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も も た ろ う

1 :名無し物書き@推敲中?:03/11/06 19:41
 満月が雲に隠れると、屋敷の裏手から黒煙が立ち上った。
 同時に方々から火柱が上がり、瞬く間に屋敷全体を包んでいく。
「何が、何が起きた!」
「わからん! それより女子供を…… !? 誰だ!」
 やがて飛び出してきた鬼の一人が、何かの気配に気づいた。
「……人間?」
 おりからの風に吹かれた炎が、一人の少年の姿を映し出した。
 日の丸鉢巻に派手な陣羽織、髪型からして元服前の人間の子供が、
傍らに大きな犬を従え静かに闇にたたずんでいる。
 その仏のように穏やかな表情は、むしろ鬼達を戦慄させた。
「何者だ! どこからこの島に入った!?」
「……」
 問いかけに答えず、少年は腰の刀を抜き払うと幼い声で言い放った。
「かくごしろ、ぼくはおまえたちをせいばいしてやる」

2 :名無し物書き@推敲中?:03/11/06 19:41
2get!!!

3 :名無し物書き@推敲中?:03/11/06 20:08
糞スレ立てんなよ。
他のスレがdat落ちすんだぞ。

4 :名無し物書き@推敲中?:03/11/07 01:13
老人は山で芝刈りをしていた。
年齢に似つかわしくない、力のあふれた動きで黙々と芝を刈っている。
鎌を振るうたびに、鍛えられた背中の筋肉が盛り上がる。
数刻が過ぎ、山のようになった自分の成果を満足げに眺めると、
老人は竹の水筒を腰から外して喉を潤した。
乱暴に口元をぬぐうと、山の沢に視線を移し、洗濯に出かけていった
愛妻のことを思う。

5 :名無し物書き@推敲中?:03/11/09 20:02
老婆は川で洗濯をしていた。
夜が長くなり、秋の気配が増してきたと言うのに、
この頃はなぜかしら暖かく、清流に手を浸すのが心地よい。
長年連れ添った夫の衣服を洗う時、老婆は一瞬、
少女のような華やいだ笑顔を浮かべて見せた。
ポケットがいっぱいのどんぐりで膨らんでいる。
もう。あの人はこういういたずらが大好きなんだから。
夕飯のときに思い切り文句を言ってやらなくっちゃ。
いっぱいのどんぐりを大切そうに自分の懐に移すと、
老婆は口元の緩んだ幸せそうな表情のままで、
愛する夫の衣服を洗い始めた。

6 :名無し物書き@推敲中?:03/11/10 13:57
気の狂った女が、岸壁にしがみついていた。
それは異常な光景だった。
ほとんど手がかりの無い垂直に切り立った絶壁を、ほっそりとした体型の華奢な
女が、強引に片腕の力だけで登り進んでゆく。
女は右腕を使わない。
女の右腕は、胸に抱えている赤子をしっかりと抱きしめている。
それは人間の身体能力では不可能な芸当だった。
崖の中腹で、足を支えることの出来るわずかなくぼみを見つけると、
女はくぼみに体重を預け赤子の表情を窺った。
指をくわえて静かな寝息を立てている。
孤独な狂女の心は温かい気持ちで満たされ、狂女は息を吸い込むような
奇妙な笑い声を上げた。
ふ、と女は呆けたような表情になり、次第に恐怖の色が女の表情を埋め尽くした。
追っ手が近づいて来ている。
彼女と同じ能力を持つ奴らが──鬼と呼ばれる奴らが。

7 :名無し物書き@推敲中?:03/11/14 17:20
開けた草原を、六人の男たちが進んでいた。
男たちは痩せ細り、いずれも粗末な身なりをしている。
この時代、普通に見られる農民の姿だった。
奇妙なのは、その歩む速度だった。
のんびり歩いているように見えるのに、動く軌跡は山犬の足を遥かに凌駕している。
前を進む四人の男たちは、誰もがわくわくした楽しそうな表情をしていた。
仲間の女を狩るという残酷な使命であっても、彼らが幽閉されている島から出られた
のがひどく嬉しいのだ。
生まれて初めて見る外の世界の光景の、そのどれもが彼らの興味を引き、彼らの
胸を躍らせていた。
最後尾を歩く、暗い表情の若者がもう一人の若者に沈んだ声で話し掛けた。
わしには解らねえ、そう言いながら丸い顔の若者は、精悍な顔の若者の腕をつかんで
強引に立ち止まらせた。
「お前が何故、討伐隊に志願したのか、わしには解らねえよ、前鬼」
前鬼と呼ばれた若者は返事をせず、ただ悲しげな昏い瞳を友に向けるだけだった。
草原を渡る風が、眼前にそびえる崖に吹き付けて、青空に吸い込まれて消えた。
赤子を盗んで、島から逃げた狂女が、あの崖を登っているはずだ。
彼らの小旅行は終わりを迎えようとしていた。

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