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川上稔と都市/AHEADシリーズ・The 9th city

829 :イラストに騙された名無しさん:03/06/11 01:49
>812
>801ではないが…投下

「はぁーぁ……」
 切は寮のベッドに仰向けになって、天井に視線を放り投げていた。
 足先に向かって、まるで垂れ下げているように力を抜いて横たえる両腕。その右手には、携帯電話が軽く握られていた。
 さっきまで、それで姉と会話をしていた。双子の姉。自分はその弟だ。双子と言うからに、顔は全くそっくりである。
 しかし、背格好や体躯までほぼ合致していた。一応、性別の差はあるはずだろうに、これはどういうことかと時折思う。
 声質すら、同じなのだから、ますます不思議だ。そのせいか、自分は良く女に間違えられていた。
 姉との会話の内容は、自分が尊秋多学院に来るきっかけのことと、その事後確認のようなものだった。
 姉は言っていた、彼の腕が治るまでの間、自分にここにいて欲しいと。彼に、いろいろ手を貸してやって欲しいと。彼――
「――佐山君」
 ふと、胸の真中辺りがズキズキと痛み出す。空いた左手で、痛むあたりを押さえ、ニ三度深呼吸をすると――収まった。
 だが、それでもシクシクと残滓を感じる。
 姉の言葉を思い出す――佐山君は、どうだったと。自分は答えたものだ――教えてもらったとおりの、ヘンな人だったと。
 何せ、いきなり胸を手のひらで触られて、その後は抱きしめられて心臓の鼓動を聞かれさえしたのだから。
 変わり者でなくて、なんだというのか。しかし、そのことは姉には言ってない。
 切はゆっくりと身体を動かして、横向けに寝る体勢になる。
 そうして、またゆっくりした動作で、吐息をこぼした。
 一緒に、言葉が漏れる。
「佐山君……」
 彼の横顔を思い出す。黒髪の中から一筋見える白髪は、銀色のようだった。
 彼の真正面の顔を思い出す。真っ直ぐ向けられて来る視線は、射抜かれるようで少し怖かった。
 彼の――笑顔を思い出す。気難しそうな雰囲気は変えず、けれど口元と目が緩んだ姿は、なんというか――少し、可愛かった。
 切は胸を押さえる。もう、痛みはなく。残滓もきえさり、何もない。
 しかしそれでも、鼓動だけは加速していっていた。

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