすっかりなくなっていることに気づいた。
彼は老婦人の問いに頷くと、よろよろと立ち上がる。



313 :名無し物書き@推敲中?:03/10/03 22:17

「モーリエは効くでしょう?……でもまだ急には歩けないと思うわ。あなた、手伝ってくださる?」

 そう言われると、まだ《果実》の方向を不安げに見つめたまま固まっている老いた男が、はっとしたように顔をあげた。
 慌ててヘイドレクの隣にやってくるとその腕を持ち上げ、彼の肩にまわした。
 老婦人が夫の手にしていたランプを受け取ると、その場にあったかばんを取り上げ、ヘイドレクの肩に
その皺の深くきざまれた細い手を、そっと添えた。

「……まず私たちの家にいきましょう。そこで、話してくださるかしら。あなたの知っていることを……」

 ヘイドレクは老婦人の顔は見ずに、神妙な面持ちで頷いた。
 どこまで知っているのかは彼自身も分からなかったのだが。



314 :名無し物書き@推敲中?:03/11/22 18:04
もうこのスレも終わりか・・・・

315 :名無し物書き@推敲中?:03/11/24 00:35
なんとかしよーよー。

316 :名無し物書き@推敲中?:03/11/25 21:33
本当にここから>>7に繋げられるの?

317 :名無し物書き@推敲中?:03/12/29 00:57
お、終りなのか………
書き手は此処を見放したのだろうか

318 :名無し物書き@推敲中?:04/01/14 02:37
あっがれぇぇぇぇ!!

319 :名無し物書き@推敲中?:04/01/14 11:55
クソスレの悪寒

320 :偽者 ◆wY.7vOSg46 :04/01/14 22:51
(メ´_ゝ`)ノ 誰かここまでのあらすじまとめてくれ。
慢性的な眠気のせいで長い文章読んでても理解できないんだ。
話がつかめたら最初から読み直してみる。
それから、続きを書くことを約束しましょう。

偽者じゃダメか。w

321 :あらすじ屋 ◆i9xallK9DA :04/01/15 04:13
>>6から>>99まで

世界樹はこの世の全てを支えており、誰もこれを害そうとはしなかったが、
左目に稲妻のような傷跡を持つ巨漢は例外であった。
その男は自慢の巨根であろうことか世界中に勝負を挑んだのである。
すると世界樹は女性器を作り出し男の要望に応えた。
 
 男【ヘイドレク】の過去
紀元前5012年、兵役が終わり、故郷に帰るも家族は無く、男は全てを失った。
ゼンダマンという名前に問題があったのだろうか。
男はまだ只の青年であったが、次第に心は荒み盗賊まがいの事をするようになった。
ある日男は老婆を(実際は母だったのだが)殺し、金の首飾りを奪った。この時男は世界樹の破壊者となる。
首飾りは男の体と同化し、はずす事は出来ないようだった。
母の体からは根が伸び、地面に縫い付けられているようであった。
母を埋葬した男は酒場に行き、知り合った女と一晩を共にする事になる。
女との睦言の際に、自分の男根が人間から養分を奪うようになったことを悟る。
男は女の養分で大きくなった体を隠すようにし、王都へ向かった。
体に起こる異変を苦しみながらも、歩を進めるうちにかつての友【ジュオーク】と出会う。
友の家で語り合ううちに男の体は暴走を始めてしまい、友を襲ってしまう。
殺してしまうことだけは避けたが、いつ死んでもおかしくない状況の友を抱え、彼は森へ向かった・・・

322 :あらすじ屋 ◆i9xallK9DA :04/01/15 05:09
>>100から>>187まで

 別視点(>>100から>>109
皇后と皇太后と老医【ルシュア】は根に取り込まれた王と王女【ヘイア】の状況を知るため、
樹に詳しいという樹学者【カイザヘーク】を探すことになる。
根は脈を打ち、ヘイドレクのものと同じものであったが、彼らがそれに気付いたかどうかは分からない・・・

 >>166から>>187まで
男の体からは芽が吹き出、背後ではとてつもなく大きく異様な樹が育ちつつあった。
樹は森を包むように育ち、不気味な実をつけた。
翌朝農夫によって発見されたジュオークは、森の近くにある家へと運び込まれ、
眼鏡の青年【ルポワ】に治療される。
ルポワの話によれば、
ジュオークの体に降りかかっていた治癒能力の高い【モーリエ】という植物が命を救ったのだという。
ルポワは森へと芽を探しに、そして果実を見に行く。
途中で不吉な予感がしたものの彼は進むことを止めず、ついにモーリエへとたどり着いた・・・

モーリエ・・・・この植物は治癒能力が高いのだが、成長条件が厳しい上に【緋の番人】と呼ばれる果実が芽を守るため入手が非常に困難なのである。
発芽から成長しきるまで数百年かかり、他の樹から養分を吸い取り成長する。

疲れたんでひとまずここまで
本編かサイドか分けて書いてあると読みやすくて非常にありがたいと思う今日この頃

323 :あらすじ屋 ◆i9xallK9DA :04/01/15 06:48
>>188から>>247まで

 ルポワ視点>>188から>>209まで
目を覚ましたヘイドレクは自分の体が樹と化していることに気付き呆然とする。
一方、木の下ではルポワと通りすがりの青年【ジーノ】が緋の番人に襲われていた。
ルポワにより何とかその場ぼ危機は避けれたものの、依然として番人は襲いかかってくる。
ルポワは見事な剣術を発揮し、必死に逃げようとするが結局ジーノ共々捕まってしまう。
捕まった二人は枝により持ち上げられ・・・

 ヘイドレク視点>>210から>>227
母を殺し、ジュオークを瀕死に追い込み、
そして今完全に人間で無くなってしまったヘイドレクは死を望むようになっていた。
強く死を望んだ時、何処からとも無く不思議な【声】が聞こえてきた。
声は「ヘイドレクが破壊者であること」、「最初に破壊すべきものは自分であること」、
「しかしそれは死ではないこと」、そして「左手が自由に動かせること」を伝えた。
自分の真上では雷が鳴っている。
実際に左手が動くことを知ったヘイドレクは、
いろいろ考えた末に自分の真上で鳴っている雷に向けて大きく手を伸ばした・・・

 為吉フォーエバー(>>233から>>237
唐辛子を両手に抱えた為吉は京都行きを決意する。
しかし愛人がうんこを踏んでしまい、脳内危険センサー鳴り響く。
そんな中東名高速を駆ける風になった為吉だが・・・

 ザ・ムー「奇跡の価値〜第一章」(>>238から>>247
ムーで流行の「秋葉原」の「はばら」という言葉に対し、
「理解できない」とうそぶくモンドリアルガバメギブリンは「きは」を練習していた。
「きは」は難しく、その上に勝手なルールを設けた「はばら」の師匠を憎く思うモンドリアル。
そんな彼の悩みは一つ、最近セックスレスな事だ。


324 :あらすじ屋 ◆i9xallK9DA :04/01/15 07:48
>>251から>>288まで

 放置・そして〜>>251
精霊たちが住んでいたというクロイツワァールの丘。人々の信仰のためか未開のまま残っている。

 采の国編>>252から>>276>>270から>>275は除く)
子供たちは最後の希望を託されたさいたま銘菓、十万石饅頭を食べていた。
大変美味な饅頭だが、食べると「さいたまー」と言ってしまう重大な欠点があった。
人々が欠点に気付いた時には、太陽に現れた顔が「サイタマー」と叫び始めていた。
 この時さいたま県民総出で「サイタマー」と叫ぶことにより世界がサイタマに沈み始める。
 また533の死亡が確認される。
誤爆によりサイタマは破壊されるものの時既に遅く、姫はサイタマと化していた。
しかし人々が行動を起こす前に誤爆の嵐が姫を直撃し・・・

 世界樹(夢の中へ)>>270から>>275>>277
村を清めた娘【タウニ】は兄【ラライノ】と禁断の恋に陥ってしまう。
二人は村人により制裁を受け、ラライノは死にタウニは生きながら樹と化していった。
強い怒りと憎しみから彼女は世界に呪いをかけ、呪いは彼女に力を与えた。
彼女の力を吸った樹は彼女の怒りのままに大きく、大きくなっていった。
樹の名前は「世界樹」といった・・・


325 :あらすじ屋 ◆i9xallK9DA :04/01/15 07:49
 >>280から>>288
稲妻はヘイドレクを貫き、体を引き裂くような痛みと顔の左側が焼けるような痛みを与えた。
薄れ行く意識の中彼は黒髪の美しい少女を見た・・・
鈴の音で意識を取り戻した彼は、声によって自分が時間の歪み【時の気泡】にいることを教えられる。
彼は声の主が夢で見た、ラライノのものと知る。
声により首飾り(落雷で焦げ付き、もはや只の石のようだが)は【種】であると聞かされる。
声が言うにはヘイドレクの体は【呼の種】(ディ・フェイ)を持っており、
ラライノとヘイドレクとの魂をつないでいるのだという。そしてそのために世界樹はヘイドレクを狙ったのだ、とも。
声は世界樹を壊すと言ったヘイドレクを否定することは無かった。
時の気泡がはじけ始め再び意識が遠くなるヘイドレクに、
声は「呼の種は助けとなる事」と「世界樹を赦して欲しい事」を伝えた・・・


【時の気泡】・・・時間の歪み。はじけるらしい
【神々の庭】・・・世界樹の頂上にあり、人が死後に行く場所とされている
【呼の種】(ディ・フェイ)・・・ラライノとヘイドレクの魂をつないでいた枷
【緑光の民】(セドタ・カーファ)・・・今はまだ不明。ラライノはそう呼ばれているようなのだが・・・



326 :あらすじ屋 ◆i9xallK9DA :04/01/15 08:16
>>292から>>313まで

老婦人(ソフィー)による看護で意識を取り戻したヘイドレク。
【血草】と【ガルグ】のおかげで助かったらしい。血草で怪我人がいることを、ガルグでその位置を知ったのだという。
話を聞いていると突然、しかしゆっくりと緋の番人がやって来た。
番人は、彼らを襲うどころかモーリエで治療し始めた。
治療が終わった後も番人はその場にい続けたが、農夫がやってくるとゆっくりと森の中央へと帰っていった。
ひとまず農夫の家に向かうことになったのだが・・・

【血草】・・・血の臭いに反応して葉を持ち上げる
【ガルグ】・・・鷹の亜種で、温和な性格で長距離飛行が可能なため、しばしば伝達用に用いられる。
        またカイザへークを探す目的でも放たれた
【カイザへーク】・・・ルポワの本名

あらすじなのにあんま端折ってない上に、文がまずくってすみません
精進して来ます

327 :名無し物書き@推敲中?:04/01/15 09:39
うんっ! 素晴らしい! あらすじ屋 ◆i9xallK9DAはグッジョッブや!
これで、今までの流れが人目でわかるねっ!!!!!!!!!!!!

328 :偽者 ◆wY.7vOSg46 :04/01/15 21:24
>>あらすじ屋
(川´_ゝ`)ノ サンキュゥ。なんか難しいなぁ・・・でも約束しちゃったから
少し書きましょ・・・。

329 :名無し物書き@推敲中?:04/01/15 22:20
期待下げ

330 :名無し物書き@推敲中?:04/01/17 21:40
        ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          ヽ ___\(\・∀・)<まだー? まちくたびれた。
             \_/⊂ ⊂_)_ \______
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
        |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
        |           .|/


331 :名無し物書き@推敲中?:04/01/18 15:01
>>330
じゃぁーリレー小説なんで、漏れもチョト書いてみたのをあげよう。

332 :名無し物書き@推敲中?:04/01/18 15:08
>>331
        ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          ヽ ___\(\・∀・)<早く〜 まちくたびれた。
             \_/⊂ ⊂_)_ \______
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
        |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
        |           .|/


333 :名無し物書き@推敲中?:04/01/18 15:08

 黄色い樹液にひたされた布をあちこちにあてられ、その上から包帯でぐるぐる巻きにされたうえ、
ほんの少しの間に驚くほど痩せこけて眠るジュオークを眺めながら、ヘイドレクは悔しさに拳を
握り締めずにはいられなかった。
 生きながらえていることが不思議なくらいだった。
 化け物となっていく苦しみに蝕まれる毎日を、ジュオークの冗談が、かつてのポート・ニース
が、一時とはいえ癒してくれた。
 だが今や、あの懐かしい香りは、舌の上から血の味とともに流されてしまった。
 木の焼ける臭い。ジュオークの叫び声。
 ──逃げればよかったのだ。あんな恐ろしい光景を見たら、逃げ出すのが当たり前だ。
 しかしヘイドレクは、ジュオークという男はそういうことのできない男だと知っていた。
 いつもおどけたように笑いながら、いざというときに逃げ出す小心者ではない。
いつも先頭をきって仲間を助けに戻るのは彼だった。自分の心配をするまえに他人の心配をしてしまう、
致命的な優しさがあった。


334 :名無し物書き@推敲中?:04/01/18 15:11

 キィ、とドアが開く音がしたが、ヘイドレクは振り向かなかった。

「あなたの御友人には気の毒な話でした」

 ルポワは悲痛な面持ちで横たわるジュオークを一瞥した。
 物静かにヘイドレクの傍まで歩み寄ると
「ちょっとこれ、持っててもらえますか?」といって、コップを手渡し、ジュオークの口を覆っていた布
をはがし始めた。
「何をする気だ」
 脅すような低い声に、ルポワは口元に笑みを浮かべた。
「何でもありませんよ。ただの栄養食ですから」
 そういって、ジュオークの真っ青になって、水気を失った果実のような口元に、オレンジ色も鮮やかな
木の実のようなものを差し込んだ。
「ラウシの実です。栄養価が高いうえに吸収力が良いですから、こういうモノが食べられない状態の
患者さんには最適のものなんです。それに先生がご自身で品種改良をなさって、野生のものよりも格段に
苦味が減りましたし、栄養価も高まりましたから、まさに文句なしの栄養剤なんですよ。あ、コップどうも」
「ばかに詳しいな。先生ってのは、あのばあさんか」
「あ、いえ。彼女は先生の妹です。先生は行動派なので滅多に会えないですよ」
 そう照れたように笑うと、ジュオークの頭を持ち上げて、口元にコップをあてて、慎重に水を注いだ。
 その動作を眺めながら、ヘイドレクは自分のひざを無意識にさすった。


335 :名無し物書き@推敲中?:04/01/18 15:18

 彼自身も致命的な重傷を負いながら、いまはもう奇跡的にほとんど回復していた。
 この怪しげな眼鏡の男が言うには、あの赤い化け物の落とした『葉』のおかげだという。
 《緋の番人》と言っていた。
 なぜ、あれは自分を助けたのだろう。
 あの時、あの血のような果汁と葉を降り注ぎながら、あの《果実》の目に殺気はなかった。
 まるで「愛情」ともいえるような感情があった。
 なぜだ。

 考え込んでいたヘイドレクは、ルポワの声を聞いていなかった。
 そして不意に、言葉が飛び込んできた。
「………かもしれない」
「ん?」
 顔を上げると、コップを持ったまま、ルポワがいつものヘラヘラ笑った顔とは打って変わった真剣な顔で
こちらを見ていた。
「あなたがさっき話してくれた『世界樹』のこと、僕も聞いたことがあります」

「何……?」
 ヘイドレクは思わずルポワを凝視した。


336 :名無し物書き@推敲中?:04/01/18 15:21
>>281で『神々の庭』が世界樹の頂上にあるってヘイドレクが知ってるのは
不自然だから、その箇所なくしたほうがいんじゃねーかと。
それじゃぁ。

337 :偽物 ◆wY.7vOSg46 :04/01/18 18:38
(川´_ゝ`) ・・・何だろう・・・ね、うん・・・

338 :名無し物書き@推敲中?:04/01/19 16:05
偽者タン新作Murder?

339 :あらすじ屋 ◆i9xallK9DA :04/01/22 07:26
俺のやったことが無駄だったとはな・・・

340 :偽物 ◆wY.7vOSg46 :04/01/22 18:46
か、、か、書くぜ、書くぞ!いいか、書くぞ!ホントに書くぞ、今書くぞ!?

・・・マジだぞ!?脅しじゃないぞ!?

341 :名無し物書き@推敲中?:04/01/22 23:31
ドキドキ

342 :偽物 ◆wY.7vOSg46 :04/01/23 19:35
(川´_ゝ`) 。oO(マジかよこれ引っ込みつかねぇよ。まだ内容つかめてねぇんだよ・・・)

343 :名無し物書き@推敲中?:04/01/23 21:49
(゜V゜)。oO(大丈夫だよ………気にせず書き込んじまえよ、これはリレーだ。ヤッベヤッベってなったら、後の奴に任せりゃイイさ!)

344 :偽物 ◆wY.7vOSg46 :04/01/23 21:57
(川´_ゝ`) 。oO(おお、なんか誘惑の声が聞こえてきたなぁ・・・でもいいこと言ってる気がする・・・
 じゃあこれって、「誘惑」じゃなくて「導き」じゃないか。そうだ・・・今書かないと俺は嘘吐きだ。
 でも、でも・・・・・・ネタねぇ・・・)

345 :名無し物書き@推敲中?:04/01/25 16:34
それでも急浮上

346 :名無し物書き@推敲中?:04/02/05 15:16
定期上げ

347 :名無し物書き@推敲中?:04/02/10 03:37
誰ぞ、誰か居らぬのか
黒き英雄ヘイドレクの物語の語り部は………もう居らぬのか!

348 :名無し物書き@推敲中?:04/02/10 06:05
ルポワは世界樹について知ってることを語りだした。
ヘイドレクは一言も聞き漏らさないように集中して聞いていたが、
求めていたような話を聞くことは出来なかった。
しかし全く収穫が無い訳ではなかった。
モーリエと緋の番人についての話だ。
本来は近づく者を排除するという緋の番人が、
彼らを襲うどころか治療を施したことは学者ではないヘイドレクにとっても大きな疑問であった。
また、何百年とかけて成長するはずのモーリエが短期間で成長した事・・・

349 :名無し物書き@推敲中?:04/02/10 20:57
「と、まぁ、僕が知っていることは以上です。つまり、世界樹は伝説上の木であり、存在しないとする文献が
 ほとんどだということですね。残念ですが」
 その言葉などもうほとんど興味を失って、ヘイドレクはなにやら思索にふけっているようだった。
「しかし」
 ルポワはそこで言葉を切ると、そもったいぶった様子でチラリとヘイドレクを見た。

「その中で、おもしろい説があったのです。デルロ・ローザンという人が唱えたものですが、その人は、
世界樹はいまだあると主張していました。そして化石化しているのではなく、ただ眠っているだけだと」
「眠っているだけ……?」
 ヘイドレクの興味がのってきたことを確認すると、ルポワは楽しそうに頷いた。
「そうです。それが目を覚ましたときに世界は終わるそうです。おもしろいですよね。もちろんこの説は誰にも
相手にされないで多くの巷説に埋もれてしまいましたが。僕はいつだったか、友人からその人の書いた本を
もらったのです。それが、王都の僕の家にあるはずです」
「その、デルなんとかっていうやつの書いたやつを読めば……」
「ええ。何か分かるでしょう。それに、もうひとつ」
「なんだ?」
「僕にその本をくれた友人が、いつか『緑光の民』の話をしていました」
「なんだと?!」


350 :名無し物書き@推敲中?:04/02/10 21:25
「まぁまぁ落ち着いてください」
 思わず身を乗り出したヘイドレクをなだめるように、ルポワは両手を押し出すような身振りをした。
「これは僕の専門分野ではないので、これ以上のことは何もわかりません。
 ただ、僕の友人……そう、彼は民俗学を専門としているのですが、『緑の民』の末裔が今も生きている
 ことが分かったと嬉しそうに僕に話してくれたことがあるのです」

 ルポワの淡々とした口ぶりとは対照的に、ヘイドレクの身のうちは血がたぎりだしていた。
 未来へ続く道が照らし出され始めている。
 その先に何があるのか分からないが、とりあえず、道は定まった。
 俺はかならず
 知れず、ヘイドレクは微笑んでいた。ぞくぞくと期待に胸が高鳴る。
「王都だ」
「え、なんですか?」
 聞き返すルポワにヘイドレクはにやり、と笑み返した。その瞳は今や燃えたぎる復讐の炎で満ちている。
 ゆっくりと彼はもういちど繰り返した。

「王都へ行くぞ」


351 :名無し物書き@推敲中?:04/02/10 21:32

 ではジュオークさんの傷がふさがったら王都へ戻りましょう。
 最低でも10日後には出立できるはずです。
 私が王都までの道を案内します。


 そう言い添えると、ルポワは部屋の外へ出ていった。
 窓外はもう夜の帳をおろしている。老夫婦はヘイドレクのために毛布を用意してくれた。
 横になったほうがいいという彼らの忠告を丁重に断り、ヘイドレクは友のかたわらにいることを望んだ。
 ランプが卓の上で赤々と燃え上がっている。
 椅子に腰掛け、毛布に包まりながらヘイドレクは変わり果てた友の姿を見守った。
 揺れる炎の光は、あの夜を思い出させた。
 ジュオークの骨のように細くなった足に手を置き、彼はやりきれなさにうなだれた。
 長いこと、そのまま動かなかった。


352 :名無し物書き@推敲中?:04/02/10 21:44

「……いど……く」
 その時ふいに、どこからか声が聞こえてきた。洞窟の奥から漏れくる風の音のような。
 うなだれたまま彼はその声を聞いた。
 顔をあげると、ジュオークの萎んだくちびるがわずかに開いて、そこから声が聞こえてくるのだった。
「ジュオーク?」
「……ヘイド……レ…ゥ…」

 間違いなかった。友は自分の名前を呼んでいる。
 ヘイドレクは友の回復に喜び、思わず顔のそばに身を寄せた。

「ジュオオーク!意識が、意識が戻ったんだな?!」
「………ヘイ…ド……」
「俺だ。ヘイドレクだ!ここにいるぞ!」
「……おおォ……ヘ、イド」
 そのとき枯れ枝のような細い、包帯にグルグル巻きにされたジュオークの腕が、頼りなくぶるぶると震えながら、
持ち上げられヘイドレクの方へ伸ばされた。
 その指がヘイドレクの頬に触れる。
 その痛ましい仕草にに、ヘイドレクはのどの奥を熱いものが込み上げてあわててそれを呑み込んだ。
 目の奥が熱くなる。ヘイドレクはジュオークの手を力を入れぬようそっと握ると、うなだれた。
「許してくれ……何をしても俺は償いきれん、おまえを巻きこんじまったのは俺だ。
 許してくれ、ジュオーク……」


353 :名無し物書き@推敲中?:04/02/10 21:51


「ヘイドォ……レクゥ……ヘイ、ドォ……」 
 ジュオークは何度も何度も繰り返しヘイドレクの名前を呼んだ。
 ヘイドレクがその枯れ枝のような指を離すと、指はヘイドレクの頬から首へと伸ばされた。
 首に、ジュオークの指に巻きついた包帯の感触があたり、次にゆっくりと指が絡められるのに気がついた。
「………ヘイ、ド、レェ、ク…オオォォオ」
 
 次の瞬間、
 まるでツタのようにその枯れ枝のような指が伸び、ヘイドレクの首に一瞬のうちに絡みつき、締め上げた。

「ぐ、ぐぉおおおお!!!」
 驚いて飛びのいた時にはもう遅かった。
 ジュオークの指が物凄いいきおいで首の骨を折らんばかりに締め上げる。
「いいいいいぃぃぃいぃいいいいいヒヒひいひいひいいひひひひひひひひひひひひひh」 
 血が逆流し、目の奥で火花が散る。
 声が喉ですべて押しつぶされ、耳に化け物じみた叫び声が響いてきた。
 巻きつけられていた包帯の下からジュオークの肌が見えた。

 それは人間の皮膚ではなく、かさかさと茶けた樹皮であった。

354 :名無し物書き@推敲中?:04/02/10 22:04
>>350
おおお、変に文字が抜けてる!!

「俺はかならず見つけ出すぞ、世界樹を。そして粉々にぶったぎってやる」

というのが世界なので宜しく。
オツカレー

355 :名無し物書き@推敲中?:04/02/10 22:06
>>354
世界ってなんだよ正解だよ。眠いしもう限界だ。逝ってくる……

356 :名無し物書き@推敲中?:04/02/16 22:43
 血が逆流する。
 目の奥で風景が、ジュオークのカオが明滅する。
 ぎりぎりと自分の首の骨が軋む音がする、喉がつぶれる。
 目の前でジュオークのなりをした化け物がいよいよ奇怪な叫び声をあげて
ヘイドレクの首を締め上げる。
 閃光が何度もまたたき、意識が遠のく。
 
 こいつを殺さなければ──!!

 とっさにそれだけを考えた。
 ジュオークの姿はもう見る影もなくなっている。
 ヘイドレクは口角から唾液があふれだし、意識の飛びそうになるなかで、
ぶるぶると震える右手を、その化け物の胸に押し当てた。


357 :名無し物書き@推敲中?:04/02/16 22:45

 突然手が何かに締め付けられるような感覚を覚えた。
 耳をつんざくような化け物の悲鳴が聞こえた。同時にドアがいきおいよく開き誰かがやってくる音が。
首に絡み付いていた凶悪な力が一気にゆるみ、空気がようやく流れ込んでヘイドレクは咳き込んだ。
 そしてそのまま椅子に倒れこむと、上から化け物の弛緩した身体が、たおれかぶさってきた。
 耳鳴りがまだしている。
 何があったのか、よくわからない。
 なんだ?
 何が起こったのだ今。
 手がやけに締め付けられている気がする。
 
 そう思って自分の手を見ようとしたが、動かない。
 おぞましい怪物の相貌が眼に飛び込んでくる。木の化け物といったほうがいい。
 姿こそは、先のジュオークと同じだが、その皮膚は樹皮のように皺皺で、両目があったところは
落ち窪んでただの窩になっていた。首に絡んでいたのは木の枝で、蔦のように柔らかいように思ったが、
いま触ってみると、木の枝のように硬いのだった。

358 :名無し物書き@推敲中?:04/02/16 22:48
「大丈夫ですか!!」
 声はルポワのものだった。
 その後ろに、もう一人のけが人である、ジークという青年の姿もあった。それから老夫婦も。
 みな同じように青ざめて手に各々、棍棒やら鍋やら剣やらを携えていた。
 このおぞましい叫び声に駆けつけたのだ。

 しかし今はヘイドレクに覆いかぶさる異形の樹怪に動揺をかくせないようだった。

「それは……一体何が?!」
「知るか……ッ」
 ヘイドレクはうまく吸えない空気に咳き込む。
 咳き込み、前のめりになった時だった。

 この樹怪の胸にめり込んでいる自分の腕を目の当たりにしたのは。
 ただ押しのけようと夢中だった右手が、まるでネジのように樹怪の胸の真ん中に突き刺さっている。


359 :名無し物書き@推敲中?:04/03/11 16:01
保守age

360 :名無し物書き@推敲中?:04/03/12 12:27

 心臓の音がやけにうるさく耳の奥で鳴っている。
 いやな冷や汗が湧き出してくる。
 
 ──俺の手は、どうしてこの化け物に《めり込んで》いるのか。

 ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン
 強張る手をおそるおそるゆっくりとヘイドレクは引き抜いた。
 化け物の胸からゆっくりと、その右手が全貌を明らかにした。
 鼓動がまるで雷鳴のように大きく体内に轟く。なにか、予感のようなものがあった。
 自分「も」化け物になっていた、ということを、いまさらヘイドレクは思い出した。 
 胸にぽっかりと空いた闇の口からずるずると出てきた、自分の右手。

 それはもう「手」ではなかった。




361 :名無し物書き@推敲中?:04/03/12 12:29
「きゃぁああああああ……!」
 部屋にあるランプに照らし出された、ヘイドレクの異形の右手に叫び声をあげたのは、
老婦人だった。しかし他の者もあっけに取られた表情をして、その右手を凝視している。
 頭が目の前のことを理解しきれず、言葉が出てこないのだ。
「あ、ああああ、あんた……手、手が」
 カタカタと震える声でジークがいい、手から棍棒がするりと落ちて音を立てた。
 誰もが目を疑った。

 右手は、手首から先がするりと伸び、指がなくなっていた。
 代わりに光沢を帯び、灰色がかった、まるで刃物のような形状になっていた。
 それが、さっきこのジュオークに扮した樹の化け物を殺したのだ。

 心臓の音がうるさい。痛いくらいに高鳴っている。
 そのせいでまともに考えられなかった。
 いや、まとも考えてしまえば、それもおぞましいような気がした。
 なぜ俺の手が刃物になっているのだ。俺は何だ?
 俺は人間なのか、
 これはなんだ、おれは何者だ。これはどうなっている。
 なんで、誰が、どうして――?


362 :名無し物書き@推敲中?:04/03/13 01:39
 コンコン、


 窓を誰かがノックする音に、部屋にいた誰もが驚いて息を呑んだ。
 ヘイドレクは勢いよく窓辺へ視線を向けた。
 もう夜である。木戸が下ろされていて向こう側が見えないが、外は真っ暗だ。
 来客のある時間とは思えない。聞き違いだったのだろうか。
 しかし、その思いを吹き消すように、もう一度確かなノック音が、木戸から聞こえてきた。
「………い、 いったいこんな時に誰が…」
 出ようとした老父を、ルポワが手で制した。
「待ってください。何か嫌な予感がします」
 ルポワと同じ思いをまた、ヘイドレクも抱いていた。
 催促するように、何度も何度もノックは部屋中に響き渡る。
 ルポワの額から、玉のような汗が浮き出してきた。
「タイミングが良すぎると思いませんか。それに、なぜ戸からではなく、ここの窓を尋ねてきた
のでしょうか。普通の来客ではありえない。なにか―――」
 そう良いながら、ルポワは老父を片方の手で制止ながらゆっくりと剣を鞘から抜いた。
 金属の滑る音とともに、暗がりに剣の抜き身がランプの光を反射する。
 ルポワは苦いつばを飲み込むように言った。
「悪意のようなものが潜んでいる予感がするんです」


363 :名無し物書き@推敲中?:04/03/13 14:36

 誰もが窓の前に立ち尽くして、身体を強張らせていたときだった。
 窓の戸の奥から、くぐもった、人の声が聞こえてきた。

「……あ、ァけ…て、く  れ  …  …」

 その声に目をみはったのはヘイドレクだった。
 彼はいま自分の体に覆い被さっている化け物と窓を交互にみた。
 血が引いてゆく。
 その声はジュオークだ。間違いなかった。
 我を忘れてヘイドレクは化け物を押しのけ、窓際にかけよった。
 なぜだ、ジュオーク、おまえなのか。
 なぜそこにいるんだ、
 なぜ―――?!
「待ってください!!どうしたんですか!!!」
 ルポワの声が背から聞こえたが、聞いている余裕はなかった。
 なぜ、ジュオークの声だったのだ。彼は動けないほどの怪我人なのだ。
 それがなぜ、外に……


364 :名無し物書き@推敲中?:04/03/13 14:36
 勢いよく彼は木戸を押し開けた。
 空いた窓のおくは真っ暗闇だった。その中から何かがキラリと光、ヘイドレクのほうへと飛び込んだ。
 なにか、流れ星のようだった。

「ウワァァアアアアアアァァァァァアアアア!!!」
 耳をつんざくような悲鳴が聞こえ、ヘイドレクははっと後ろを振り向いた。
 重なるように老婦人の悲鳴も聞こえてきた。
 苦痛に表情をゆがめたジークという青年の肩から血が噴出す。
 そこには、奇妙な形をした短剣が数箇所突き刺さっていた。
 彼の背後の戸にも、短剣が突き刺さっていた。

 とっさにヘイドレクは力に任せて勢いよく戸を閉めた。
 大きな音と、悲鳴が空気を揺るがす。
 何が起こったのか、誰も把握し切れなかった。
 窓から何者かが部屋の中に攻撃を仕掛けてきたという事以外は。
 しかし、なんのために?


365 :名無し物書き@推敲中?:04/03/13 14:38

 ジークは肩を手で必死に押さえながら、床の上をのたうちまわる。
 口から悲鳴が迸る。ルポワと老婦人が青ざめながら必死にその肩を止血しようとしていた。
 心臓の音が高くなる。
 何かが始まっている、そんな予感が警告のようにヘイドレクの中で鳴り響いていた。
 自分を巻き込んだまま、巨大な何かが動き出してしまったかのような、予感が。

「ヘイドレクさん!!!」

 そのときルポワが叫び、ヘイドレクは反射的に窓の法を振り返り見た。
 
 窓は再び開かれていた。――今度は外にいる何者かによって。
 そして窓枠に、空ろに焦点のあっていない目をして、口をだらしなくあけた顔が、
樹液によって黄色く染まった包帯をぐるぐる巻きにしたジュオ―クの顔が、そこから覗いていた。


366 :名無し物書き@推敲中?:04/03/13 14:54

「アハァ、ヘイドレクどうしてまた閉めたんだぁ???」

 不気味に明るい言葉を、顔の表情をまったく変えないまま、ジュオークは喋った。
 しゃべったというよりも、言葉にあわせて口を動かしているだけだった。
 奇妙な光景だった。
 まるで巧妙な腹話術を見せられているかのような。
 しかし声はジュオークそのものだ。だから余計に薄気味悪い光景なのだ。
 戸惑うヘイドレクを、空ろな表情をしたままジュオークが笑った。

 コツ、と音がして、ふとヘイドレクが隣を見るといつのまにかルポワが傍らにきていた。
 同じように狐につままれた顔をして、眼鏡の奥の目がじっとジュオークの顔を凝視している。
 ヘイドレクはカタカタと壊れた人形のように顔を揺らして笑うジュオークをみた。

 

367 :名無し物書き@推敲中?:04/03/14 23:33
こ、このスレ、レベル高けぇな
久しぶりに、面白いもの読んだ感じだ

368 :名無し物書き@推敲中?:04/03/14 23:34
ス、スマン
ageちまった………_| ̄|○

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